軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「それでわかった。それとお前、奇妙なことを言ったな。プラドがノーマの何を楽しみにしているって?」

「これは私の勝手な想像にすぎませんが、プラド様は長いあいだ、一人で考え、一人で決断してこられました。大変な重荷を抱えておられたのです。執事のカンネルは優秀な補佐役ではありますが、プラド様の意図からはみ出したことは一切なさらなかったはずです」

「ふうん」

「ところがノーマ様は、プラド様とはまったく別の発想をなさいます。しかも自発的に。プラド様は、ご自分とちがう思考をするノーマ様によって場の議論が整理されるのをみまもって判断を下せばよくなったのです。おそらく、今までお感じになったことのない気楽さを感じておられるはずです」

「ふん?」

「そしてノーマ様は、ウテナ様とジョナ様のあいだを取り持たれ、お子様がた同士のあいだを取り持たれました。これにより、当家の未来は一段と明るくなったのです。そしてそれは、プラド様が命じられたことでも、望まれたことでもなかったのに、そうなってみるとまさに望ましいことであったのです。以上が、プラド様がノーマ様のなさりようを楽しみにしておられる内容です」

「何となくわかった。ノーマ」

「うん。何かな」

「ゴンクール家にあんたがいる理由や、それがあんたにとってどういう意味なのかは、おおむねわかった。次を話してくれ」

「ああ、ここからが本題だ」

5

四の月十一日、ゴンクール家にワズロフ家から使いが来た。レカンがツボルト迷宮で〈彗星斬り〉を手に入れたのがたしか四の月十五日だったから、その少し前ということになる。

その使いというのはゴロウン子爵キニス・ウィーバーという人物だった。身分からいえばヴォーカ領主より上だ。ジンガーによれば、ゴロウン子爵はよほど重要な用事でなければワズロフ家が使者にしない人物であり、王家や侯爵家や伯爵家以外にはほとんど遣わされたことがないという。

子爵はまずヴォーカ領主クリムス・ウルバンにあいさつし、ノーマの所在を尋ねた。クリムスは、ノーマがワズロフ家当主の従姉妹にあたるなどとはまったく知らなかったので、ひどく驚いた。子爵は子爵で、ノーマがゴンクール家という貴族家の後継者になっていると知って当惑した。

アギト・ウルバンとテスラ隊長に案内されてゴンクール家を訪れた子爵は、プラド・ゴンクールに会い、ワズロフ家当主がノーマに用事ができたため、ノーマを迎えにきたのだと説明した。その用事が何なのかは言わなかったが、複数の侯爵家が関わる重要事項らしいことは匂わせた。

プラドもまたひどく驚いた。ジンガーがワズロフ家の高位の騎士だと知って、思っていたよりもずっとノーマがワズロフ家から手厚く遇されていることはわかったものの、まさか子爵位を持つ貴族が使者に立てられるほどの存在だとは思っていなかったのである。

子爵はノーマと会い、当主マンフリー・ワズロフがあなたに大切な用事があるので、すみやかにマシャジャインにお越しいただきたいと述べた。子爵の身分と立場からすればずいぶん下手に出た言い方なのだが、ノーマは少々感情を害した。ノーマの側の都合を無視した言い分だったからである。

ノーマは、現在父サースフリーの著書を薬聖スカラベルが刊行することになり、その原稿を調える作業で忙しいため、長期間ヴォーカを離れることはできないと告げた。

子爵は、その事業のことを知っていた。というのは、何事にもそつのないアーマミール神官は、この事業をスカラベルの個人事業にとどめず、宰相府と交渉して〈スカラベル導師の発案と主導により国王の全面的な支援のもと行われる国家的事業〉とすることに成功した。その旨は、ワズロフ家に宰相府内務書記長官から伝達され、さらに、著者の名にワズロフ家の名を冠するべきか否かにつき判断を求めてきた。

これは要するに、サースフリーがワズロフ家の人間という扱いでいいのかは、ワズロフ家当主マンフリーの判断に委ねるということであり、宰相府やアーマミールが、ワズロフ家の名を使わせてほしいと頼んでいるわけではまったくない。

マンフリーは、名家の当主らしい対応をした。すなわち、サースフリーはワズロフ家先々代の六男に間違いなく、著者名には必ずワズロフの名を入れていただきたいと回答し、この事業に多額の献金をしたのである。

子爵はそういう次第であるから、ワズロフ家内部の都合でこの事業の取り進めについて多少の遅れが出ようとも、きっと宰相府はご了解くださるだろうと笑った。

これが著しくノーマの機嫌をそこねた。この事業の取り進めについて口出しする権利をワズロフ家は持っているといわんばかりの言いぐさだからだ。そして筆写師ラクルスやノーマの思いや努力など踏みにじってもかまわないというやり方だからだ。

「亡き父サースフリーの遺作に侯爵家の名を冠することをお許しくださるというワズロフ家ご当主のご温情、驚き入る。ただただ感謝のほかはありません」

子爵が満面の笑みを浮かべる。

「されど父サースフリーはワズロフ家を放逐された身。ワズロフ家の家名を名乗ることをいかに思うことか」

子爵の笑いが凍り付いた。

「また、ワズロフ家としてはこの事業にワズロフ家の名を入れるよう宰相府にご提案なされたそうですが、サースフリーの子にしてこの事業の当事者である私は、ワズロフ家からまだ何のごあいさつも頂いておりません。したがって、ワズロフ家の名を入れるかどうかの判断は、現段階ではできません」

子爵の顔に当惑が浮かんだ。

「いずれにしても、私は小なりとはいえ貴族の身にして当家の後継者です。いかにワズロフ家ご当主とはいえ、一方的に呼び出しを受けるいわれはありません」