軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

下請け仕事

約束の日の早朝に僕の自宅に渚が到着した。

今日は渚と二人で仕事だ。

渚の運転する車に乗り、高速道路を通って現場まで向かう。

「今回の仕事はいつもの個人からの依頼じゃなくて企業案件って感じかな。それも元受けは公的機関からの案件だね。親会社ってわけじゃないんだけど、下請け、孫請けを経て、さらに下まで降りてきた仕事なんだ」

「へー。そういう繋がりがあるんだ。でも、それなら渚が言っていた僕のバイト料はちょっと高すぎない?」

「まあね。けど、ぶっちゃけて言えば、この仕事を引き受けるのは佑馬君、ひいてはスーちゃんがいるからだしね。僕のスライムはゴミ屋敷のゴミを数日かけて食べることはできるけど、そのレベルだと焼け石に水だろうし。はい、これが今日の現場の写真だよ。いけそう?」

運転しながら助手席に座る僕にスマホを渡してくる。

指示されたとおりに操作すると写真が出てきて、そこには本日の現場になる風景が映っていた。

なるほど。

マジで瓦礫の山だ。

そこに映っていたのは半壊した鉄骨ビルだった。

「えっぐ……。コンクリートと鉄筋でできた建物がえぐられているとか、やばすぎだろ」

「だよね。それはダンジョンから出てきたモンスターがやったみたいだよ。頭が牛の人型の魔物であるミノタウロスってやつが斧でぶっ壊したらしい。有名な 探索者(シーカー) が抑えている間に警察と自衛隊が銃で攻撃して何とか倒したとか。すごいよね」

「これを斧でやったの? 半端ないな……。この状態で倒壊してないの、奇跡じゃないか?」

「そうだろうね。それに第二第三のミノタウロスが出ないとも限らないのが怖いところかな。実はその現場の近くなんだよ、ダンジョンがあるのがさ。だから報酬が極端に高くて、回されまくった仕事なのに単価が跳ね上がっているってわけ」

どうやら、普通はもっと中抜きされまくるみたいだ。

渚の会社みたいな新興の末端企業だと普通はもっと低い報酬になるらしい。

が、今回は違う。

急に決まった撤去作業だが、場所が危険すぎるゆえに実行できる者がいない。

ゆえに、僕に報酬を高く支払っても十分に渚の会社が儲かるくらいには割のいい仕事のようだ。

「つまり、僕と渚にとっては条件のいい仕事ってことだよね?」

「というか、一蓮托生だね。僕が仕事をもらってきて佑馬君とスーちゃんが処理する。というか、スーちゃんがコンクリの塊や鉄筋とかをたくさん食べられなかったら僕の会社は違約金を払うことになって破産だから、どっちかというと一世一代の社運をかけた大博打ってところかな」

「ビルから出た瓦礫の撤去ね。やってみないと分からないけど多分いけると思う」

「よかった。本当に期待しているからね」

普通なら、若い男二人で乗り込む現場じゃない。

大きなトラックに重機も必要で、半壊したビルが倒壊する可能性も考えるとまわりを覆うために足場なども必要なはずだ。

いくらスライムがゴミを食べられるからと言って、引き受ける仕事ではないと思う。

それは渚もよく分かっているはずだ。

だからこそ、僕が声をかけるまでは渚はこの仕事を引き受けなかった。

そして、スーちゃんの力の一端を知っていることでできるかもしれないと考えて違約金を払う可能性も考慮に入れたうえで賭けに出た。

表面上は平気そうにしているけれど、きっと渚の内心はドキドキしていることだろう。

……つまり、これはただのバイトじゃない。

渚の会社の命運がかかった仕事だ。

それが伝わってきて、軽々しく大丈夫とは言えない。

が、多分大丈夫だろう。

なぜならスーちゃんには実績があるからだ。

ダンジョンで僕が遭難した際、巨大樹の上にあるダンジョンの天井を掘り進めていた時に、掘って出た岩盤のような天井をスーちゃんは食べてくれていたのだから。

あれができるのであればコンクリ片なんていくらでも食べられると思う。

唯一気になると言えば、現場近くにはダンジョンがあるということだろうか。

スタンピードって一度起こればしばらくは起こらないものなんだろうか?

それとも、立て続けに起こったりするのか。

これまでに前例がない以上、誰にもわからない。

わからないからこそ怖い。

それは僕も同じだ。

瓦礫撤去作業中にモンスターが現れないことを願いながらも、渚とその後も話をしつつ、朝の八時過ぎには現場へと到着したのだった。