軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

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「ノーマ様をお迎えしたおかげで、当初よりも大きな目的を無事果たすことができ、その点では現在も順調といえます。ただし、ノーマ様をお迎えしたことにより、当初予定されていなかった要素が生じ、そのことの持つ望ましい効果に喜びつつ、不安定要素をどのように消化するか、とまどいも生じている。といった状態かと思います」

「何を言っているかわからん。わかるようにしゃべれ」

「はい」

フィンディンとしてはできるだけ簡潔に状況を取りまとめたつもりだったので、何を言っているかわからんというレカンの言葉には驚きを覚えた。だが、次の、わかるようにしゃべれという言葉で、はっと気づかされた。

(確かに私の言い方は状況がわかっている者にはうまい取りまとめだと思ってもらえるだろうが、そうでない人間には具体性のない言葉に聞こえたはずだ)

(誰が聞いてもわかるような表現にはなっていなかった)

(レカン様はそこを指摘してくださったのだ)

「では具体的に申し上げます。ただし、ご当主様のご意向について私が申し上げることは、私の推測にすぎません。そこのところはご承知置きくださいませ」

「ああ」

「ノーマ様をお迎えした目的は、将来ガイプス様がご当主を後継できるよう、その道筋をつけるためでした。おそらくご当主様にとって、ノーマ様は大変都合のよい中継ぎ後継者でした。というのは、ノーマ様はゴンクール家の運営などに興味はお持ちでなく、また、その能力も持ち合わせておられず、面倒な係累もお持ちでないからです」

「ふん。それで?」

「ところがノーマ様は、ご当主様とは異なるやり方で、ガイプス様がご当主を後継できる道筋を見事につけてしまわれました。しかも、当家にとって脅威であったバンタロイのボルドリン家の弱みをにぎるということまでなさいました。これは予想以上の成果であり、そのことにご当主は大変満足しておられます。しかし同時に心配もしなくてはならなくなりました」

「心配とは何だ」

「ノーマ様にはこの家を取り仕切る能力があることが明らかになりました。ということは、ガイプス様にご当主の座が回らない可能性を考えなくてはならなくなったのです」

フィンディンは、じっとレカンの顔をみながら話をしつつ、ノーマが気になってしかたがなかった。

(少し踏み込みすぎただろうか)

(だがうわべをなでるような言葉ではレカン様を納得させられない)

実のところ、これはフィンディンの気の回しすぎである。レカンにそこまでの分析力はない。

だが、今までのレカンなら、ジンガーとフィンディンに意見を求めたりはしなかったろう。ゾルタンやツボルト侯爵と渡り合った経験が、レカンにそうさせたのだ。それは直感的な行為だったが、まさにつぼを突いていた。この狼は、少しずつ変わりつつある。

そしてまた、フィンディンが圧倒されるような存在感を、今のレカンが放っているのは確かだ。もはやレカンとフィンディンでは、格がちがう。その格のちがいが、フィンディンをすくませているのだ。

「簡潔に言え。プラドは何を心配してるんだ」

フィンディンは、ぐっと詰まった。それは言葉にはできないことだ。だがレカンは言葉にすることを求めている。ならば言わねばならない。

「ノーマ様が、ゴンクール家を思いのままにしてしまわれることをです」

言った。

言ってしまった。これでノーマとのあいだに築いてきた信頼関係は振り出しに戻った。だがこの言葉を言わなければ、この場をしのぐことはできなかった。

「つまりノーマがゴンクール家を乗っ取るんじゃないかと、プラドは思ってるわけか」

「そう思っておられるわけではありません。ただ、プラド様のお立場では、その可能性を考えないわけにはいかないのです」

これはうまく言えた。フィンディンは自分の言い回しに及第点を与えた。これならレカンも納得してくれるだろう。

「お前の言い方はむずかしくて、オレにはさっぱりわからん。結局、プラドはノーマが好きで、ノーマを信頼しているのか。それともノーマが嫌いで、ノーマを疑っているのか」

こんな二者択一を突きつけられるとは思っていなかったので、フィンディンの優秀な頭脳は、どう答えたらいいのか素早く計算した。だが答えははじめから決まっていた。

「プラド様はノーマ様がお好きで、信頼しておられ、ノーマ様のなさることを楽しみにしておられます」

「なら最初から、そう言えばいいんだ。ゴンクール家の家族たちはどうなんだ? それに使用人たちはどうなんだ? ノーマを好きなのか。それとも嫌いなのか」

「ご家族の皆さまもノーマ様がお好きです。特にお子様がたは大好きです。使用人たちもノーマ様をお慕いし、尊敬いたしております」

鈍器で頭を殴られたような衝撃を感じながら、フィンディンは答えた。

(なんてことだ)

(私がしていたのは結局状況説明だけだった)

(最も大事な要素は当事者それぞれの感情であり意思だったのに)

(レカン様はそこをご指摘くださったのだ)

(そして真実は回りくどいものではなく)

(いつも単純で明快なものなのだ)

(そんなことを忘れていたなんて)

もちろんレカンはそんな複雑なことを考えていたわけではない。ただ単純にフィンディンの言い回しが理解できなかっただけなのだ。ただし急所をつかむレカンの嗅覚は鋭い。だからフィンディンの思考も間違っているわけではない。