軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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大変だというエダの言葉にレカンが同意したのは、そういう意味ではなかった。

先ほど感じたけた外れの強さこそ、このユリーカとかいう魔獣の本質だ。今は何かの働きで隠蔽されているが、先ほどレカンの背筋を凍らせたものこそ、この魔獣の正体だ。

ということは、たぶんジェリコもそうなのだ。

だが、その強さは隠蔽されている。何かの働きによって。

もちろんシーラだ。シーラが何かの魔法によって、ジェリコの正体を隠しきっているのだ。ユリーカの強さをたちまち隠してしまったように。

ということは、単体でもレカンが勝てないかもしれない強大な魔獣が二匹いるということなのだ。

これはまさに大変というしかない事態である。

だが落ち着いて考えてみれば、そもそもシーラこそ脅威なのだ。敵に回せばたぶん勝てない。その恐ろしい魔法使いの近くでレカンは短くない時間を過ごしたが、最初の短い期間を除いて、シーラが自分やエダを害する危険を感じたことはない。何を考えているかわからないところはあるし、油断するとひどい目に遭わされそうな気もするが、この世界でレカンが一番心を許せる人間の一人だ。

ジェリコについても、今までのところ、敵に回る心配はしなくていいように思われる。あまり身構えないほうがいいだろう。

「ぶるふふん?」

何を考えているの、と言わんばかりにジェリコがレカンの顔をのぞき込んだ。

「何でもない」

「ぶるぶる」

ジェリコがレカンの肩をぽんぽんとたたいた。

心配するな、とでも言うように。

そしてレカンが右手に持った剣を指さした。

「ぶるる?」

そういえば剣を抜いたままだった。レカンは剣をしまった。

そのあとしばらくシーラはエダと話をして立ち去った。レカンはシーラに用事があったので引き留めようとしたが、シーラは目線でレカンの口を封じた。

レカンとエダとジェリコとユリーカはゴンクール邸に向かった。

門番は二匹に増殖した猿をみて驚いた目をした。

離れはすっかり出来上がっている。こじんまりとした建物だが居心地はよさそうだ。二階にレカン、ノーマ、エダの部屋と客室がある。といってもノーマは普段本館の自室で寝起きするという。隣接して立っている小さな小屋がジェリコの住まいだ。もっともジェリコは客室から池をみおろす景色が気に入ったようなので、ここで寝泊まりするかもしれない。

別棟の調薬小屋とは屋根のある通路でつながっている。

風呂に入ったあと、レカン、ノーマ、エダ、ジンガーの四人で夕食をした。楽しい語らいだった。心地よい風に吹かれて、レカンは安らかに眠った。

翌日、レカンはシーラの薬草畑でシアリギの若芽を採取した。ジェリコも手伝ってくれた。ユリーカも一緒に来てくれて、ジェリコは丁寧に採取のしかたをユリーカに指導した。みていたレカンも勉強になった。ジェリコとユリーカのおかげで、この日のうちに薬草畑での採取は終わった。だが、レカンが必要とする量には届かない。翌日からは町を出て採取に向かう。

ちなみにエダは、自宅のご近所さんたちに土産を配ってから自宅の掃除をしていたという。もうこの自宅は必要ないように思うが、一応今年いっぱいは借用することにしている。来年のことはまたあとで考えればいい。

この日の夜中、レカンはむくりと起き上がった。

シーラの魔力の気配がしたのだ。

レカンは〈隠蔽〉の魔法を自分にかけ、窓から飛び出して庭を走り、塀を跳び越えて、リーコネン地区にあるシーラの隠れ家に向かった。

シーラはいつものように中庭に張り出したテラスで茶を用意して待っていた。

「やあ」

「シーラ。聞きたいことがある」

「あんたいっつもそれだね。まあ、お茶をお飲み」

温かい茶を口に含んでじんわりと飲み込むと、ふわりとした香りに包まれ、心が少し柔らかくなった。

「それで? 聞きたいことって何だい?」

「〈不死王の指輪〉と〈闇鬼の呪符〉を同時に発動させると、両方の効果が消える。これはほかの〈始原の恩寵品〉でも同じなのか?」

「なんだって? 少し詳しく話してごらん」

レカンは検証の結果をシーラに説明した。

シーラはむずかしい顔をして考え込んだ。それはずいぶん長い時間に及んだ。

「そういえば、ある研究者からこんなことを聞いたことがあったねえ。〈古代恩寵品はお互いの効果を打ち消し合うと思われる〉」

「つまり、どの恩寵品同士でも、同時に発動させると効果が消えてしまうんだな」

「そんなことはわからないよ。そもそも〈始原の恩寵品〉を複数所持したやつなんかいやしない。いや、複数持ってたんじゃないかとにらんだやつは何人かいたんだけど、ほんとのところはわからない。同時に使ったなんて話は聞いたこともないよ。〈始原の恩寵品〉を持った者同士が戦ったって話も知らない」

「そうか。その研究者はどうしてそう思ったんだろう」

「さあ? 今となっちゃ確かめようもないね。すまないね」

「いや、大いに参考になった。オレが〈指輪〉や〈呪符〉を発動しても無効にされる可能性がある。そして、敵が〈始原の恩寵品〉を使っても、無効にできる可能性があるということだな。これは重要な情報だ」