軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

11.ぼくの可愛い妹(マイルズ)

ぼくの一番古い記憶。

それは、お母様のお腹にパスカルとふたりで話し掛けていた懐かしい思い出──

「はやくでできてね」

「いっちょにあしょぼうね」

「頼もしいお兄様がいて赤ちゃんも喜んでいるわ」

「「ほんと?」」

弟かな。妹かな。楽しみだね。

パスカルとふたりで赤ちゃんが生まれるのを楽しみに待っていた。もうすぐ会えるはずだったんだ。

ある日、何となく体がだるかった。

「パスカル、あつくない?」

「あっつい。お腹がぐるぐるする」

何だか息が苦しい。どうして?怖いよ…

パチパチと何かが光った。ぼくの体?なんで?

「奥様、お下がりください!魔力の暴走かもしれません!」

「そんなっ!」

「旦那様を呼んできて!護衛騎士もよっ!」

周りが何か叫んでいるけど、もう体の熱さが我慢出来なかった。

「も…やだっ、出てって…、出てけっ!」

我慢できなくて叫んでしまった。声と一緒に何かが溢れ出た気がした。

ガシャンッ!ガタンッ!と何かが壊れる音が響く。ビックリした。パスカルも驚いた顔をしている。僕達は今、何をしたの?

「大変ですっ、奥様が破水しました!」

はすいって何?よく分からないけど、もう、何だかすごく疲れてしまった。

気付けば僕とパスカルは二人して次の日の夕方まで眠ってしまったんだ。

「……痛い」

起きようとすると、何だかお胸が痛かった。

お母様はどこ?

「マイルズ、起きたの?」

「うん。お胸が痛い」

「僕もお胸が痛い」

ふたりでシクシク泣いていると、知らない人達が入って来た。

「……だあれ?」

「魔法塔から来た魔法使いよ。どこか痛い?」

「お胸が痛いの」

「じゃあ、少しだけ魔法を掛けるね。怖くないから心配しないで」

その人が手をかざすと、何だか体がぽかぽかして少し痛いのがなくなりました。

「…ありがとぉ」

「お礼を言えてえらいわね」

褒めてもらえたのは嬉しかったけど、何だか変です。どうしてお母様は来てくれないのかな。

「お母様は?」

「夫人は赤ちゃんを産んだばかりだからここには来られないの」

「あかちゃん!」

そうだ、そうだった!

「弟ですか、妹ですか」

「妹君よ。とっても可愛い女の子」

「パスカル、妹だって!」

「うん!会いたい!いつ会えるの?」

誰に似てるかな。髪は何色かな?

「まずは君達が元気にならないとね」

「もう元気だよ」

「だーめ。無理したらまたお胸が痛くなるわよ」

それはイヤだな。痛いのは嫌いだもん。

「ごはんを好き嫌いしないでちゃんと食べてたくさん寝たら治るからね」

「「はーい」」

そういえば何で体が熱かったのかな。

「……あっついの治ってる」

「ホントだ。なんでだろ?」

それから何日か経って、すっかり元気になりました。

「早くお母様のとこに行こっ!」

「あかちゃんに初めましてってご挨拶しなきゃ!」

ふたりで赤ちゃんのお部屋まで走って行ってドアを開けると──

「……なんでいないの?」

「だってここが赤ちゃんのお部屋だよってお母様が言ってたのに」

急に不安になってきました。

何だかまたお腹が熱いような、変な感じがします。

「こら。二人とも走るのが早いわね」

「……魔法使いのおねえさん。赤ちゃんいないよ?どうして?」

「まずは伯爵のところに行きましょう」

「…うん」

お父様から僕達が魔力があるんだってお話を聞きました。でも僕達はそのコントロールが下手くそなんだって。

だからメイドのアンヌや侍従のマルクが怪我をしたと言われました。

「…ごめんなさい、ぼく分かんなくてっ!」

「マイルズ君にパスカル君。これはね、君達が悪いんじゃないの。これから一緒に練習をしましょう?」

「……お姉さんと?」

「そうよ。そうしたら」

何だか外が騒がしくなりました。だんだんと声が近付いてきます。

「離して!私から子供達を奪わないでっ!」

「……お母様?」

「マイルズ!パスカル!よかった、まだ連れて行かれていなかったのね!!」

連れて行くってどこに?

「お母様、赤ちゃんは?」

「ぼくたちの妹はどこ?」

「…大丈夫よ。二人が魔法を抑えられるようになるまで別の……魔法の国で待っててくれているの」

「オレリー、お前は何を言っているんだ!」

「だって!この子達と離れるなんて絶対に嫌よっ!私の大切な子供達よ。私が必ず守ってみせるわ」

「だが、 あ(・) の(・) 子(・) はどうするんだ」

「……ほんの少しだけよ。物心がつくまでには解決するわ」

「だが、」

「お願いよ、ロドルフ。愛する子供達を手放すなんて私には耐えられません!」

正直、お母様達が何のことを話しているのかよく分かりませんでした。でも、ひとつだけ分かるのは、ぼく達が魔力を抑えられないと、妹は魔法の国から帰ってこないということです。

「お父様、ぼくかんばるから。早く魔力が抑えられるように、妹が帰って来られるようにがんばるから!」

「ぼくも!ちゃんとがんばります!」

それから、お父様達と魔法使いのお姉さんはたくさんお話しをしたみたい。でも、ぼく達は教えてもらえなかった。

イライラすると魔力もパチパチ出てきちゃう。どうして?どうしたらいいの?

「もお!分かんないよぉ!!」

「パスカル、がまんだよ」

「だってこわいもん!ぼくが壊れちゃう!風船みたいにパァンって割れちゃうよお!」

「パスカルの馬鹿!こわいこと言わないでよ!」

「「うわ~~~んっ!!」」

ガシャンガシャシャーン!!

こんな感じでなかなか魔力を抑えることが難しかったけど、1年を過ぎた頃から少しずつコントロールがでいるようになってきた。

「……もうすぐ会えるかな」

「待ちくたびれて僕達のこと嫌いになったかも」

「なんでそういうこと言うんだよ!」

「だってもう2年も待たせてるもん!」

「パスカルの馬鹿!」「馬鹿って言うマイルズの方が馬鹿だ!」

バチバチバチッ!!!

「「あ」」

焦ったら駄目だと言われるとさらに焦ってしまって中々試験に合格出来ない。

でも、2年を過ぎたころ、不思議なことが起こった。

お母様のお腹に妹が帰って来たのだ。

「やったよ、パスカル」

「やったね、マイルズ」

それからは不思議とコントロールが上手くいくようになっていった。

あの頃のようにお母様のお腹に話し掛ける。

「今度こそ兄様がお前を守ってあげるね」

「もう魔力を暴走させてビックリさせたりしないからね」

「「早く出ておいで、僕達の可愛い妹」」