作品タイトル不明
67 勇者の日常 2
~勇者田中貴子視点~
私は今の生活が気に入っている。
週に2回ほど、神官学校の講師を務め、調子の悪くなった家畜がいれば、往診に行く。獣医みたいな仕事だけど、ここでは巫女と呼ばれている。スレイとキラタンのお世話をしているからだ。今日は元気のなくなった乳牛の診察にやってきた。早速スキルを使う。
(お腹が張って苦しいわ・・・)
(ガスが溜まっているようね?)
(食べ過ぎかしら?)
(間違いなくね)
結局、お腹に溜まっているガスを抜く魔法薬を処方して治療は終了した。牧場主には本当に感謝された。
「ありがとうございます、巫女様。これは報酬とは別に特産品のチーズです。美味しいですよ」
「こちらこそ、毎回すみませんね」
「いえいえ、またお願いしますね」
人の役にも立っているし、大天使様の手紙にあった「目の前の困っている者を助ける」ことができている。大して能力のない私にしてみれば、頑張っているほうだと思う。
そんな私にも、気が気でない行事がある。それは勇者対策訓練だ。
ブルーさんに聞いたところ、勇者というテロリストに近い存在が襲撃してきたことを想定しての訓練らしい。
というか、私も勇者なんだけどね・・・
世の中には私以外にもヤバい勇者がいるようだ。
訓練は多岐に渡る。
非戦闘員を避難させたり、救援依頼を送る方法を確認する。実際に大鷲族という鳥にしか見えない獣人が空を飛んで知らせに行くんだけど、初めて見た時はびっくりした。
私はこれでも神官資格を持っているので、一般市民よりは責任ある立場にある。スレイとキラタンにお願いして物資を運搬したり、場合によっては戦闘もさせられるようだ。
「勇者など、一捻りにしてくれる」
「その辺の人間に捕まった誰かさんが言うセリフじゃないよね?」
「何だと!?」
「喧嘩しないで!!基本的には怪我人や物資の運搬がメインだからね。私はスレイにもキラタンにも危ないことはしてほしくないしね」
「うむ・・・」
「まあ、何とかなるよ」
訓練の後は決まって飲み会がある。
ネフィスタウンには、人間だけでなく多くの種族が生活している。エルフやドワーフだけでなく、多くの魔族や獣人も住んでいる。私はスレイやキラタンを連れているし、巫女という設定だから、ちょっとした有名人だ。なので、色々な人たちがひっきりなしに話に来る。
今も熊人族の女性と話し込んでいる。
「勇者って、どんな奴なんですか?」
「私たち熊人族の前の族長が、前回の勇者に殺されたんだ。能力は高いけど、性格は最悪。味方の人間にも嫌われていたみたいだしね。もし目の前に現れたら、相打ち覚悟で戦うよ。前の族長は私の叔父にあたるからね。仇は取るよ」
そんな話をしているところにブルーさんもやってきた。
「タンタカさんは、勇者について何も知らないんですね?」
「は、はい・・・」
「一応、ララーナ様に召喚されたみたいですが、私が思うに折角いただいた能力に溺れ、使命を忘れた結果だと思いますね。私たち人間にとっても汚点でしかありません。この世の中に勇者なんて必要ないのです」
「そ、そうですよね・・・」
私は相槌を打つしかできなかった。
この時、私は絶対に自分が勇者だと名乗らないことを心に誓った。
「でも聖女様は素晴らしい方ですよ。私も尊敬しています。このように魔族や獣人たちと仲良く暮らせるのも、全て聖女様のお陰なのです」
「そうなんですね。是非、お会いしたいです」
話が勇者から聖女様に移ったので、この話を広げる。私も興味があったので、色々と質問をした。
「前に新たに神官になった者たちで、スズキタウンを訪問する話がありましたが、その前に聖女様がこちらに視察に来られることになりました。だから、もうすぐ会えますよ」
「本当ですか!?それは楽しみです」
「期待しておいてください。タンタカさんは直接紹介しますね」
「ありがとうございます」
そんな話をしながら、夜も更けていった。
訓練や勇者のことは好きになれないけど、飲み会は楽しい。
★★★
~大天使ガブリエラ視点~
また私は、ララーナ様に叱責されている。
「何でなの!?勇者を送り込んだというのに、全く信仰心が集まってないじゃないの!!」
「申し訳ありません」
私が謝ることか?
と心の中で思いながらも、とりあえず謝ってみる。
「仕方ないわね。早く殺して、次の転生者を用意しないとね」
「流石にそれは・・・」
「もういいわ!!貴方はしばらく謹慎よ。しっかり反省しなさい」
一体、何を反省しろと?
もうこうなったら仕方がない。
ララーナ様に天罰が下ればいいのに・・・