作品タイトル不明
ゴミの選定
「思ったより時間がかかっちゃったな」
ゴミ屋敷の中のゴミをスーちゃんに食べてもらう。
僕としてはすぐに終わるかなと思ったが、結局は一時間くらい時間がかかってしまった。
それも、この家が古すぎるせいだ。
スーちゃんにゴミを食べてと言えば、もっと早く終わるかと思っていた。
巨大なスライムボディーになることができるスーちゃんは簡単に大量のゴミを食べられるからだ。
とはいえ、「ゴミ」と一言で言っても定義は難しい。
例えばだが、僕は自分の家での掃除のときにはホコリやシミ、油汚れに砂や土などを食べてもらっていた。
普段からお母さんが掃除してくれているので、それらを食べてもらうだけで十分きれいな状態を保つことができる。
つまり、スーちゃんは掃除のときに箪笥や引き出し、机や椅子などを食べてしまうことはない。
だが、このゴミ屋敷では違う。
ここにあるものはほぼすべてがゴミで、家の中どころかその庭にまで無数に散乱している椅子や机はまごうことなきゴミだ。
家の中にある箪笥や引き出しなども粗大ごみとして処理しなければならないのでスライムに食べてもらえばゴミ処理所に持っていく必要もなければ処理費用も発生しないことになる。
なので、大型のものも食べてもらいたいのだけれど、何でもかんでも食べさせるわけにはいかないのが難しい。
例えば、天井についている照明器具などは片付け作業の最中にも使用したいので食べられたら困る。
ほかにも水道の蛇口みたいなものも食べてもらったら困るだろう。
今はまだ水道が通っているとのことで蛇口が無くなってしまうと水がずっと出続けてしまう。
また、建物自体の問題もあった。
この家は古い。
壁が破れている場所もある。
場所によっては土壁になっていて一部表面が崩れている場所もあった。
そういう壁をゴミと認識して食べつくされても困るだろう。
あるいは、柱もそうだ。
シロアリが食べた柱は、建物を支えるという役割を果たしているか疑問なほどぐらぐらしている。
が、だからといってそれがゴミと決めつけて柱をスーちゃんが食べてしまうと、僕らが中にいる状態で家が倒壊する危険もあるわけだ。
このように、何を食べていいのか、何を残すべきかの判断が必要になった。
そこで、僕が初めて自分の家の掃除をスーちゃんに頼んだときのように、一つひとつを確認しながら食べてもらったのだ。
スーちゃんがゴミを体の中に取り込み、これは食べてもいいかと僕に語りかける。
といってもスーちゃんは直接言葉を発することはできない。
だけど、僕はなんとなくスーちゃんが聞いてくる「これは食べてもいいか」という質問がわかる気がしたので、渚にも確認しながら食べてもらっていった。
こんなふうにやっていたので、最初に考えていたよりも全部のゴミを食べきるのには時間がかかってしまった。
これなら、最初から建物ごと解体したほうが早かったんじゃないかとすら思う。
だけど、渚が受けた仕事の依頼はゴミ屋敷のゴミを片付けることであり、その後にこの家を相続したお孫さんが建物を解体するのか、はたまたリフォームして売りに出すのかはわからない。
勝手に建物全体を食べつくして消滅させるようなことはできない。
時間がかかっても一つひとつを丁寧に確認しながらやるしかなかった。
「ありがとう。佑馬君のおかげで予定よりも相当早く終わったよ。これで遅いって言われるほうが信じられないよ」
「そうかな? まあ、スーちゃんもこれで経験も積めたから、次からも同じようにゴミだけを食べることがあればもっと早く終われるかもね」
「スーちゃんはすごいね。うちはスイちゃんが一番食べるスピードが早いんだけど、それよりも圧倒的に早かったよ。もし佑馬君がよければ、これからも仕事を手伝ってもらいたいくらいだよ。もちろん、仕事してくれた報酬はちゃんと払うからね。あ、そうだ。これは今日の分」
渚はスーちゃんの食事スピードの早さにしきりに驚き、感謝しまくってくれた。
楓ちゃんもすごいすごいと言いつつ、スイちゃんと一緒にスーちゃんの体に触れて撫でながら話しかけている。
なんか頷いたりしているけど、スーちゃんと話したりできるんだろうか。
そんなことを考えていると、渚が今日の仕事の給料だと言って封筒にお金を入れて渡してくれた。
……なんか今、結構な枚数を入れていなかった?
気になった僕はもらった封筒の中身をその場で確認し、仰天する。
一万円札が、十枚。
……十万?
なんと、驚くことに封筒の中には十万円もの大金が入っていた。