軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第八百十八話 その爆弾を手に入れよう

そして、今日も今日とて白き一団はダンジョン探索である。

ダンジョンを攻略するにはただ下まで降りれば良いというわけではない。最深層に降りたとしても、ダンジョン内のチャイルドストーン持ちの魔物をすべて討伐せねば、心臓球の間を護る封印門は開かない。冒険者たちはただ降りるだけではなく、ダンジョンを攻略すること自体を求められているのである。

故に、その日も風音たちは第七十五階層のマップ上の通っていない道や部屋を埋め続け、道中でマシンナーズソルジャーたちと遭遇して戦闘に入っていた。

その戦闘のさなかのこと。風音はマシンナーズソルジャーの中に高火力型手榴弾を所持しているタイプがいたのを見つけると、接近しての捕獲を試みたのである。

「スキル・スパイダーウェブ!」

風音が放ったのは、捕縛用の蜘蛛の糸を出すスキルであった。それがマシンナーズソルジャーの身体を覆い、関節部を巻き込んでその動きを即座に止めていく。

「よっし。これで手榴弾を取れば」

だが、その様子を近くで見ていた弓花が、目を見開いて「無理よ」と叫ぶ。手榴弾がすでに起動しているのが見えたのだ。

「風音、下がって」

「もう、速すぎッ!?」

そしてマシンナーズソルジャーを巻き込んで、その場で高火力型手榴弾が爆発する。対して風音は『暴風の加護』に護られながら『空中跳び』で跳び下がった後、通路にすぐさま『スパイダーウェブ』でネットを張った。穴から外に投げ出されぬように安全策としてネットを張ったのだが、それが今回は裏目に出た。爆発に吹き飛ばされていたマシンナーズソルジャーの一体がネットに引っかかったのだ。

「嘘、こっちも?」

風音の顔が驚きに染まる。そのマシンナーズソルジャーが腰に下げていた手榴弾も高火力型手榴弾だったのだ。それが『スパイダーウェブ』にかかった途端に起爆し、風音はその場で『マテリアルシールド』と『暴風の加護』を使ってガードをしたが、衝撃を殺しきれずに吹き飛ばされた。

「マズッたぁ!?」

そのまま風音は全身を壁に打ち付けて血を吐きながら、目の前に開いている穴を睨みつける。某スキルを手に入れて死ににくくはなったとはいえ、さすがに宇宙空間に投げ出されれば風音もただでは済まない。所持しているスキル『致命の救済』も回避できる死は1度だけなのだ。空気のない宇宙空間で復活したところで、再び苦しんで死ぬのがオチだ。では、どうするべきか? 風音が選んだ答えとは、

「こうなれば、ダークオーガ軍団ゴー!」

二十三体のダークオーガ召喚であった。そして穴の真上に召喚されたダークオーガ軍団はそのまま一気に吸い込まれてスポンと穴を塞いだ。彼らは文字通り肉の壁と化したのである。なお、狂い鬼は欠勤だった。やりたいことだけやって、上からの面倒な要望はすべて部下に流す。ある意味では上司の鏡のような鬼であった。

「ウガァア」「ガァアアア」「グガァアアア」

そして、突然呼び出されたダークオーガたちは焦りながらも全員でスクラムを組み、吸い込まれて投げ出されないように頑張っている。腰から下がえらく冷たく感じられたが、彼らは吠えながら耐えていた。その間に風音が仲間たちを下がらせ、全員が穴から離れたところで召喚を解除して、硬化ジェルが穴を塞ぐのを待ち、どうにか対応を完了したのであった。

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第七十五階層 隠し部屋 風音コテージミニ リビング

「うーん。取れないね」

探索を終えて風音コテージミニの中で休んでいる風音がため息をつきながらテーブルに突っ伏した。

本日、マシンナーズソルジャーたちとは七度遭遇し、高火力型手榴弾持ちにも三回遭遇したのだが、いずれも自爆されてしまい高火力型手榴弾の入手はならなかったのだ。

「連中、すぐに自爆しようとしよる。まったく根性のない連中だ」

「まあ、師匠。相手はロボットですしそりゃあ根性はないですよ

ジンライの憤りに弓花がそう答えた。その言葉にジンライが少し難しい顔をしていたが、それは単にロボットというものが何なのか分からなかっただけであった。

「けど、連中を倒すだけなら今のところは問題ないんだよな」

『ですねレーム。マシンナーズブッチャーがいなければですが』

「あー、まあな。あいつ、あの銃弾の雨の中を平気で突っ込んでくるし、正面からやり合えるのは、ジンライさんやカザネ、ユミカぐらいだろ?」

そのレームの言葉には、ライルやジン・バハルも異論はなかった。何せマシンナーズブッチャーは硬い。一対一で時間をかければ倒せなくはないだろうが、マシンナーズブッチャーはマシンナーズソルジャーたちの銃撃の中を突っ切りながら近接戦を仕掛けてくる。銃弾が効かないほどに厚い装甲を持つが故の戦法ではあるが、それを受ける風音たちにとっては堪ったものではない。銃撃を対処しながらブッチャーとやり合うのは非常に骨が折れる戦闘であった。

「まあ、確かに倒すだけならいけると思うんだけど……あの高火力型の手榴弾は手に入れておきたいんだよ。範囲があまり広くない爆発なのに威力は桁違いだし、所持してる敵も結構多いし正直魅力的」

多少の攻撃ではビクともしない宇宙基地の壁を簡単に破壊するほどのものである。その火力は見る限り、爆炎球をも凌いでいると風音には見えていた。ここで大量にゲットできればそれはそれで戦力が増強されるのである。

「けど、今回みたいに近付きすぎて自爆されてもね。あんた、戦闘であれだけダメージを食らうのって結構久しぶりじゃない?」

その弓花の言葉に風音が「うっ」と唸った。『リジェネレイト』のスキルで自動回復しきる程度の怪我ではあったが、直樹が「姉貴ぃぃいい」と叫びながら英霊フーネを呼び出そうとしたのを押さえるのは大変だったのだ。

「宇宙空間に放り出されたら即死亡コースだし、ジュエルカザネにやらせるにしてもそれも宇宙空間に投げ出されたら戻ってはこれないじゃない。あれはちょっと危険過ぎるわよ」

「うん、かもしれない。けど……それでもアレは勿体ないよ」

風音が唸る。だが危険は高く、手に入れる方法も確立していない。

ジンライたちならば接続部を槍で突いて外すことも可能だろうが、それは同時に爆発するかもしれない高火力型手榴弾にもっとも接近するということでもある。なので、無理にそれを頼むことも風音はしたくはなかった。それから少し考えた後、「よし」と風音は頷いで頭を上げた。

「まあ、絶対に必要ってわけでもないしね。ひとまずは手に入れる方法を考えてから再チャレンジしてみるよ」

風音は「じゃ、この話はお終い」と言うと、続けて地図を取った写真をテーブルに置いた。それは第七十五階層全体図を表示させたマップウィンドウを撮った写真であった。

「この二日をかけて、大体の姿は判明したな」

直樹の言葉に風音が頷く。それから写真の上を指でマルッとなぞる。ダンジョンはちょうど円状にできていたのだ。

「どうやらリングみたいになってるようだね。スペースコロニー的なイメージなのかな?」

「だろうな。もしかするとこの下の階層も同じ構造をしているのかもしれない。ま、そのわりには居住区もほとんどないし、通路ばかりでチグハグな構造だけどさ」

その直樹の言葉に、何人かが苦笑する。

ダンジョンは階層によっては要塞内や洞窟のエリアもあるが、異常な広さと、迷路のような通路、それに何に使うか分からない謎の部屋が多く存在していた。少なくとも普通に使うように作られているわけではないのは明らかだった。

「それでこの階層の隠し部屋からは、コマンドゴーグルと宇宙用作業着が見つかったんだよな。宇宙用作業着か。使い道あるのかな姉貴?」

「うーん、密閉型だから水の中でも使えそうかな。酸素も水を分解して出すらしいから水珠で水を増やしながら進めるし」

水珠と風音の魔力量があれば、ほぼ無制限に外で活動もできるようである。外に出る必要があるかはさておき。

『私としてはレアアイテムではありませんが、弾丸が多く手に入ったのは助かりました』

タツオが嬉しそうにくわーっと鳴いた。

レールスナイパーライフルが攻撃の主軸となっている今のタツオにとって、銃弾の備蓄が貯まることは素直に嬉しいことであった。そのタツオの頭をなでながら風音が地図の横でジンライが口を挟む。

「しかし、今のところ、チャイルドストーン持ちとも遭遇しておらんな」

「うん。第七十四階層のはオーリさんたちが倒してるらしいし、ワームもそうだったかもしれないけど、そっちも結果的に倒しちゃったしね。第七十七階層にはかなりの難敵がいるって話だからチャイルドストーン持ちかもしれないけど……まあ、だからって、この階層にいないと決まったわけではないけどさ」

現時点で、この第七十五階層に出てきているのはスペックアップしたマシンナーズソルジャーとマシンナーズブッチャーのみだ。それはオーリたちとも情報共有をしているし、他の敵は発見できていない。

「けど、一旦は第七十六階層に向かおうかな。一度外に出たら第七十七階層の敵を倒す指名依頼があるかもしれないし、道くらいは把握しておきたいんだよね」

「そうだな。一旦はそっちも見てみて、それから地上に戻るのが良かろう」

風音の判断にジンライが頷き、それには他の仲間たちも異論はないようだった。

その翌日から風音たちは二日かけて第七十六階層を探索し、第七十七階層に通じる出口まで進んだところで地上に戻ることにした。手に入れたレアアイテムはレールパーツ、コマンドゴーグル、それに宇宙用作業服で、今回の第七十六階層の探索では新しいエネミーとの遭遇こそあったものの、特に目立った収穫はなかったのだった。

そして、地上へと戻ってきた風音たちは、そこで意外な人物との再会をすることとなる。

その相手とはドワーフの王国よりやってきた伝説的な鍛冶師であり、その名をヤスと名乗ったのであった。