軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

6 光晶樹

それから三日が経った。

私は、タリスマン用とアミュレット用の術式を掘り込んだ、お守り用金属パーツを三百個ほど作った。

術式は、二つの術式を組み込んだものになっている。

専用の機材があるので、これくらいは三日でも作れる。

寝る時間も削れるけど。

ちなみに、パーツの大きさは人差し指の先くらい。

いやー、疲れたわ。

「お嬢様、目の下にクマが……」

「大丈夫よ、まだ元気だから」

「それ、寝不足で気分が高揚しているだけですよ」

一応遠出するので、侍女のララも連れていく。

護衛はエリアが手配してくれると言っていたので、こちらからは連れて行かない。

「お待たせ。……って、クマがすごいな!? 大丈夫か?」

「頑張ったからね。じゃあ行きましょう」

「あ、ああ……」

エリアの馬車に乗り込み、出発。

今日のエリアは、いつもの魔法使いらしいローブ姿だった。

「それで、こういうのって作れそうかしら?」

私は早速、描いてきたイメージイラストをエリアに見せる。

内容は、まん丸や雫型などの、シンプルな形のビーズパーツ。

サイズは一番大きなもので、親指幅くらい。それより小さいのを二種類くらい。

その中に粉末状の魔力石と、私の作った金属パーツを入れて、樹脂を固めるのだ。

「多分、できるとは思うけど、結構大きくなりそうだな」

「それなら、そういうデザインってことで、ペンダントにすればいいわ」

「それより、術式彫った金属パーツに穴を開けて、チェーンに通せばいいのでは?」

「それもいいわね!」

そんなこんなで、私たちは転移ゲートをくぐり、ヴァルヌス領へと向かった。

そして、領内で一番の光晶樹の樹脂の加工ができる 工場(こうば) へ向かった。

「ようこそ、おいでくださいました」

工場長が出迎えてくれる。

「では早速、作って欲しいものがあるのですが!」

「マリアーナ、早い早い。クッキーでも食って落ち着け」

エリアに、お茶菓子のクッキーを口に放り込まれる。

素朴な味わい。美味。

紅茶に合う。

「はあ」

「落ち着いたか?」

「はい」

「では工場長、話を聞いてほしい」

エリアによって、正確で的確な説明がされる。

さっすが、エリアね!

「なるほど。確かにこの地には光晶樹が多数自生しておりますので、その樹脂を用いた加工品は得意ではありますが……。

なるほど、魔力石を加工する際にできる破片を用いて、アミュレットを……。素晴らしいと思います」

「それで、今回は若い女性をターゲットにしておりまして、このようなデザインなども作れますか?」

「ええ、もちろん。丸い型もありますし、穴を開ける技術もございます」

「で、この術式を彫った金属パーツを中に封入したり、パーツとして使ったり……。色も付けて──」

「ほうほう、なるほど。いいですね」

そんなわけで私たちの企画会議は進み、最終的には合意。

私とエリアとの合同で、アミュレットの量産体制計画が整った。

そして後日、試作品を送ってもらうことになったのだった。

「やったわ〜」

「うまく行きそうだな。これなら、試用会も間に合いそうだ」

「そうねぇ」

そんなことを話しながら、帰りの馬車に揺られていると、いつの間にか眠ってしまった。

気がつくと、自室のベッドに寝かされていた。

エリアが運んでくれたらしい。

次の日、諸々のお礼の手紙を送った。

五日後、早速試作品が送られてきた。

エリアとともに、私の研究室で出来栄えを確認する。

「へえ、いいんじゃない?」

丸いビーズ状の樹脂のパーツの中に、煌めく魔力石の 粒(ラメ) と、術式を彫った金属パーツが封入されている。

アクセサリー用の紐にそれを通し、大きさの違うビーズで間を埋め、アクセントに同じ色合いでメインより少し小さめのビーズをあしらっている。小さいビーズにも、魔力石の 粒(ラメ) が封入されている。

これはブレスレットだね。

あとは、術式を刻印した金属パーツに穴を開け、樹脂ビーズの間に通したものなど。

ちなみに、金属パーツは直接肌に触れても、金属アレルギーを起こさない処理をしている。

様々な形に形成できるので、樹脂を使った魔力石、いいかもしれない!

「今回はお試しということで、ブレスレットがメインということにした。他の装飾具は見本だけ展示して、予約を取るような形にしようと思う」

「それはいいわね。これで、試用会はなんとかなりそうね」

「いや、それは最終目的じゃないだろ?」

「あ、そうだった。アンネッタ様を助けないとね」

「来週には決定するから、改善点をまとめておくように!」

「了解で〜す」

そんなわけで、改善案をまとめ、何度かやり取りをし、完成品まで漕ぎ着けた。

数も揃えた。

試用会の一週間前のことだった。

「本当に、なんとかなりそうね……」

「ああ。この事業、国王陛下も注目してるからね」

「は!? なんで!?」

「ヴァルヌス領は国王陛下が気に入っている土地なんだ。元は王妃殿下の生家があった土地らしいから。

まあ、王妃殿下の家族は王妃殿下を虐げていたとか、義理の妹がやらかしたとかで、ご実家はお取り潰しになったらしいけど」

「そ、そうだったのね……」

そういえば王妃様って、今は実母様のご実家の養子ということになっていたような?

「というわけで、当日は王太子殿下がくるかも。王妃殿下はその日予定が入っているから、出られないらしいから、代わりに、と」

「え?」

「それじゃあ、当日に向けて、ドレスでも見に行こうか!」

「ええ!?」

聞いてませんけどーー!?

なんか、えらいことになってない!?

「あ、当日のマリアーナの装飾品はすべて、ヴァルヌス領で作ったやつになるから、説明とかよろしくね!」

ナンテコッタイ。

そして、試用会まであと三日となったときに、あの人から手紙が来た。

「……バルド様から手紙がきました」

一人で読むのが怖いので、もちろんエリアを呼び出した。

「バルドから? 今の所、関わりはないよな?」

「ないわよ? そもそも新作お守り制作で忙しくて、手紙貰うまで存在を忘れていたわ。

試用会の招待状はアンネッタ様には出しているから、一緒に来る可能性はあるけ……」

「忘れすぎでは?」

「怖いので、一緒に読んでください」

「まあ、いいけど」

エリアの隣に座って、手紙の封を切る。

良かった、嫌がらせにカミソリの刃とかは仕込まれてなかったわ。

内容は、驚くべきものだった。

「バルド様にも、前回の記憶がある?」

内容は、前回の人生に関する謝罪。

そして、事の経緯を簡潔に。

会って、謝罪をしたいそうだ。

少なくとも、私はバルド様に毒殺されたわけではないらしい。

「……今更、謝られても困るけどね」

「でも、君を殺した相手は分かるかもしれない」

「この時点じゃ、罪には問えないけど?」

「警戒はできるだろ? 勿論、俺も立ち会うよ」

「そう、それなら、大丈夫かしら……?」

試用会の後、私とエリアはバルド様と会うことになった。

うへぇ、胃が重くなる〜。