作品タイトル不明
寺社の清掃
「結局のところ、昔の人は重要な場所っていうのがどこにあたるのかきちんと把握できていたんだろうな。なんだかんだで地脈が通っているポイントの多くは神社やお寺だったし」
毎日のように町中をランニングして地脈巡りをして分かったことがある。
それは、僕が知らなかっただけでこの地にはお寺や神社がたくさんあるということ。
今までは基本的に無宗教である家庭で育ち、盆や正月くらいしか宗教的行事に関わることがなかったせいか、大きくて有名な神社の場所くらいしか僕は認識していなかった。
けれど、実際には規模の小さな寺社仏閣というのは存在していた。
住宅街の中にポツンとある古い神社にも、地脈の流れが確かに残っている。
それを見つけて、つい賽銭箱に小銭を入れて手を合わせて拝む。
だが、地脈が残っているということは昔からそこにあるがゆえに、神社やお寺の建物などが古いものが多く感じられた。
というか、今でもこういうところは信者さんっているんだろうか?
もちろん、しっかりと運営できているところはあるのだと思うのだけれど、中には、神主や住職がもういないのではと思うほど荒れた場所もあった。
いつここが無くなってもおかしくないのではないかと気になって仕方がない。
それが杞憂であるとも言い切れないのが、町中に残る石碑や記念樹、説明看板などだ。
かつてここには古い寺社仏閣があったんだよと後世に伝えるためにだけ残された遺跡を見つけることも多かった。
きっと昔は重要な場所だと認識されていたのに、今ではそれが忘れられてしまっているのかもしれない。
でも、こういう記念になるものが残っているだけましなのだろう。
現代では跡形もなくなり、地脈も途絶えてしまった場所というのもあるに違いない。
まあ、なくなったものはもうどうしようもない。
僕にできることはない。
なので、できることだけはやってみようと、各ポイントを魔石を使って地脈を再生した後は、掃除もすることにした。
誰が管理しているかもわからないような古い神社などの境内でスーちゃんに頼んでゴミを食べてもらう。
誰が捨てたのかわからないがビニール袋や紙袋、空き缶にはてはたばこの吸い殻などもある。
そういうものを食べ、ついでに落ち葉や雑草なんかもスーちゃんには処理をしてもらった。
この点は少し迷った。
片付けをするという観点でいえば落ち葉や雑草は処分対象になると思う。
だが、自然界でのことを考えるとそうではないのかとも思ったからだ。
一口に雑草といっても人間にとっては大した価値がなくとも動植物の世界ではその基準は関係ないからだ。
雑草を食べる動物がいるかもしれないし、落ち葉を食べる虫などもいるに違いない。
なので、ゴミ屋敷のときのように対象となるゴミをすべて食べつくすというのは自然破壊にはならないだろうかと思ったのだ。
ただ、ここは完全な自然界ではなくすでに人工物で溢れかえった住宅地の中にある古びた神社のある敷地だ。
この小さなエリアだけで大自然を残そうとするのも無理だろうと思い、雑草は芝生のように見える程度に、地面から少し上の部分だけを残すようにスーちゃんに食べてもらった。
落ち葉に関していえば、建物の屋根や雨樋などの建造物の上にあるものは全部食べてもらうことにした。
それだけでも十分にきれいになり、思わず満足してしまった。
また神社や寺院だけではなく、お地蔵さんや道祖神、そのほか地脈の反応があった細い川などのまわりもゴミや汚れがあればスーちゃんにお願いして掃除してもらうことにした。
この手の掃除は基本的にはスーちゃんに頼らせてもらっているので、あまり人目につくような時間にするわけにはいかない。
地脈探しの時にはお昼にランニングすることが多かったが、掃除を目的とする場合はそのうち夕方から夜にかけての暗い時間に行うようになった。
そんなこんなで気が付けば月日は過ぎ、僕はついに試験日を迎えた。
結果はオールグリーン。
無事に中学卒業レベルの実力はあると認定され、晴れて僕は中卒資格を得たことになる。
そんなことがありつつも、世間は非常にショッキングな出来事に見舞われていた。
ダンジョンからモンスターがあふれる、いわゆるスタンピードが起こった。