軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

所属

ハルカは玄関をノックして声をかける。

「すみません、カロキアより村の状況を確認する依頼を受けてきた冒険者です。誰も外にいらっしゃらないので状況をお伺いしたいのですが」

ノックをしてしばらく待つが、返答はない。

これで出てくるようならば、最初から顔を出していそうなものである。あまり時間をかけるわけにはいかないが、ハルカはもう一度だけ声をかける。

「何か事情があることはお察しします。お力になれるかもしれませんので、お返事いただけませんでしょうか?」

変わらない無音。

気づけばレジーナが横に立っていて、ほら見ろと言いたげな顔をしている。

「いらっしゃるのはわかっています。お返事いただけませんと、無理にでも中を確認させていただくことになります。結果扉を壊してしまうかもしれないのですけれど……」

「どうせでてこねぇよ」

「みたいですね」

ハルカがあきらめて玄関に手をかけて、力を込めて引っ張ると、閂のようになっていた木の棒がミシッと音を立てた。

そのまま扉を開けて中をのぞきこんでも、住人の姿は見えない。

「中を確認します」

「あたしもいく」

「僕たちは外で警戒してるです。人は入って右の部屋にいるですよ」

素早く役割分担をして、ハルカとレジーナが中へ踏み込む。家具をざっと見る限り、一人暮らしではなさそうだ。

モンタナの助言に従って部屋を進むと、寝室の端に、小さくなってシーツを頭からかぶっている人物を見つけることができた。

「すみません、村の事情をお伺いしたいのですが」

シーツの中身は大きさからしておそらく大人だ。すぐ後ろまでハルカたちが来ているというのに、確認しようとも、返事をしようともしない。

レジーナがつかつかと歩み寄って、シーツをつかみ、それを無理やりに奪い取る。しっかりとシーツを握っていたらしく、姿を現した男はその拍子に一緒に床にひっくり返ってしまった。

「あの、すみませんがお話を……」

「お願いだ、お願いだから帰ってくれ……」

声を殺して男が答えると、レジーナがイラついたようにつま先で床をたたく。

「てめぇ、なんでいるのに返事しなかった」

イラついてはいるが、レジーナにしては理性的な問いかけだった。ぶっ殺すぞと一言目に言わなかっただけで成長である。

しかしそんなレジーナの比較的優しい問いかけにも男は答えない。それどころか体を起こすとまた小さく丸まって背中を向けてしまった。

レジーナの眉間のしわが深くなり、空いたほうのこぶしがぎゅっと握られた。

「おい、なんか来たぞ!」

外からアルベルトの声がして、ハルカたちはすぐさま男を置いて外へ向かう。

アルベルトたちの横に並ぶと、複数の武器を持った男たちが家に近づいてきているのが見えた。装備は統一されていないが、比較的ちゃんと整備されたものを身に着けているように見える。

「おい、あんたら冒険者か? さっき竜がいたんだが、その関係者か?」

矢継ぎ早に飛んできた質問に、ハルカが応対する。

「はい、私たちは冒険者で、竜も私たちが連れてきました。危険はありません」

「何しに来たんだ」

「……旅の途中ですが」

「そうか、だったらさっさと通過してくれ」

「人の姿が全然見えないのですが、何かありましたか?」

「あんたらが竜なんて連れてくるから、みんな怖がって隠れちまったんだよ」

「それは失礼しました。……ところで、数日前に隣の村から若者がこちらに向かったはずなのですが、顔を見たりしていませんか?」

「……さぁな。ここは結構でかい村だから、出入りしてるやつ全員把握なんかしてねぇよ」

こそっとモンタナから二度「嘘です」と報告があった。

『竜を連れてくるから怖がって隠れた』と『出入りしてるやつ全員把握してない』が嘘だ。

つまり、男は若者のことを知っていて隠そうとしている。村人たちが出てこないのも、ハルカたちのせいではない。

「ところであなたは、この村の住人なんですよね?」

「……それ以外に何があるんだ」

「嘘です」とモンタナの小さな声がまた聞こえる。

「あまり竜を怖がっていらっしゃらないようだったので、雇われた冒険者かと思いました」

取り繕うようにハルカは続けたが、もはや疑いを持っていることは相手方にも伝わっているはずだ。

警戒して返事がないのがその証拠だ。

ハルカは会話を区切るために、続けざまに発言する。

「……では私たちはこのまま村を通り抜けます」

「案内してやる。ついてこい」

歩き出した男の後に続きながら、ハルカたちはこそこそと会話を続ける。

「あの人たち、村人じゃないならなんだろー?」

「野盗にしては装備がいいです」

「でもそれ以外ねぇじゃん」

「どっかの兵士崩れだろ」

アルベルトの推測を否定したのはレジーナだった。

「なんでそう思うんですか?」

「しゃべってるやつの邪魔しねぇから」

「統率が取れてるってことですかね」

言われてみると先ほど会話している間、会話をしている男以外は一切口を開かなかった。野盗にしては姿勢正しく待っているのに違和感がある。

「まさかだけどさ、帝国の兵士とかじゃないよね?」

嫌な推測を述べたコリンだったが、実はハルカも一瞬その考えが脳裏によぎっていた。

もし、自分たちを帝国の兵士が待ち構えて何かしようとしていたのなら、そんな考えだ。しかしハルカは首を振ってその考えを否定する。

「そうだとしたら、もっとうまくやると思います。せめて不意打ちくらいは狙ってくるでしょうし、あえて村で待つ意味も分かりません。……せめて、リヴさんに匹敵する戦力は配備してくるはずです」

そう言いながらも、ハルカは自分の胸の内に宿った疑問を否定しきれずにいた。今は、そうでないといいのだけれどと願うばかりである。