軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

66 勇者の日常

~勇者田中貴子視点~

私たちがたどり着いたのはネフィスタウンという町だった。

開拓村が大発展したもので、ララーナ教とは別の神様を祀る神殿があり、住民の大半はその神様を信仰しているらしい。私はララーナ様に使命を授かっている手前、その宗教に入ることはできないんだけどね。

この町では、私たちは大歓迎を受ける。

スレイプニルのスレイとキラータランチュランのキラタンは神獣と呼ばれ、崇められているからだ。下半身が馬のケンタウロスと下半身がクモのアラクネたちに囲まれた時はどうなることかと思っていたけど、彼らを中心に盛大にもてなされている。

すぐに住居を宛がわれ、毎日食べきれないくらいのお供え物が届く。

当初は仕事しなくていいからラッキー!!と思っていたけど、根っからの社畜の私には逆に辛い。何とか仕事を探そうとしたが、「巫女様にそんなことはさせられません」と言って断られた。ここでは私はどうも巫女らしい。仕事をしなければ駄目になりそうで、ちょっと心配になる。スレイとキラタンに相談しても、大したアドバイスを貰えなかった。

「何が不満なのだ?我らは神獣と巫女だ。堂々としていろ」

「そんなことより、フルーツを多めに持って来るように言ってくれない?」

聞いた私が馬鹿だった。

そんな私にも相談できる人がいた。神官のブルーさんだ。

「なるほど・・・仕事をしたいと・・・現時点では少し難しいですね」

「そうですよね・・・」

「だったら神官学校に入って学んでみるのはどうでしょうか?」

流石にそれは駄目だろう・・・

私は言葉を濁して、お断りをする。

「私はララーナ様を信仰しております。ですので、そちらの神様を信仰することは、流石にできないと思います・・・」

「それは大丈夫ですよ。私たちが信仰しているネフィス様は、ララーナ様の上司の神様です。ネフィス様を信仰することは、ララーナ様を信仰することと同じなのです。それに私は元ララーナ教会の神官でしたしね」

「そ、そうなんですね・・・」

本当のところはどうか分からないけど、そういう設定なら・・・

とりあえず、見学にだけ行くことにした。

ネフィス教はララーナ教とは違って、かなり健全な印象を受けた。

あくどいことなんてしないし、何もしなくても寄付は十分ある。ただお祈りの仕方が神社でやる手を2回打つ方法で、賽銭箱のようなものがあるのは、ちょっと引っ掛かったけどね。

「当教団の方針で、まずは読み書きと基本的な計算を習得させます。そして、自分たちで生活費を稼ぐことができはじめて、一人前の神官と認められるのです」

「えっ?寄付に頼った運営をしているのではないんですか?」

「もちろん、寄付は有難く遣わせていただきます。しかし、寄付に頼りっきりはよくないというのが聖女様の方針です」

聖女様?

正確には緑の聖女様らしいけど、ネフィス様に遣わされた存在らしい。

かなりの人格者で数々の奇跡を起こしたのに驕ることなく、信仰の道を歩まれているそうだ。

「ララーナ教会とは大違いですね・・・」

「そうなんですよ。ララーナ教会は酷くて、この際言いますけど・・・」

延々とララーナ教会の愚痴を聞かされた。

ブルーさんはいい人だけど、ララーナ教会の話は禁句だったようだ。

「一応、読み書きと簡単な計算はできるのですが、生計を立てるとなると難しいですね。一応冒険者ですが、スレイとキラタンに頼りっきりですし・・・」

「そうでしたね。まあ一度入校して、落ち着いて考えればいいのではないのでしょうか?」

「そうします。それで学費のほうは?」

「後払いでも結構ですよ」

暇を持て余していた私は入校することに決めた。

授業自体は難しいことはなく、お祈りの仕方なんて、すぐにマスターできた。だって、手を2回叩くだけだしね。

★★★

すぐに私は神官の資格を取ることができた。

読み書きと計算は元からできたし、動物や魔物の声を聞くことができる能力は結構なレアスキルらしく、そのスキルを活かして、獣医っぽい仕事をすることになった。ある程度採算が取れるしね。

それに治療も魔法薬が充実しているから、魔法が使えなくても薬や薬草の知識があれば簡単な治療はできる。手に負えない症状なら、神殿にはブルーさんを筆頭に優秀な回復術師がいるから大丈夫だ。

今日はブルーさんに飲みに誘われた。

何かにつけて目を掛けてもらっていたので、誘ってくれて凄く嬉しかった。私と同時期に神官資格を取得した神官たちも一緒に参加する。

全員が集合したところで、ブルーさんが言った。

「皆さん、おめでとうございます。それでこの中で希望する方がいましたら、スズキタウンへの聖地巡礼に行こうと思います」

全員が手を挙げた。

私も楽しみだ。だって素晴らしい教団を作った聖女様にお会いすることができるからね。

こうして、私は生活の心配がなくなり、異世界でも、のんびりと過ごせることになった。