作品タイトル不明
社会貢献
「聞いて聞いて。今日ね、渚の仕事を見学に行っていたんだ。ついこの前まで僕と一緒に学校で勉強していたと思ってたけど、渚もその妹の楓ちゃんもすごく大人になっていてびっくりしたよ」
自宅での夕食時のこと。
僕は今日あったことを、一緒に食事をしているお母さんにあれこれ話す。
特に最近は自室で勉強ばかりしていたから、外出での出来事は新鮮で、いくらでも話すことができた。
僕が次から次へと話すのを、お母さんはニコニコしながら聞いてくれている。
「佑馬は掃除するのが得意だものね。今も家の掃除を手伝ってくれてお母さんすごく助かっているもの」
うん、ごめんねお母さん。
別に僕は掃除が好きなわけでも、得意なわけでもないんだ。
全部スーちゃんがやってくれているから、実際に自分で掃除しようと思ったら多分へたくそな部類に入ると思う。
ただ、喜んでくれているんだから否定はしないけどね。
「まあね。掃除なら僕に任せておいてよ」
「ふふ、ありがとう。それなら、うちの家もそうだけど近所の道路とかにゴミが落ちているのを見かけたら拾って捨てておいてくれないかしら? やっぱり町中もきれいじゃないと気持ちよくないからね」
ふとした会話の中でお母さんがそんなことを言う。
そういえばそうかもしれない。
今まではあんまり気にしたことがなかったけれど、結構ゴミっていろんなところにあるよな。
道路には空き缶やコンビニの袋、たばこの吸い殻が落ちているのを見かけることもある。
通り過ぎるだけで気にしないことも多いけど、内心では汚いなーと思うことだってあるはずだ。
だけど、これまでの僕はそんなゴミを見ても見て見ぬふりをしていたように思う。
わざわざ道路に落ちているゴミを見つけたときに拾うことなんてなかった。
誰かが拾ってくれるだろうと思っていたのかもしれない。
でも、改めて考えてみるとゴミなんて落ちていないほうがいいに決まっているじゃないか。
なんで今までやってこなかったんだろうか。
それは多分、めんどくさいとか自分が捨てたんじゃないとか、誰かがやってくれるだろうという思いがあったからだ。
無意識に人任せにして自分のこととしては考えていなかったように思う。
「社会貢献、か」
夕食を食べ終えて部屋に戻ってからそんな言葉が口に出た。
渚が言っていた言葉だ。
自分の仕事が誰かの役に立つ、という思い。
必要としてくれる人がいるから仕事があるし、そんな仕事をすることがやりがいでもあるという話をしてくれていた。
それとは少し違うのかもしれないけれど、お金が貰えなくても、世のため人のため、自分のためにゴミを拾うのもいいかもしれない。
「ちょっと散歩に行こうか、スーちゃん」
そう思ったので、夕食後に少し勉強をしてから家を出る。
家の前から外套の明かりの下を、リラックスしながら走る。
ランニングをしながら道路に落ちているゴミを見つけ、それを手に取り、スーちゃんに食べてもらう。
夜風が気持ちいい。
体が軽い。
そして、—ゴミを見つけるたびに、少しだけ街がきれいになる。
時間にして一時間くらいだろうか。
いろんな道を一筆書きのようにたどりながら走り、目にしたゴミをすべて拾う。
そんなことをしていると、懐かしいものを見つけて立ち止まった。