軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

成長したかな?

「俺も今日会ってくる」

「警備がいて入れてもらえないと思うです」

「でも背中に上って木の実とってくる奴がいるんだろ?」

「資格とかがあるんじゃないでしょうか?」

「誰が出してんだよ、それ」

「知らないです」

「……とりあえず俺は今日行くぞ。そのあとのことは近くについてから考える」

なんで起こさなかった、ずるいとの言葉を三人に向けて何度か投げてから、腕を組んだアルベルトは固い決意を述べる。

「ま、いいんじゃない? ここでしか見られないわけだしー、ユーリも見てみたいよねー?」

コリンが問いかけると目を輝かせてユーリも頷いた。

「じゃ、決まりだな、外で待ってるからな!」

一人だけ準備万端だったアルベルトが部屋から飛び出していくのを目で追って、ハルカたちも必要なものだけをもって立ち上がる。

「アルは変わんないよねー」

「背は高くなったんじゃない? 僕が初めて会ったときは同じくらいだったよ」

「そういえば、いつの間にか私たちより頭一つ分大きいですもんね」

赤ん坊であったユーリやナギを除けば、ここ数年で身体的に一番成長したのはアルベルトだろう。ハルカの感覚としてはずいぶんと我慢強くなったし、以前よりしっかり考えてから動いているのだが、コリンの意見は違うようだ。

「背の話じゃなくてさ、あーやって一番初めに飛び出してっちゃうとことかさー」

廊下を歩きながら愚痴のように言ったコリンをユーリが見上げる。手をつないでいたコリンはそれに気が付き「なーに?」と首をかしげる。

「アルはそういうのがかっこいい、よね?」

「…………うーん、まぁ、まぁね、うん、うん!」

コリンはユーリを抱き上げると、誤魔化すようにガシガシとユーリの頭をなでる。ユーリは笑いながらそれを受け入れていた。

ハルカたちは二人の関係をあまり揶揄することはないけれど、いつか二人が一緒になって家庭を持つんだろうなとは思っている。もともと年頃の女の子だったユーリは、案外コリンが恋愛話をするのに一番適した相手なのかもしれない。

庭にでると、アルベルトがナギの前に立って腰に手を当てていた。

ナギはべったりと地面に伏せて足を踏ん張っている。

「ナギは怖いから行かねーって」

そういえばヴァッツェゲラルドのところへ行った時も随分と怖がっていたような記憶がある。無理して連れていく必要もないが、そうなると昨日同様留守番も必要だろう。

「ま、それなら僕が……」

「あたしが残る」

大あくびをしながら後ろからついてきていたレジーナが、イーストンの言葉を遮った。

「どうせ行っても殴れねぇし、ここで訓練してる」

「僕が残ってもいいよ?」

「残りてぇなら残って訓練の相手しろ」

「たまには僕も出かけようかな」

訓練相手をしろと言われてあっさり出かけることを決めたイーストンに、レジーナは不機嫌そうに鼻を鳴らした。しかしそれ以上何かを言うわけでもなく、武器を抜くとナギの近くで素振りを始める。

イーストンに気を使おうとまで思ったわけではないかもしれない。

もしかしたら本当に自分が訓練したかっただけかもしれないけれど、ハルカは、レジーナが自主的に仲間としての役割をこなそうとしているように見えてうれしかった。

「……レジーナ、なにか美味しいもの買ってきますね」

「肉」

「はい、肉ですね、わかりました」

コリンはレジーナを一人残していって大丈夫だろうかと、一抹の不安を覚えていたが、ハルカの穏やかな笑顔を見て口に出さなかった。

旅をしているときの感覚のまま、日が昇って間もなく出かけたおかげで、街はまだ開店の準備をしている店の人ばかりがうろついている。朝一番で食事ができるようなところも、今はまだ仕込みをしているようだ。

カバンから取り出してた干し肉をかじりながらアルベルトが先頭を歩きだしたが、二股に分かれた道で反対側を選んだことでお役御免となった。街の中ではハルカを先頭にするのが無難である。

難点があるとすればふらふらと屋台に引き寄せられるところだが、幸い今日はまだ屋台も開いていない。

まっすぐ南門へ到着したはいいものの、時間が早すぎるのか門もまだ開いてないようだった。

「早く着きすぎましたね」

「いつ開くんだろうな」

そう言いながら門の上を見ているアルベルトには、今にも壁を乗り越えて外へ出ていきそうな危うさがある。ハルカたちも昨晩は勝手に空から通り抜けているから注意もしづらいが、朝から問題を起こして迷惑をかけたくはない。

門番に開く時間を確認してみようと思いハルカが歩み寄ると、門番もあれっという顔をして歩いてくる。

「またお出かけですか?」

「あ、お仕事お疲れ様です。覚えていてくださったんですね。仲間たちも岳竜様を見に行きたいというので……」

昨晩街に入ったときにソルカスと軽く言葉を交わしていた門番だ。

門番は苦笑しながら答える。

「あんな夜中にギルド長と来る人の顔なんか忘れないですよ。それにしてもずいぶんと早い。まだ正門は開けられませんから、横の扉から抜けてください」

「もうしばらくすれば開きますよね?」

「いやー、俺の交代の時間に開けることになってるから、まだ二時間はかかりますよ? ソルカス様のご友人なんですよね。開門の時間はバタバタしちゃいますし、先に通って構いませんよ」

「ありがとうございます、お言葉に甘えます」

「入れるのはともかく外に出るくらいなら。あ、戻る時は門が開いてるときにしてくださいよ」

そう言いながら門番は鍵を開け、人がぎりぎりすれ違えるくらいの通路からハルカたちを外へ出してくれた。

ハルカたちが出かけてから二時間ほどたって、リヴが外へ出かけていった。汗をたらし、顔をしかめて素振りをしているレジーナを見て交わされたのは「出かけてくる」「ああ……」とそっけないやり取りだけだ。

二人とも言葉が少ないタイプなだけで、特段嫌いあっているわけではない。むしろあれこれ言ってこない分レジーナにとってリヴは、比較的付き合いやすい部類の相手である。

それからまた一時間。

疲労で素振りの型が乱れ修正が利かなくなったところでレジーナはぴたりと訓練をやめた。以前はそれでもがむしゃらに素振りしていた時期もあったが、クダンからアドバイスを受けてから基礎を大事に訓練していた。

劇的に強くなったとも思っていないが、それ以来戦い方が安定して、先の予測を立てながら戦えるようになっている。

確かに効果が出ていることをやめる必要はないと、言いつけを守っているというわけだ。

ナギの横に寝転がって休んでいると、敷地の外から声がする。

「おーい!! 誰かいねぇのかよ!! くそ、広すぎて中に聞こえてねぇんじゃねぇのか?」

武器を持った集団は幾度か声を張り上げているようだったが、レジーナはそのすべてを無視して寝転がっていた。

するとやがて集団は門をガチャガチャと動かし、あっさりとそれを開けて中へ入ってきた。

レジーナはむくりと体を起こし、武器を肩に担いで歩き出す。

ナギもまたすっくと体を起こし、入ってきた集団の方へ鼻先を向けた。

「勝手に入ってんじゃねぇよ」

「あ? いるんなら返事ぐらいしやがれ」

「うるせぇ帰れ」

女一人、しかし後ろには竜一匹。

額に血管を浮かべながらも戦力換算をしたのか、集団はすぐに手を出してこない。

「んだぁ? ここに治癒魔法の使い手がいると聞いて勧誘にきてやったんだ。そいつを出しやがれ」

仲間たちを押しのけながらのしのしと現れた大男は、レジーナと同じように肩に巨大な戦斧を担いでいた。

レジーナは久々に鋭い犬歯を見せながら攻撃的に笑う。

「あたしに命令するんじゃねぇよ、雑魚が」

「……竜がいるからって調子に乗るんじゃねぇぞ、小娘が」

「竜が怖くてちびりそうだって素直に言えよ。安心しろよ、喧嘩するならあたしだけが相手してやるから」

「言ったな……吐いた唾飲むんじゃねぇぞ」

「早くかかってこいよ、怖くて動けねぇなら尻たたいて敷地から放り出してやるよ」

猛然と襲ってきた集団に、レジーナは笑う。

久しぶりの喧嘩に笑う。

勝手に入ってきて向こうから襲ってきた。これならハルカたちに文句を言われたりもしないはずだ。

レジーナは仲間を得て、ほんの少しだけ、子供のような悪知恵が回るようになっていた。