軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

そういう話ではなくて

「うちって結構手広く商売してるんだけどさー、縁談とか結構来るんだって。それでいい加減うるさいからちゃんと相手がいるってことにしてくれって話らしいんだよね」

「はー、コリンってもてるんですねぇ」

「私、っていうよりハン家とのつながり。お姉ちゃんたちは恋愛結婚だし、独り身なの私だけだから」

新興の商人であるのに、プレイヌの評議に出入りできるほどの大物だ。そんなこともあるのだろう。無理やり結婚だなんだという話ではないらしい。

「二人は結婚が嫌なわけじゃないんでしょう?」

「まぁ、別にねー」

「それはいいんだよ。でもな、準備だなんだってうるせぇんだよ……。よくわかんねぇ服用意されたり、礼儀作法が云々とか言って。ちゃんとした式挙げねーと、断った相手に示しがつかねぇとか言ってんだよな」

「そうそう、仕方なく付き合ってたんだけどさー、もうめんどくさくなっちゃって。そんなの知らないって言って、勝手に帰っちゃおうかと思ってたとこ」

「女の子って、そういうの憧れがあったりするんじゃないですか?」

ハルカとしてはアルベルトの言うことはわかるのだが、コリンの反応が意外だった。なんとなくブライダルとかウェンディングとかでテンションが上がりそうなイメージがある。

「私さ、他人のそういうのは楽しいけど、自分のって照れくさくてやなんだよね。皆にお祝いしてもらうのはいいけど、知らない人まで呼んでも堅苦しいだけだし。……それに、お金が出てくばっかりだし」

「お金とかは……ご家族がなんとかしてくれそうな雰囲気ですが」

「それもやなの。私の結婚だし、それにさ、私冒険者になったんだよ? ちゃんと独立するつもりでなったのに、こんな風にハン家の娘って扱いされるのもなんか嫌でさー」

色々と言い訳をしているけれど、つまるところコリンもアルベルトも、家族とはいえ当事者じゃない人たちに物を決められたのが気に食わないのだ。冒険者として自立して、全ての決定を自分で、あるいは仲間たちと決めてきたのに、突然そこに割り込まれたのが嫌なのだ。

家族に対する気持ちや、互いの思いがあるせいで、そのあたりが曖昧になって、こうして愚痴るように文句を言っているわけである。

ハルカはその気持ちが今一つよくわからないけれど、なんとなく二人が今の状況に納得していないことだけは受け取ることができた。

「ええっと、ご両親と話してみては?」

「それがさー、パパたちもお兄ちゃんもお姉ちゃんも浮かれちゃって話しづらいんだよー……」

「俺も小さいころから世話になってるから言いづれぇんだよな……」

ため息が二つと、しばしの沈黙。

「悪いんだけど……、ちょっと思ってたのと違ったから私たちは街に戻るわ」

「で、ござる……」

ついてきてはみたけどどうも思っていた展開と違ったエリとカオルは、撤退を申し入れる。二人のお祝いの品でも用意しようかというノリから、一気に面倒くさそうな話になったのを察知したようだ。

「あ、うん、ごめんね、来てもらったのに」

「いやいや、そろそろこっちに戻る用事もあったでござるから……」

「まあ、そうね。急ぎで戻るんじゃなければ、帰り道また声かけてもらってもいい? まだノクトさんの話聞きたいし」

「わかりました。カオルさんはどうしますか?」

「拙者もエリ殿と一緒にいるでござるよ。では、しばしさらばでござる」

二人がそそくさと立ち去ると、その場はまた静かになる。

「ええと、結婚はいいんですよね?」

状況を追い切れていないのはサラだ。

事情が今一つ分かっていない上、まだ子供なので仕方のない部分はある。

「まーねー」

「お互い好き合ってるってことですよね?」

「……いや」

「いや?」

アルベルトの消極的な否定にサラが眉をひそめる。

そうしてアルベルトの正面に行くと、腰に手を当てて顔を見つめた。

「アルさん、結婚する相手を好きかと聞いて否定するのはおかしくないですか? じゃあアルさんは、誰かから結婚しろと言われたら誰とでも結婚できるんですか?」

「は? コリンとの結婚が嫌だとは言ってねぇだろ」

体を起こしたアルベルトは、不服そうに言い返す。年下の女の子から言われても適当に誤魔化したりせず真面目に相手をするのは、アルベルトの素直でいいところかもしれない。

「私、そういう曖昧な態度は良くないと思います!」

「曖昧じゃねぇって」

「アルさんの反応だと、コリンさんも困ってしまいます! ちゃんとプロポーズしてあげてください!」

「なんでそうなんだよ」

「だって結婚するんでしょう?」

「だから、昔からの約束とか、流れとかでそういう話になっただけで……」

「じゃあ! やむを得なければ私やハルカさんとも結婚するんですか!」

「しねぇよ。だからなんでそうなんだよ、めんどくせぇ」

「じゃあそんなどうでも良さそうな雰囲気をですね……」

サラはもともと真面目な優等生だ。そしてちょっとばかり思い込みが強い。はっきりしないアルベルトの態度や、元気のないコリンの雰囲気から何か勘違いしたのかもしれない。

「サラちゃんサラちゃん、その辺にしといて。今そういう話じゃないからねー?」

コリンがどんどんヒートアップしていくサラの腰を引いて、そのまま隣に座らせようとしたところで、むっとした顔のアルベルトが反論する。

「あれこれ言われなくても俺はコリン以外とは結婚する気ねぇよ。ただ勝手に話が進んでるからめんどくせぇって言ってるだけだろ」

「ですか」

「……普通に結婚したらいいじゃん」

「……そうですよね」

「なんだお前ら」

モンタナが頷き、イーストンが呆れ、ハルカが同意する。

コリンとサラが目を真ん丸に見開いて固まってるのにも気づかずに、アルベルトは変な反応をするハルカたちを睨みつけるのであった。