作品タイトル不明
再生の日々
昨日の夜のランニングは面白かった。
久しぶりにお地蔵さんを見かけて掃除をしただけではなく、そこを通る地脈にも気づき、追うことができた。
この地は僕の知らないことがまだまだある。
非常に興味深い。
というわけで、その次の日も朝から家で勉強し、お昼ご飯を食べてから地脈探しへと出かけることにした。
腕には緑色の宝石が付いた腕輪であるアースソナーを装備している。
さらに今日は白龍の革袋というマジックバッグもリュックに入れて持っていくことにした。
昨日はスーちゃんが持っていたおやつ用の小さな魔石しか持ち合わせがなかった。
だが今日は最初から地脈に魔石を捧げることを考えて、ダンジョンで魔石鉱脈を掘って回収した魔石の残りを入れている革袋ごと、持っていくことにした。
さて、出発しようと思い、まずは自宅でアースソナーを発動する。
昨日はお地蔵さんをスタート地点にしていたけれど、地脈の流れはそこが起点になっているわけではない。
家の近くにはまた別のポイントがあるかと思って調べたのだが、予想外に我が家にも地脈が流れていることがわかった。
完全に偶然だと思うが、今にも途切れそうなか弱い魔力の流れの端が、うちの敷地にかすかに届いているのを感じとった。
ただ、この家は別に歴史ある旧家でもなんでもない、うちの両親が新築分譲住宅を購入したものと聞いている。
きっと運よく地脈の流れが残っていたんだろうな。
特に由来がある場所ではないが、反応がある以上、地脈に魔力を供給しよう。
というわけで、地面に穴を掘った。
うちの敷地にある地脈は家の小さな庭とも言えない庭の地下にあるとアースソナーに反応を示している。
なので、マイスコップを白龍の革袋から出して地面を掘り、地脈の流れがあるところまで穴を開けた。
そして、目的の場所まで掘ったらそこに大きめの魔石を置いて地脈へと魔力を渡す。
優しい光が広がり、地脈の流れが強化されたら、今度は再び掘った穴を埋める作業を行う。
さすがに穴を開けっぱなしにしていたら、お母さんが怒るかもしれないしね。
そんなわけで自宅に地脈の流れがより届くようになったら、今度はその流れを追跡していく。
さっきはついつい自分の家に魔力の流れを感じたから魔石を捧げてしまったが、お地蔵さんや石碑のときほど、効率よく強化できていない気がした。
きっと、僕の家は地脈が残っていたけれど重要なポイントではなかったんだろう。
途切れかけているとはいえ、地脈は複雑につながり、その流れが合流したり別れたりしている。
おそらくだけれど、お地蔵さんなどがあるような場所は複数の流れが合流するポイントなんじゃないだろうか。
きっとそういうところに魔石を捧げたほうが地脈の強化は効率よくできる気がする。
なので、そういう重要拠点を探して町中をランニングして移動した。
走りながらアースソナーを使い、地脈だけではなく地形や建物、地下の様子も把握していく。
途中でゴミを見つけたら、革袋を隠すために使っているリュックの中へとゴミを入れ、スーちゃんに食べてもらう。
そうやって移動していると、次のポイントを見つけた。
「これは川か。ここも地脈と関係しているんだな」
町中にある小さな細い川。
大きな橋をかけて車が通れる道路を通すような川じゃない。
ちょっと大きめの排水溝かと思うような場所だが、地図アプリで確認するとこれは間違いなく川に分類されるようだ。
ただ、この川も護岸工事のためか水辺をコンクリートで補強されている部分があり、そういうところは地脈が断絶しそうになっている。
その川のほとりに立ち、一番ポイントになりそうな場所で魔石を捧げると地脈の流れが少し回復した。
そうして、回復して見つけやすくなった魔力の流れを再び追跡し、今度は遺跡を発見した。
看板が設置されており、そこに書かれた説明文を読む。
すると、どうやらここは古墳なのだそうだ。
……マジで??
こんなところに古墳があったのか。
しかし、教科書で習ったような巨大な古墳とは違う。
ほんのわずかにこんもりと盛り上げられた土の下から石室が見つかっただけの、非常に小規模な古墳らしい。
ここはその土地の保有者が古墳を保存するために残しており、古墳自体はフェンスで区切られて近づけないように封鎖されている。
なのだが、地脈の流れはそのフェンスから手の届く部分でも十分に触れられるようだったので、スペースから手を伸ばして魔石を置いて、地脈へと捧げる。
そして回復した流れをさらにたどり、今度見つけたのは道祖神だ。
お地蔵さんとも似ているのかもしれないけれど、町の中にひっそりと残されていたその道祖神は見た目がなんかおさるさんっぽいやつで地蔵っぽさはないものだった。
それもきれいに掃除をしてから魔石を捧げて次へと向かう。
そんなことを僕はその後何日も続けた。
そうして数日が過ぎ、自宅を中心とした僕が走っていける範囲の地脈の流れは、目に見えて回復することができたのだった。