軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

あっという間

村でもひときわ大きな建物の近くを通りかかったとき、モンタナがハルカの袖を引いた。そのしぐさに合わせて、仲間たちも耳を傾ける。

「いくつかの家に分けて、人がたくさん押し込められてます」

「集まっている、じゃなくて?」

「それにしては密集しすぎてると思うです」

「……先ほど立ち寄った家の人に、会話する余地なく帰ってくれと懇願されました。人質を取られているんでしょうか」

「そうかもしれないです」

「あと、ついてくる人が増えてきたです。隠れて見張ってるですね」

「仕掛けてくると思いますか?」

「何もしなきゃ来ないかもです」

何もしなければ争いは起こらない。ただし、この村の住人はひどい目に遭うかもしれないし、帝国になんらかの問題が起こる可能性がある。

助ける義理はない。どうするかはもうハルカたちの気持ち次第だ。

「……ユーリを見つけた村で、人がたくさん亡くなっているのを見たとき、私はとてもいやな気持ちになりました。見ないふりをして先に進んで、後でこの村が無くなっていたら、私は後悔しそうです。……もう少し探りを入れたいのですが、いいでしょうか?」

「全員のしてから考えればいいだろ」

争いになることは何も問題ないという、レジーナからの心強いお言葉だった。

「いや、探り入れようぜ。手加減しなきゃいけないのめんどくせぇし」

「最初から手加減しなきゃいいだろ」

「ただの村人だったらさすがにまずいだろ」

「どうせ違う」

「わっかんねぇだろ」

相手から手を出させようというのはアルベルトだったが、そもそもレジーナは最初から手加減をする気はないらしい。彼女の中で前を歩いている集団は、すでに敵認定されているようだ。

「助けたらお礼に何かもらえるかな」

「後で気になると嫌なので、それでいいと思うです」

仲間たちの同意を得られてハルカはホッとする。あいまいな反応が一つでもあれば、意見は撤回するつもりだった。自分のわがままで仲間を危険にさらすことになるかもしれないという迷いもあったのだ。

それを見抜かれて意見を合わせてくれたのかもしれないとも思ったが、ハルカは仲間たちの返事に甘えることにした。

「……ありがとうございます。すみませんが、ちょっとよろしいですか?」

背中を向けて歩いていた男たちは、ハルカが声を張ると一斉に振り返る。そしてやはり最初に話していた男が口を開いた。

「なんだ?」

「後ろからついてくる人がいるのはなぜでしょう?」

「……さぁな。外からくる奴が珍しいからこっそり見てるんじゃないのか?」

「人の多そうな村なのに、子供の姿も見えないのはなぜでしょう? 普通なら好奇心で出てきそうなものですが」

「親の育て方がいいんだろ」

「……あなたたちは、この村の住人ですか?」

「当たり前だろ。何が言いたい」

最後の質問には当然のようにモンタナが首を横に振った。よそ者確定だ。

「……噓が多いですね」

男がさっと手を上げると、後ろからもぞろぞろと人が歩み出てきた。

全員が図ったようにばらばらの装備を身に着けていて、それがかえって胡散臭い。あえてどこの所属なのかを図らせまいとする意図をそこに見ることができた。

新手たちにすぐさま飛び込んでいったのはアルベルトとレジーナだ。あっという間に接敵した二人は、連携する隙を与えず、次々と敵をなぎ倒していく。

展開の早さに驚いた問答をしていた男の頭を水が包み込む。

相手の無力化をするまでにかかった時間は、ほんの数十秒だった。被害がひどいのは、後から出てきたものたちだ。体の一部が折れ曲がっていたり、切り飛ばされたりしている。

二人とまともにやりあえるほどの強者は存在していなかったということだろう。

コリンがさっと荷物から縄を取り出すと、すでに動かなくなった正面の男たちを縛りにかかる。

「仲間はまだいると思いますか?」

「見張りがいると思うです」

「近くの人がたくさん収容されている家を確認しに行きましょう。コリン、アル、レジーナ、この場の見張りをお願いします。モンタナは一緒に来てくれますか?」

「まずあそこからです」

それぞれの了承を確認して、モンタナが指さした家へ向かう。決着が早かったので大きな騒ぎにもなっていない。まだ争いが起こったことすらばれていない可能性もあるだろう。

「ちょっと待つですよ」

先導していたモンタナが、とんと屋根の上へ飛びあがる。音もなくその上を移動していく様は、まるで猫のようだ。密集した民家の上を駆けて、目的の家までたどり着くと、躊躇なくそこから飛び降りて、見張りの後頭部に剣の柄を振り下ろした。

手際よく手足を縛り、手招きをしたところで、ハルカが屋根を眺めながらそろりと現れる。いくら身体能力が高かろうと、体が丈夫だろうと、あんな曲芸じみた真似はなかなか難しそうだと感心しきりだった。

モンタナは見張りを引きずってドアの前からどけると、唇の前に一本指を立てて、扉を押し開けて隠れる。左右に分かれてそのまま待っていると、やがて足音が聞こえてくる。

扉が勝手に空いたことを不審に思った見張りが様子を見に来たのであったが、顔を出した瞬間にモンタナに顎をかちあげられ、そのままのけぞって倒れる。それを踏み台にして駆けだしたモンタナは、そのまま狭い廊下をかけて、正面にいた小剣を構えた男へ向かう。

モンタナに気を取られている男の頭を、ハルカが水で包み込む。それを確認してぴたりと止まったモンタナは、振り返ってうなずいた。

「いい不意打ちです。中は狭くてやりにくいですから」

「ありがとうございます。これで全員ですかね?」

「たぶんそうです」

ハルカは出られないように固定された扉を見る。

これで何者かが中に閉じ込められていることは間違いなくなった。

扉をノックして尋ねる。

「すみません、この村の方でしょうか? 見張りを倒したので、これから扉を開けます。慌てずそのままお待ちください」