軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第359話 盗み見

部下らしき男を数人引き連れており、何かを話しているように見えるが……建物を一つ挟んでおり窓も閉まっているため全く聞こえない。

何とか盗み聞きできないかと【聴覚強化】と【音波探知】のスキルを発動させたが、流石に会話を聞きとることはできなかった。

どうにかしてもう少し情報を得られないかと試行錯誤してみたが、この建物からは窓から見える顔を見るぐらいしかできず、大した情報は得ることができない。

ただ強い生命反応を持っていたのが女だったというのは、地味に大きな情報だったと思う。

手に入れた情報の中に、『アンダーアイ』の幹部の中にはブルーデンスって女がいると聞いていた。

図抜けて強い生命反応を持っていることから、向かいの建物にいる女はブルーデンスである可能性が高いと思っている。

【深紅の瞳】のスキルを使った状態でも、顔をハッキリと見ることができないため美人かどうかの判別がつかないのがかなり歯がゆい。

ブルーデンスの情報は唯一の女で超美人らしいから、顔さえ見ることができればまた一つ確信に近づけたんだがな。

もう少し他の情報が得られるまで粘ってもいいのだが、俺が忍び込んだこの建物も決して廃屋という感じではなく、直近で使われているような形跡があるから早めに抜け出したい。

一番強い生命反応を感じた左側奥の建物の盗み見はここで切り上げ、次に強い生命反応を多く感じた右側手前の建物を盗み見ることにした。

奥の建物とは違って道を挟んでいるため、更に遠い位置にあるせいで中の様子が探りにくい。

それでも少しでも情報を得るために建物内部を見てみると、建物の中に見慣れた黒いローブを纏った人間が見えた。

目立たないように動くためのローブなはずだが、既に何度も戦闘を行っているため俺には見慣れたローブ。

間違いなく『アンダーアイ』のものが身に着けている黒ローブだ。

そこから数分間窓際に張り付いて向かいの建物の様子を窺っていると、計三人を窓から確認することができ、全員もれなく黒ローブを身に纏っていた。

細かな情報を得ることはできなかったが、右側手前の建物が『アンダーアイ』の拠点の一つであることは間違いない。

多分、今手に入れられる情報は全て手に入れることができたし、さっさと建物を出て闇市場を離れようか。

こっちから見えているということは、向こうからもこっちの様子が見えるということ。

気を緩めることはせずに、周囲に最大限気を配りながら俺は侵入した建物から抜け出た。

そこからは人混みに紛れ、正面から堂々と闇市場を抜ける。

入るときは検査されるが、出る時は検査されないのは既に分かっていたこと。

何事もない顔をしながら闇市場を抜け出た俺は、ひとまず落ち着くためにメインストリートへと戻ってきた。

闇市場も中々の賑わいだったが、それ以上に人で賑わっているメインストリートを歩きながらここからどうするかを思考する。

西地区で得られなかった分の情報を闇市場で得られたし、もう今日は帰ってもいいぐらいの情報を持ち合わせている。

あの建物から見た光景の精査も行いたいというのもあって帰りたい気持ちがどんどんと強くなるが、時間的にはまだまだ情報集めを行う余裕があるんだよな。

色々なことを思考が頭を巡ったが、ひとまず情報集めは続行。

ただし今日はこれ以上の危険を冒す必要はないと判断したため、このまま人混みに紛れてメインストリートを歩くことにした。

それから人通りが少なくなるまでメインストリートを歩き、露骨に人がいなくなったのを見てから俺はイザベルの家へと帰宅。

予定よりも大幅に情報集めに動いていたつもりだったが、イザベル宅にはラルフとヘスターの姿はなくイザベルしかいなかった。

「随分と遅くまで出歩いてたんですね。……あのー、『アンダーアイ』に付けられていませんよね!?」

「大丈夫だ。誰にも気づかれることなく帰ってきた。それよりも二人は一度も帰ってきてないのか?」

「はい、クリス君が一番最初に戻ってきましたよ。一度も戻ってきていませんし、もしかして捕まってる……とか? 探しに行った方がいいんじゃないですか?」

「……いや、探しに行った方が余計にリスクが高まる。それに音沙汰がないってことは大丈夫だ」

「本当に? 狙われているんですよね? 随分と薄情に見えちゃいますけど……」

確かに、俺達の関係性を何も知らなければ薄情に思えるかもしれないな。

俺は二人を信じているからこそ、こうして余裕を持って待っていられる。

「仮に捕まるようなヘマをしたとしても、二人の内のどちらかは確実に逃げて俺に情報を届けにくるから大丈夫なんだよ。それよりも風呂を借りていいか? 色々と汚い場所を這いずり回って汚れてしまった」

「うーん、そういうものなんですか? ……お風呂なら好きに使ってください。汚れたままの方が困りますし」

イザベルからタオルを借り、汚れを落とすために風呂に入ることに決めた。

二人のことはとりあえず心配しなくていい。

俺は俺ができることを行い、三日後までにできる限りの情報を集めることだけを考える。