作品タイトル不明
魔石の行方
「いったい何がどうなったんだ?」
掃除を終えたお地蔵さんに魔石をお供えした。
すると、お地蔵さんの手前に置いた魔石が一瞬光ったかと思うと、その光が広がり、次の瞬間には魔石が消えていた。
なにかの手品でも見ているかのような、一瞬の出来事だ。
なにがなにやらわからない。
「……ちゃんとお地蔵様に渡ったってことでいい、んだよな?」
せっかくお供えしたのだから、ただ消え去ったというよりはお地蔵さんが食べてくれたと思いたい。
が、ダンジョンに関係のないお地蔵さんに魔石をどうこうする力があるのかは不明だ。
ただ、なんとなくだけれど、魔石が光った時にその光に魔力を感じた気がした。
というより、魔力が光となり、そのままお地蔵さんに吸い込まれていった――そんな感じだ。
「そっか、もしかして魔力を感じ取れば何かわかるかな?」
少し気になったので、今も僕はアクセサリー代わりに腕につけたままの腕輪の能力を発揮する。
この腕輪はダンジョンで手に入れたアースソナーだ。
シルバーの腕輪型マジックアイテムでそこには緑色の宝石がはめ込まれており、地中や地表を、魔力の波で探ることができる。
お地蔵さんも石でできているからなにかわかるかもしれないと思い、そのアースソナーの力を発動した。
僕の魔力と緑色の宝石の魔力が共鳴し、波のように地面や地中へと広がっていく。
ダンジョンの外で使うのは初めてだったが、どうやら外でも問題なく使うことができるようだ。
……意外と面白いな、これは。
ダンジョンではサバンナのような環境か、地下神殿の中でしか、僕はアースソナーを使用してこなかった。
なので、シンプルに地形やそこにいるモンスターの位置などしか把握できなかった。
だが、地上はサバンナよりも複雑だ。
地面は思った以上に入り組んでいる。
道路わきにある排水用の溝の形から、個人宅の敷地の境目に置かれているブロック塀にコンクリートで作られたマンションなどの建物の複雑な形が魔力を通して感じ取れる。
また、地面の下も複雑だ。
ダンジョン内では地中はシンプルで、感じ取れるのは鉱脈などだけだった。
けれど、ここにはマンホールから直下に穴が続き水道管があったり、建物の下にはコンクリートと鉄筋で作られた基礎があったり、電線が地中を通っている場所もあるみたいだ。
ダンジョンとは違う。
ここは――人の手で作られた世界だ。
アースソナーで感じ取れる情報はあまりに膨大だ。
これ、下手に使っていたら脳の処理能力を超えて、人によっては処理しきれず、頭がパンクするかもしれない。
まあ、僕は多少は使い慣れているのと 超集中(ゾーン) があるためか、なんとかなっているけどね。
むしろ、これがあれば地表のゴミの位置も手に取るようにわかるかもしれない。
だが、いまはそんなことはどうでもいい。
本題はそこじゃない。
僕の目の前にあるお地蔵さん。
きっとこれは昔からこの地にあるものだと思う。
どのくらいの起源をもつお地蔵さんなのかは知らないが、どうやら魔石は魔力となって、このお地蔵さんにすべて吸い込まれたようだ。
目の前にある小さなお地蔵さんには魔力の反応があった。
そして、そのお地蔵さんの足元から地中を通り、魔力の線が続いている。
どこに繋がるラインなのかはわからない。
ただ、なんとなくその魔力の流れを見て、僕は思った。
これは、この地の地脈のようなものなのではないだろうかと。