軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

どこにもでもいるんだよねー

「この街の人は岳竜様のことをかなり大切にしているようです。……なので、それを殴ったことのあるレジーナの顔を覚えている人もいるでしょう。あまり人がたくさんいるところに連れて行かないほうがいいかもしれません」

「うーん……、結構特徴的だもんね。でもなー、出かけられないのもなんかかわいそうだよねー」

思ったよりも肯定的な反応が返ってきたことにハルカは驚く。

もともとは各所で印象が悪くなることを恐れて、レジーナの加入を拒否していたくらいだ。まさにその状態だというのに、コリンはレジーナに同情するようなことまで言い出したのだ。

コリンを挟んでモンタナと目が合った。

どうやらモンタナもコリンのことを見上げていたようだ。

「な、なに、二人してじっと見て」

「いえ、コリンもレジーナと仲良くなったんだなぁと思いまして」

「……あー、まね。仲間に入る時はさ、ちゃんと話聞いてくれるかもわかんなかったじゃん」

当時のレジーナは目が合った端から喧嘩を売るような性格をしていたから、コリンがそう思うのも無理はなかった。今だって穏やかな性格をしているわけではないが、手が早いだけで積極的に相手を煽るようなことはしなくなった。

仲間には訓練以外では手を上げないし、普段からナギを含めた子供たちを気遣うようなしぐさすら見られる。

「今はさ、頼めば手伝ってくれるしー、聞けば答えてくれるじゃん」

「……そうなんですよね」

「怖い顔するし、乱暴な言葉遣いするけど、ちゃんと言うこと聞いてくれるとさー、かわいくなっちゃってさー。仲間外れにすると寂しそうに見えるし、ちゃんとつれてってあげたいなーって」

ハルカとコリンが穏やかな表情で頷き合っていると、横からモンタナのちゃちゃが入る。

「でも岳竜様のところに連れてったら、多分また叩くですよ?」

「……ハルカ、止めてね」

「……できるだけ横にいるようにします。コリンはアルを見ててくださいね」

「あー、そうだね、アルもやりそう……」

モンタナは隣で笑いをこらえてよそを向いている。

自分の係ではないから気楽なものだ。

「で、必要な買い物は終わったけどハルカは何か見たいものある?」

「この辺はあまり食べ物屋さんがありませんし……うーん」

オランズに似た雰囲気の街だから、少し肩の力が抜けているハルカは、返事もまた気の抜けたものだった。加工品が多く売られているこの場所からは、染料や加工に必要な薬剤などの強力なにおいが漂っていて、食べ物の香りは流れてこない。

そうなると何を見るかと尋ねられてもあまり気が乗らないのだ。

今度はコリンとモンタナが一緒に笑っていたが、街を見まわしているハルカは気づかない。

「冒険者ギルド本部、行ってみるです?」

「……そうですね。冒険者発祥地、見てみましょうか」

「よーし、じゃあ……多分あっち! だよね?」

一瞬ハルカの頭にはアルベルトが文句を言う姿がよぎったが、コリンの不安そうな確認を聞いて笑ってしまう。

指さした方向は先ほど店主に教わったものと一致している。

「ええ、おそらくそちらでしょう」

たまに振り返りながら方向の確認をするコリンの背中を追って、ハルカたちは南方冒険者ギルド本部へ向かうのであった。

いくら岳竜の背に木がたくさん生えているからといって、地域柄豊富な木材があるわけはない。おそらく街で一番大きなその建物は、石で作られており、まるで城のようにも見えた。

立派な建物だが、改築を重ねているようで歴史を感じるような作りではない。

扉がないので覗き込んでみると、人が行き来してきちんと仕事をしているのがわかる。

受付だけがぽつんと座っていた北方冒険者ギルドとは大違いだ。

三人そろってその光景を思い出していると、コリンがぽつりと呟く。

「ギルド本部ってちゃんと仕事があるんだね」

「……まぁ、南方は国がたくさんありますし、北方より忙しい、ということにしておきましょう」

フォローを入れながらハルカは考える。

果たしてシルキーさんが優秀なのか、仕事をしていないだけなのか、それとも本当に北方冒険者ギルドが暇なのか。

ここでギルド長であるテトの名前が浮かんでこないあたり、当然何もしていないだろうという信用がある。

「で、隣にあるのが岳竜街の冒険者ギルドかな。本部にその辺の冒険者入れると国際問題になるもんねー」

「そうですね。……偉い人とかに、平気で絡んでいきそうですもんね」

後半小声になったのは、いかにも好戦的な顔をした冒険者らしき男三人組が近寄ってきていることに気が付いたからだ。どこにでもいる、よそ者に絡んでいく冒険者だろう。

オランズだと長いことトットたちなどが担っていたお仕事である。

「おーい、お前らよそ者か? あそこはギルド本部、冒険者ギルドはこっちだぜ」

親指で後ろを差しながら声をかけてくる。

「あ、ありがとうございます。中を覗いてみることにしますね」

意外と親切じゃないか。

そんなことを思ってハルカが頭を下げると、男たちはゲラゲラと笑う。

「よし、じゃあ俺たちが案内してやるぜ。そこまでの護衛料金はきっちりもらうけどな!」

「ここまでも護衛してもらってきたんだろ? さぞかし金持ちなんだろうなぁ!」

細身の杖しか持たない女性に、弓を背負った少女。それに短い剣を腰に差した小さな獣人。

よく観察すればハルカたちの装備が使い込まれており、ただ金に任せて用意したものではないとわかりそうなものだが、こういう悪いことをしている連中はそこまで見ていない。

階級でいえば五級前後で、冒険者を名乗りながらも街でならず者をしていることの方が多いようなタイプだ。

「ふーん、じゃ、よろしく」

「よーし、それじゃあ冒険者ギルドまでの護衛料……」

そんな男たちに手を差し出したのはコリンだった。

にやけ面で手を伸ばした男の天地がひっくり返るまで、あとほんの少し。