作品タイトル不明
渋滞
「はい、終了~。どうする? お昼ごはんはどこで食べようか?」
朝から始めた半壊ビルの撤去作業は、昼には終わった。
かなり早いペースだと思うが、ダンジョンの天井という恐ろしく硬い岩盤のような土も大量に食べた経験のあるスーちゃんにとっては、これくらいは問題にならない作業だ。
むしろ、ビルが倒壊しないように時々アースソナーで調べながら作業を進めたから、むしろ時間がかかったくらいだ。
だが、そう思っていたのはぼくだけで、渚は違った。
「すごすぎじゃない? 目の前で作業を見ていた僕でも信じられないよ。これ……発注先にどう説明したらいいんだろう……。足場も組まずに半日でビル一棟を解体して更地にした作業工程の説明を考えないとだね」
……さすがにやりすぎたかな?
といっても、最初から足場を組んでいなかったからどのみち説明するのは難しかったと思う。
が、それでも想定以上のペースだったということだろう。
とはいえ、仕方ないか。
だって前例がないのだから。
僕だってスーちゃんがビルを一つ丸々食べてしまう時間を把握していなかったのだから、スーちゃんの能力を把握していない渚がわかるわけもないしね。
「正直に説明するのはありなの? 半日でスライムが食べてくれました、っていうのはさ」
「うーん、できなくはないだろうけどあまりいい手ではないかもね。佑馬君はうちでバイトしてくれているだけで社員じゃないから、その説明をして同じ作業をこれからずっと求められても僕じゃ対応できないし。それに、やっぱりスタンピードがあったばかりだからね。モンスターであるスライムの力を使ったっていうのを嫌がる人はいるかもしれないし」
「スーちゃんは悪いスライムじゃないよ」
「分かっているよ。ただ、モンスターであることは間違いないしね。世の中には、揚げ足を取る人もいるからね。自分たちで公表するのはやっぱりやめておいたほうがいいと思う。そもそも、僕も楓もダンジョンでスライムを使役する佑馬君の泥団子の方法はほかの人には言っていないし」
「そっか。なら、僕も何かのタイミングでスーちゃんのことを聞かれたときは、たまたまダンジョンで見かけて仲良くなった普通のスライムで害はないよって言うようにしておこうかな」
渚の言うことも一理ある。
スタンピードなんてものが起きたんだ。
世の多くの人がモンスターを怖がり、嫌悪するのも当然ではある。
たとえそれがスライムだったとしても同じだろう。
なんにせよ、ひとまずはこれにてビル撤去のお仕事は完了だ。
渚は完了報告を数日後に行うことにすると言い、この日はそのまま帰ることにした。
昼ご飯に何を食べようかと話しながら、車に乗り込み走り始める。
しかし、そこから町中を走り高速道路の入り口にたどり着くまでに僕らの乗る車は停止した。
渋滞に巻き込まれたからだ。
カーナビを見るとそれほど渋滞しそうな道ではないのに、ピタリと動きを止めた車の列。
「……なにか変じゃない?」
渚も違和感に気づいたようだった。
ふと、車内でアースソナーを発動し、僕は事態を察知した。
どうやら、この渋滞の原因はモンスターにあるようだ。
停車した前の車よりさらに先で、数匹のモンスターの存在を感じ取った。
モンスターが原因となり、大渋滞が発生していたのだった。