作品タイトル不明
第八百十七話 宇宙基地で戦闘しよう
◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第七十五階層
タツヨシくんツインソード。それは、かつてワルギレオが使用していた二刀流の人形の核を移植し、その動きに耐えられるよう全体的な構造の再改修も施し、さらに風音のスキル『宝石化』によって装甲を強化した、強力な人形である。
そのタツヨシくんツインソードが今、持っている刀をバツの字に構えている。その間には、ツインソードの頭に乗っているタツオが構えているレールスナイパーライフルの銃身が置かれていた。そして構えているタツオは、同階層の隠し部屋で手に入れたコマンドゴーグルも装備している。
それはレールスナイパーライフルの照準装置と同期し、スコープを覗かずともゴーグルに照準が映し出されていた。
『距離問題なし。照準セットできました。撃ちます』
そう言ってタツオが力を込めると銃身が赤く光り始める。風音とは違い、ウィンドウを持たないタツオは持っているスキル『チャージ』を己の意志によって発動させていく。そしてタツオがトリガーを引くと、赤く染まった銃弾が放たれ、正面にいるマシンナーズソルジャーの一体の胸部に当たり、その場で爆発が起きた。
『ヒットしました!』
タツオがグッとガッツポーズを取った。それはバッテリーへの直撃によるものだけではなく、弾丸に付与された風音のスキル『爆裂鉄鋼弾』が発動したためだ。相乗効果の爆発に巻き込まれた十体近いマシンナーズソルジャーたちがその場で吹き飛ばされていく。
『ライル。突っ込むぞ』
「任せなッ!」
そこに鎧ドクロ魔人化した直樹と、竜気を込めて竜装化したライルが突撃していく。
『もう起きあがってるヤツがいる。撃ってくるぞ』
「任せなッ。ハァ!」
すぐさま態勢を立て直したマシンナーズソルジャーから放たれた銃弾を、ライルは手をかざし、正面に波紋のようなものを生みだして銃弾を弾いた。それはかつてライルが竜化した際に、ジーヴェの鎧へと融合されていた反響の盾章の能力だ。飛んでくると分かっている銃弾ならば、ライルにも弾くことが可能であった。
そうして突撃する直樹とライルと援護を行う仲間たちがマシンナーズソルジャーの集団へと攻撃を仕掛けている一方で、通路の反対側では風音たちが別の敵との戦闘に入っていた。敵を呼び寄せるアラームのトラップの発動により、白き一団は挟撃を喰らっていたのだ。当然ながら、風音たちが受け持っているのは直樹たちよりも強力な敵であった。その相手とはマシンナーズブッチャーを中心とした機械兵の集団であった。
「ウォンッ」
「にゃー」
そのマシンナーズブッチャーに刀を咥えた麒麟化クロマルと、スキルを発動させて『黒曜角』を生やしたユッコネエが突き進む。角付きユッコネエはスキル『壁歩き』を使い天井を駆けて、回転していたマシンナーズブッチャーの頭部へとその黒い角を突き刺した。マシンナーズブッチャーが暴れるがユッコネエも炎の爪を頭に突き刺して離れない。そのままユッコネエは黄金の高熱ガスブレスを吐いて、マシンナーズブッチャーの頭部を溶解させていく。
「ウォォォオンッ」
さらにユッコネエの攻撃によって動きの止まったマシンナーズブッチャーに対して麒麟化クロマルが咥えた龍神刀『雷火』で腰部を斬り裂いて、その動きを完全に停止させた。
「よっし、やったね」
それを後方で見ていた風音が頷き、先に巨大な 金剛石(マナダイヤ) が付いていない杖を振るう。その 金剛石(マナダイヤ) がどこに行ったかといえば、ユッコネエたちとマシンナーズブッチャーのいる位置と、そこから離れて攻撃しているマシンナーズソルジャーたちとの間に銃弾から護る盾として張られていた。
「そんじゃジュエルカザネ、ガード解除。ユッコネエたちはそのまま下がって」
ユッコネエと麒麟化クロマルが崩れ落ちたマシンナーズブッチャーから離れると同時に、ジュエルカザネの盾が元の小さな透明風音人形の形へと変わって、風音の元へと戻っていく。そして、風音の虹杖へと戻ったジュエルカザネはそのまま盾の形へと変化する。
「そんじゃあ、突撃するよ。スキル・チャージ!」
「あいよ」
「待ちわびたぞ」
風音が透明な 金剛石(マナダイヤ) の盾をチャージで強化して突撃し、その後ろを弓花とシップーに乗ったジンライが続いていく。
「おうりゃっと。まとまり過ぎなんだよね」
風音が盾をぶつけてマシンナーズソルジャーたちを打ち払い、まとめて倒れたところに「スキル・ハウリングボイス」と声を上げて、衝撃波を浴びせた。その攻撃によりマシンナーズソルジャーたちの動きは鈍り、ライフルを撃とうとしたがトリガーを引いた途端に暴発した。それは衝撃波により内部構造が脆くなった故のことであった。
「行くぞユミカ」
「はい師匠」
そこに弓花とジンライが襲いかかる。そこから先はもはや勝負にもならないほどに一方的な攻撃であったが、その途中で弓花が何かに気付いて叫んだ。
「風音。危ない!」
そして私もトドメを……と思って一歩前に出た風音も『直感』が働き『ハイパーバックダッシュ』で後ろに下がる。
「くっ、間に合え」
風音が慌てて 金剛石(マナダイヤ) の盾を薄くして通路いっぱいに張ると、同時に倒れていたマシンナーズソルジャーの一体が持つ何かが爆発した。それは壁の穴を開けて、外の空間を露出させる。
「うわぁ、吸い込まれていくよ」
ガラス窓のように薄く張られた 金剛石(マナダイヤ) の壁の先では爆発によって空いた穴へと空気と共にマシンナーズソルジャーたちが吸われて外に投げ出されていった。その空いた穴は、数秒後に壁の内側から噴き出た硬化ジェルによって固められて塞がれていく。
「相変わらず怖いね。アレ」
その様子を風音が少しばかり冷や汗をかきながら、確認しつつ、 金剛石(マナダイヤ) を杖の先に球体状に戻していった。それから風音は敵の姿が残っていないことを確認した後、通路の反対側にいる直樹たちの方へと視線を向けた。どうやら直樹たちの方も無事戦いを終えているようである。
そして、風音たちの元にタツヨシくんツインソードに乗ったタツオがトコトコと近付いてくる。
『母上ー。勝ちましたー』
「お疲れタツオ。特に問題なく勝てたみたいだね。爆裂鉄鋼弾はどうだった?」
『はい。かなりの威力でした』
タツオがくわーっと鳴いて両手を上げた。喜んでいるようである。
「爆発で壁が壊れないのも確認できたし、今後はあのスキルを多用していってもいいかもね。ま、付与は一発だけしかできないから、使いどきが難しいけど」
『一発で十分です。後は自分自身の腕でカバーします』
タツオがグッと力こぶを見せながらくわーっと鳴いた。
ちなみに東の竜の里での診断によれば、幼竜であるために分かり辛いのだが、タツオの身体はドラゴンの中では筋肉質なタイプらしいとのことである。それは、おそらく風音の子供への希望が託された結果であろうと思われた。
その風音とタツオにゴレムスキャノンに乗りながらのレームが近付いてくる。 雷王砲(レールキャノン) の使用は禁じられているために、今はレーザーバルカン砲での攻撃がメインとなっていて、その見た目もやたらゴツいようだった。
「よお。なんか大きい爆発があったみたいだけど、やっぱりアレか?」
「うん。高火力型手榴弾を持っているのがいたんだよ。アレ手に入れられればいいんだけど、どうも持ってるヤツは自分がやられると自爆用に使っちゃうみたいなんだよね」
風音がやれやれという顔をして苦笑する。この階層に下りてからの戦闘はすでに三度行われているが、いずれも先ほどのように爆発によって壁に穴が空いていた。それは風音が戦闘中に確認した限りではマシンナーズソルジャーの持っていた高火力型手榴弾によるものと思われた。
この階層のマシンナーズソルジャーは若干のスペックアップと、その装備も追加されているらしく、強力な威力を持つ手榴弾を所持していた。その爆発を近くで喰らえばダメージを受けるだけではなく、壁に穴が開いて宇宙空間と思われる場所に空気と共に流されてしまうのだ。それは敵の攻撃以上に厄介な現象であった。
「まあ、離れてりゃあ勝手に塞がってくれるし、気を付けるしかないんだけどな。後レーザーバルカン砲は、どうもこの施設内の壁にはダメージを与えねえみたいだな」
「うん。壁に銃口を向けると液晶パネルになんか表示されてたけど、英語だから読めないんだよねえ。まあ、何かしらの処理はされてるみたいなんだけど」
「英語? まあ、よくは分からないけど使えりゃいいか」
そう言って笑うレームであったが、背後からジロっと睨むような視線を感じて、それから風音に小声で尋ねた。
「つか、最近私、ジンライさんに睨まれること多いんだけどさ。えーと。なんか、したっけ?」
「いや……してはいないと思うけど」
風音が苦笑しながらそう答える。ゴレムスキャノンが羨ましいんだろうなあ……と風音は察していたが、ゴーレム魔術の使えないジンライでは、そもそも操作ができないのだ。それに、仮にゴーレム魔術をジンライが覚えても、達人の域にあるジンライの力をそのまま乗せるのは難しく、結果として戦力としては低下しそうだと風音は考えていた。
(まあ、ジンライさん用になんか、考えてみようかなあ)
ともあれ戦闘も終了し、風音たちは第七十五階層の探索を再開する。狭い通路での戦闘や、未知のトラップ、それに宇宙空間に投げ出される心配はあるものの、階層攻略は進んでいるようであった。