軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

10.閉ざされた世界

「野望娘に1つ良いことを教えて上げようか」

エルフェ先生が何だか悪い顔をしています。

「何ですか?」

「双子達は今回の事で大きなペナルティが1つ付いたということだ」

ペナルティ?それはもしかして、

「……家督相続に響く?」

「ブランシュは頭もいいのだね。どうだい?これからの励みになったかな」

「いいんですか、そんなことを言って」

私が兄達を陥れて家督を奪うかもしれないのに。

「君は大切なものを抱えているからね。二度と無茶はしないと誓ったはずだよ?」

なるほど、そう来るのね。

「要するに正攻法で奪えということですか」

「大切なものを守るために自滅した両親を反面教師として頑張るといい。彼らとお揃いは嫌だろ?」

……お揃いは嫌だけど自滅って?そこまで重い罰が下るというの?

「何故10歳未満の子供に魔法を使わせてはいけないかを知っているかい」

「……コントロールが効かず、暴走する可能性が高いからです」

「そうだ。だから本来ならば双子達は魔力が発現した3歳の時点で魔法塔預かりとなるはずだった。

それを伯爵夫妻が、自分達の能力で確実に暴走を防ぐと誓い、彼等自身の魔力量とコントロール能力があれば可能であると判断して、定期的な検査を受けることを条件に伯爵家での養育を許可したんだ」

「知りませんでした」

「私達もね、双子達は注視していたが、まさか君が離れに隔離されているなんて思いもしなかった」

まあ、他家の内情なんて見えないでしょうし仕方がありません。

「貴族には強い魔力を持った者が出やすい。だから、子供を育てる時にはしっかりと魔力の状態も注意して育てなくてはいけないんだ」

思わずナタリーを見ますが知らなかったらしく首を振っています。

「たぶん、乳母だったエマという人物がその役目を担っていたのだろう。だが、3歳で引き離してしまった。

さて、ブランシュ。君が発現したのは何歳だったのかな?」

え、ちょっと怖いです。でもここで嘘を吐いてはいけないことだけは分かります。

「……6歳です。ミュリエルの存在を初めて知った時にお腹がぐるぐると熱くなって」

「暴走の前兆だ。それで?」

「こう…、ギュッと固めて石にしました」

「魔石を作ったのか?!」

「まさか先日頂いた魔石のことですか?」

あら、マルクが反応してしまったわ。

「貰った?」

「はい、これです」

マルクはまるで仕込み要員かのように証拠として魔石を渡しています。あれは悲しかった気持ちを固めた青い石です。

「……驚いたな。これを6歳で?」

「私が貰った石の方がもっと大きいですぅ!」

ナタリーはなぜそこで参戦するの。

「見せてもらってもいいですか」

「はい!これですっ!」

あなたも仕込み要員なの?コンビネーションがバッチリね。準備の良さに泣けてくるわ。

「は……、これが生成途中で爆発していたら、たぶん彼女は死んでいましたよ」

「えっ?!」

大丈夫よ。ナタリーのことは殺さないから。

「これは、伯爵達の罪が増える一方だ。

育児放棄に魔力面の監督不行き届き。精神的迫害による暴走未遂。10歳未満の児童への魔法の強要か」

まあ、随分と仰々しい罪名が並んでますね。

「君は今のうちにお別れを言っておいた方がいいかもな」

「……もしかしてすごく怒ってますか」

「当たり前だろう。怒らない方がおかしい」

そう?そうなの?……じゃあ、本当に私が悪いわけではなかったのね?

「どうした?」

「……私は悪くないの?」

「どうして君が悪くなるんだ。まあ、無茶をしたのは良くなかったが、おかげでミュリエル嬢は助かったのだし、反省したのだから」

なんでかな。何だか胸が苦しい。何かが溢れ出そう。

……暴走?なんで?

ギュッと強く手を握る。溢れ出さないように固めなきゃ。

「ブランシュッ?!」

「……だいじょぶ、です」

魔石と共に、涙がぽろりと溢れました。

ぽろぽろと止まらないのはどうして?

「頑張ったな、もう大丈夫だ。えらかったな」

エルフェ様が優しく抱き締め、背中をトントンと叩いてくれる。すると余計に涙が止まりません。

「わ、私っ、ほんとに悪くない?」

「君は素敵な子だ。悪いことで目立つことだってできたのに、君は命懸けで妹を救ったじゃないか」

ちがうわ、だってあの子から全部奪うつもりだったもの。

「わたし……悪女になるつもりだったのに」

「ふはっ!ずいぶんと可愛らしい悪女だな」

酷いっ、笑ったわ!一世一代の覚悟だったのに!!

でもよかった。私はこの別館という閉ざされた狭い世界しか知らないから。

だから悪いのは私なのか両親なのか、本当はよく分からなかったの。

ナタリー達は味方してくれたけど、でも二人はこのお家の人達だから。

でも、外の世界から来たエルフェ様が、それも魔法塔の主任だなんて人が私は悪くないって言ってくれたからようやく安心できてしまった。

ナタリー、マルク、ごめんね?

二人を疑ったわけじゃなくて、ただ自信が無かっただけなの。

「これ、エルフェ様にあげます」

「は?いや、だめでしょう」

「……やっと安心できたの。だめかな」

手のひらにはオレンジ色の石がひとつ。

「綺麗だね。暖かい色だ」

「もらってくれます?」

「……ありがとう、ブランシュ。大切にするよ」