作品タイトル不明
三つ目黒犬
プップー、ププップー。
大渋滞が発生し、周囲の車が狂ったようにクラクションを鳴らしている。
そんなことをしても渋滞が無くなりはしない。
それでも鳴らさずにはいられないほど、完全に流れが止まっていた。
また、そんなクラクションだけではなく、近くの歩行者や自転車の動きにも異常があった。
なにかを叫びながら、後ろを振り返りつつ逃げる人がいる。
そんな姿が、あちこちで見えた。
明らかにがおかしい。
そう思い、アースソナーを使うと渋滞の先でモンスターの反応が感じ取れた。
「やばいね。この先でモンスターがいるっぽい」
「え、ほんとに? なんでそんなことがわかるの、佑馬君。ラジオでそんなこと言ってた?」
「違うよ。ダンジョンに長くいたから、モンスターの気配がわかるだけだよ。どうしようか。ちょっと降りて様子見に行ってこようかな」
「いやいや、危ないんじゃないかな。この辺なら 探索者(シーカー) の人もいるだろうし、車の中で待っていたほうがいいと思うけど」
「いや、モンスター相手に車がどれくらい安全かわからないからね。やっぱり様子を見てくるよ。一応念のために、僕が携帯で渚に電話をかけたらそれは合図ね。この車は諦めてでも、すぐに逃げて」
「……は? なに言っているのさ。それって佑馬君を置いて逃げろってこと?」
「もちろん。その時は僕も逃げるから後で落ち合えばいいよ。じゃあ、行ってくる」
道路で停止した車のドアを開け、降りる。
そして、そこから走り始め、その途中で持ってきたリュックの中に手を入れてマイスコップを取り出した。
スコップを片手に、そのまま駆けていくと、道路の歩道にも人だかりができている場所に行き当たる。
どうやらこの先にモンスターがいるようで、そこから逃げようとする人もいれば、何が起きているかわからずに立ち止まる人と、僕のように様子を見ようと近づこうとする人がいるために混雑していた。
「あれか。犬っぽいモンスターだな。黒い大型犬って感じだし、黒犬だな」
そんな人々の隙間から見えたモンスターの姿。
この先にある駅の近くにまで出てきたらしい黒犬モンスターが三匹いる。
遠目から見ると、姿だけは犬なのでモンスターと認識しづらいからこの場に人が残っているのかもしれない。
が、視力のいい僕はその黒犬が普通の動物ではないことが見えていた。
目が三つある。
顔には普通左右にひとつずつ目が付いているが、その上部の額にもう一つ大きな目がある。
三つ目の黒犬――明らかにモンスターだ。
目が三つあるだけだというのに、それだけで強烈な違和感を放っている。
そんな三匹の三つ目黒犬は駅の近くの道路の交差点でグルグルと喉を鳴らしつつ歩いており、そこから急に動き始めた。
三つ目黒犬は最初はゆっくりと歩いていた。
その動きに、意味はないように見えた。
―――次の瞬間までは。
急に動きを変えた三つ目黒犬たちは、近くにいた野次馬の歩行者に向かっていき、そして攻撃する。
噛みつきやひっかきなど、単純な物理的な攻撃だ。
だが、その効果は劇的だった。
その場にいた多くの人は三つ目黒犬の鋭い牙や爪によってあっけなく引き裂かれ、真っ赤な鮮血を飛び散らせる。
逃げ遅れた男性の肩に、牙が食い込む。
そのまま引き裂かれ、悲鳴が途切れた。
その瞬間、現場は一気に地獄へと変わった。