作品タイトル不明
友人のアドバイス
こんなにお金をもらってもいいのかと驚く。
僕は大金を自分の手で持ち歩いた経験がないので、こんなお金を持っていても大丈夫なんだろうかと不安になる。
というか、渚は自分の財布からサッとお札を抜き出して渡してきたけど、普段からこんな大金を持ち歩いているんだろうか。
会社の社長さんってすごいんだな。
あまりに予想外の大金を渡されたので、こんなにもらえないよ、と言ったが聞き入れてもらえなかった。
渚が言うにはこれは正当な報酬なのだそうだ。
普通、こういうゴミ屋敷を片付けるのは人手がいる。
家の中で分別しながら片付ける人も必要だし、分別したゴミを玄関先にまで運ぶ人もいる。
そして、家の外に集めたゴミを車に載せてゴミ処理所まで運ぶための準備をする人だって必要だ。
たいていの同業他社はこういう仕事は複数の作業員がそれぞれに役割分担しながらも協力して片づけていく。
そのように幾人もの人を使って仕事をこなすため、当然ながら会社経営者はその人数分のお給料を払わなければならない。
渚の見立てではこの家のゴミの規模なら四人か五人の作業員が二日間で片付けるレベルのゴミ屋敷だったらしい。
それを僕、もといスーちゃんは作業員の手を使わずに単独できれいさっぱりとゴミを食べてしまった。
つまりは最低でも八人分以上の働きをしたということになる。
また、集めたゴミを運ぶ手間もなければ処理場に支払う費用も完全に浮いたわけだ。
なので、渚からすると今回の報酬は働きに対してはむしろ安いくらいだと言われた。
そんなことを渚に力説され、楓ちゃんからは「バイトしたんだからお給料はもらえる分だけもらっておけばいいのよ」と言われてしまった。
どうやら楓ちゃんも渚の会社でスイちゃんとともにバイトして、結構稼いでいるみたいだ。
兄妹の関係だが特に遠慮せずに報酬を受け取っていると聞いたこともあり、最終的には僕もそのお金をありがたく受け取ることにした。
また、お金を稼げるということがわかり、渚も自分の仕事を手伝ってくれないかと言ってくれたこともあり、今後もゴミ掃除の仕事をやってみたいと話す。
ただ、僕がこの話をしたら、今度は逆に渚のほうから「仕事しすぎないほうがいいかも」と言われてしまった。
意味が分からん。
なんで誘ったほうが止めるようなことをいうのかとチンプンカンプンだ。
だが、渚曰く、彼自身は自分で考えてこの仕事をやってみようと会社を立ち上げて働いているが、僕はまだそういう段階じゃないからだそうだ。
この清掃の仕事をこれからもずっと続けていくつもりであれば歓迎するけれど、僕はダンジョンから帰ってきてから間もないし、いまだに自分自身の感覚では中学生だ。
今も試験を受けるために勉強もしているのに、お金欲しさにバイトばかりするのはもったいない。
勉強したり、試験を受けたり、バイトをすることで僕自身がなにかしたいことが必ず見つかるはず。
むしろそういうのを見つけるためにも、バイトだけに注力せずに勉強も含めていろいろなことにチャレンジしたほうがいいんじゃないかと言ってくれた。
ほんとにすごいな、渚は。
正直、ちょっとだけ目がくらんだ。
楽に稼げる道が目の前にある。
僕はポンッと十万円を渡されたことで、すぐに毎日同じ仕事を繰り返したら一か月でめちゃくちゃ稼げるんじゃないか、みたいなことしか頭に浮かばなかった。
しかし、渚が言うことも一理あるかもしれない。
清掃業も悪くはないだろうけれど、世の中には僕の知らないことも多い。
もっといろんなことを知りたいし、やってみたいと思った。
とりあえず、車の免許でも取ろうかな?
渚の運転する帰りの送迎時にはそんなことを考えながら、自宅へ帰ることになった。