軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第九百二十七話 死が覆らないことに涙しよう

『さて、数が多いな。であればこちらも増やそうか』

迫る弓花やオーリ、召喚軍団を見ながら巨人のカルラ王がそう呟くと、周囲に黄金の炎が巻き上がって三体の炎でできた巨人が出現する。

『分身体か。でも目くらましじゃない。狂い鬼たちは右の、ユッコネエとオーリさんは左の、後ろのは弓花たちでお願い』

『にゃあああああ!』

「ウガァアアアアアッ」

風音の指示にユッコネエドラゴンと狂い鬼たちが左右に分かれて駆けていく。途中で「うわっ」と声を上げるオーリをユッコネエが咥えて頭の上に拾い、狂い鬼とベヒモス・ビーストはアーマード化して突撃していく。

「私も行くわ。フォローをお願い!」

「オッケー。タツオ、スタンバーイ」

そして、風音のかけ声によってレームとエミリィが次々と撃ち放ってカルラ王を牽制している横を弓花と 三つ首の銀狼(ホーリーケルベロス) 、それにゴブリンゴッドキングのキングたちが抜けていく。

『本体は私たちが叩くよ。カルラ王、コンビネーションで行くからね』

『分かっている。イライザよ、私を打ち倒せ!』

「クケーーー!」

巨大なひよこが両翼に斧を持って飛びかかり、巨人のカルラ王に飛びかかる。

それをカルラ王は凄まじい速度で黄金翼を操り防御していくが、さらに風音のロクテンくんが大魔王モードに変形して飛びかかる。

『とうっ』

『ぬ。速く重いか……この動きは』

それを見て巨人カルラ王が目を細める。

『リーヴレントのものだな』

『そういう……ことだねッ』

風音が龍神の大剣を、まるで精鋭の戦士のように振るっていく。スキル『リーヴレント化』により、今の風音は十騎士リーヴレントと同等の動きで戦うことが可能だ。その上に、ロクテンくんにはリーヴレントにはない膂力の高さもある。

『なるほどな。アレには叶わなかった力が備わっている。強いな、さすが我が配下の力だ。だが、それだけでは勝てんぞ』

『分かってるっての。カルラ王、退くよ』

『イライザ下がれ!』

その言葉とともに風音とイライザがその場を離れ、ほぼ同時に巨人カルラ王へと弾頭と爆裂矢、ファイア・ヴォーテックスが放たれて大爆発が起きた。

エミリィの爆裂矢とファイア・ヴォーテックス四連の合わせ技も強力だが、レームが撃っているのは今日という日のために用意したアダマンチウム製の特殊弾頭だ。その内部には高火力型手榴弾が埋め込まれており、着弾時に弾頭内部の手榴弾が爆発してダメージを与えるのだ。それが 雷王砲(レールキャノン) から連射されている。

『ふむ、想像以上の威力があるな。ならばっ』

そして、さしものカルラ王もその威力を前には、眉をひそめざるを得ない。そして、翼でそれらを受け止めながらカルラ王は右腕に炎を喚び出して、そのまま巨大な剣へと変えると、それを振るって黄金炎の斬撃を飛ばした。

『護りますッ!』

だが、次の瞬間には移動砲台と化しているアダミノくんの前にはタツオの用意した水晶の盾がすでに生み出されていた。そして炎の刃がそれと接触して、その場で霧散する。

接触による衝撃を受けたタツオがうめき声を上げるが、一撃程度ならば耐えるのに支障はない。そして、それ以上息子に攻撃をさせる気は風音にはなかった。

『させないっ』

『いけ、イライザ』

巨人カルラ王が再度剣を振り上げたと同時に、ロクテンくんとイライザが突撃していく。

『スキル・白金体化!』

そして、ロクテンくんの黄金のボディに 白金(プラチナ) の輝きが宿る。風音の身体能力上昇スキルが発動したのだ。

『ほぅ。パワーを上げたか。む?』

何か違和感に気付いた巨人カルラ王が周囲を見ると、石台の周囲にはいつの間にか無数のモノリスのような壁が造られていた。

それが風音のゴーレムメーカーで生み出したヌリカベくんなのは巨人カルラ王にも分かったが、その意図が理解できない。

『防御に使うつもりか? いや……』

『スキル・弾力。てぇえええい』

風音がロクテンくんの持つ龍神の大剣を石台に突き立てると、そこからそれぞれのヌリカベくんに伸びた細いパスから、発動したスキルが流れていく。

『これはなんだ?』

その状況に困惑するカルラ王の前で、ロクテンくんが駆け出してヌリカベくんにぶつかると、それがグニャッと曲がってその巨体を一気に弾き飛ばすと、そのままロクテンくんは別のヌリカベくんへとぶつかって再度弾かれる。それが幾度となく繰り返されていき、次第にその巨体が加速していく。

『速い!? クッ』

そして、凄まじい速度で移動するロクテンくんが唐突に巨人カルラ王へと飛びかかり、その攻撃を受け止めた翼にビキッとひびが入る。

ここまでのダメージの蓄積に加えて、白き雷を発する龍神の大剣の加速した一撃に翼の耐久力もついに限界に近付いたのだ。

『惜しい。でもいけてる。もっと速く、もっと』

ロクテンくんがさらにヌリカベくんたちを使って加速していく。その間に風音が知恵の実をシャリッと食べる。知力を増大させ、知覚力を上げていく。スキル『イーグルアイ』が、高速の世界でも風音の視界を鮮明にしてくれる。

『こんな手があったとはな。だが、それだけでは……チッ、邪魔が入る!?』

風音の動きに対応しようと動いたカルラ王だが、そこに今度はイライザと後方からのエミリィとレームの攻撃が続いていく。

「翼だ。あれが邪魔しやがる」

特殊弾頭を次々と撃ち放ち、カルラ王の足止めには成功しているレームだが、未だにカルラ王にダメージを与えるには至っていない。そのことに苛立ちを感じ始めていた。だが、横で矢を射るエミリィが冷静な顔でレームに声をかける。

「レーム。カルラ王はお爺さまの槍ですら受け止めるほどの速度で防御をするのよ。アレを抜けるのは不可能。一緒に破壊するつもりでやらないと無理よ」

「チッ、だな」

『む、母上からです。次のタイミングで指定の場所へお願いします』

タツオの元に風音からの指示が飛んできたようである。

風音も今は戦闘に集中しているため『情報連携』にリソースをほとんど割けない。だから今繋がっているのはタツオだけで、それも行うのは簡単な指示だけ。

それでもタツオは未来予測で的確にその内容を理解し、その場にいるふたりへと指示を飛ばしていた。

一方でイライザと打ち合う巨人カルラ王が炎を巻き上げながら、その姿を透かし始めていた。

『クッ、さすがにやるか。ならば』

『消えるか。だがな。甘いぞ私よ』

幼鳥カルラ王が声を張り上げると、十騎士ローランが強力な補助魔術をかけ、その力で黄金色の輝きを放つイライザが突進する。そして、竜巻のように振るわれた斧がすでに黄金の炎となった巨人カルラ王を散らしていく。

『倒せてはいない。だが』

炎による瞬間移動。その癖を幼鳥カルラ王は知っている。そして、それは風音もすでに把握していることだった。

『ガァアアアアッ』

巨人カルラ王が再出現したのは、イライザの背後であった。それを見て幼鳥カルラ王が笑う。

『やはり、イライザの後ろに出たな私よ。まあ、出現座標を得るのはある程度の目標がなければ、定まらんからな。急ぐと背後に出る癖は変わっておらんようだな』

『チィッ』

血塗れの巨人カルラ王が舌打ちする。だが遅い。

イライザの背後に出現した巨人カルラ王を、四メートル近い黄金巨人が上空から落下して剣を振り下ろし、その肩口をバッサリ斬りつけたのだ。さらには後援組の攻撃が直撃し、巨人カルラ王がその場から吹き飛ばされる。

『ま、ようやくひと太刀入れられたよ』

そう言って風音が操るロクテンくんが龍神の大剣を巨人カルラ王に向ける。

翼の高速防御を上回る速度とタイミングによって、ついに巨人カルラ王本体に攻撃が通ったのだ。だが、次の瞬間には巨人カルラ王が飛びかかり、黄金翼の高速攻撃がロクテンくんを吹き飛ばす。

『くっ。タツオ、お願い』

さらに追撃しようとした巨人カルラ王に爆発が起きる。レームとエミリィの攻撃が命中したのだ。

だが巨人カルラ王は止まらない。倶利伽羅剣を振り下ろす。

『止められない。けど、勢いは削がれた。ロクテンくん、受けるよ』

風音の言葉にロクテンくんが翼を広げて剣を振り上げ、巨人カルラ王の倶利伽羅剣と激突した。それに巨人カルラ王がニヤリと笑う。

『よくやる。だが、こちらには翼がある』

『それはこっちにもあるんだよ』

巨人カルラ王と風音が叫び、同時に黄金と触手の翼がぶつかり合った。スキル『ウィングスライサー』によって鋭き刃と化した翼が黄金の翼と激突して火花が散り、巨人カルラ王と竜頭の仮面の穴から覗く風音の視線もぶつかり合う。その風音を見ながら巨人カルラ王が口を開く。

『確か、ゲームとやらでも私とも戦ったことがあったのだったな。手の内を読んでいるのはそのためか』

『それだけじゃないけどね。あれからアンタの戦法はずっと調べてたし、戦闘シミュレーションには幼鳥の方のカルラ王にも協力してもらったよ』

そう風音はここまでずっと考えて戦ってきた。戦いを分析し、己の能力を把握して攻略してきた。それがゲームプレイヤーというものであった。

『だが忘れたか? 私と組み合えば、この身の炎によってお前の身体は……』

カルラ王の近くで戦えば、その身より発せられる黄金の炎によって対峙する者は火だるまになる。それは以前に戦ったときにも確認できていた。

『何ッ!?』

だが巨人カルラ王の前で、あえて風音はロクテンくんの中から生身で這い出てきていた。そして両手を前にかざしたのだ。

「これでお終い。禿げ散らかせカルラ王。スキル・毛根殺し!」

気合いを込めて叫ぶ風音の一撃が、巨人カルラ王の全身を稲妻のように貫き、黄金の炎とともに羽毛が散った。そして、巨人カルラ王はまるでクリスマス用に調理される前の丸裸の七面鳥のような姿へと成り果て、その顔を驚愕に染め上げたのであった。