作品タイトル不明
第八百十六話 宇宙基地を探索しよう
◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第七十五階層
「道が結構狭いなあ」
風音がそうぼやきながらその通路を進んでいく。
横の壁にある窓からは今も宇宙や地球の光景が映し出されていた。それらをチラ見で眺めつつ、風音は自分たちが歩いている通路を見て眉間にシワを寄せていた。その通路は遮蔽物も少なく、あまり広くもない。そのため、大きすぎて動きが取れないアダミノくんとタツヨシくんケイローン、それにロクテンくん、ホーリースカルレギオンは今、大型格納スペースへと仕舞われていた。
階層入口を出てすでに十分程度歩いていたが、エネミーと遭遇した場合の対応には苦慮しそうだと風音は考えていた。
「ふむ。ダンジョンの構造自体は、要塞などの建造物の中に近いものがあるな」
風音の前を歩いているジンライが、そう口にする。そして、その認識は風音も同様のようであった。
(確かに。壁や敵や、色々と差違はあるものの……確かに何かしらの、自動生成ダンジョンらしい構造のパターンを感じるんだよね)
風音は、そういう妙にゲーム的な要素が気にかかっていた。特に七十階層に入ってからそれは顕著に感じられていた。もっともそのことを風音が深く考え込む前に、通路の先に部屋への入口の扉が見えてきたようである。
「ぬ? そういう造りか」
ジンライがその扉に近付いた途端に扉が自動で開いたのだ。そして、その内部は吹き抜けの二階構造となっているようだった。飛び降りることもできるし、降りる階段も設置されている。
「色々と隙間があるし、そこらへんをバリケードにされて、銃撃戦になると厄介そうだね。と、ジンライさん!」
「分かっておるわ」
風音の焦った言葉にも慌てずにジンライが一歩前に出ると、飛んできた何かを軽く槍で弾き返した。
それは放物線を描いて下階の何かしらの装置の影へと飛んでいき、その場で何かが爆発してマシンナーズソルジャーが吹き飛んだのが見えた。
どうやら、投げつけられてジンライが返したものは手榴弾だったようである。
「タツオッ、あれ撃っちゃって」
『はい。母上』
それから風音の指示に、タツオが乗っているタツヨシくんツインソードを前に出し、レールスナイパーライフルを取り出した。
爆風で倒れているマシンナーズソルジャーはダメージこそあるようだが、いまだ健在である。
そして、タツヨシくんツインソードが刀をバツの字に交差させて掲げると、そこにタツオがレールスナイパーライフルの銃身を乗せて構えた。
『照準を合わせます』
相手までの距離は100メートル程度。その程度ならばチャージせずともレールスナイパーライフルならば余裕で貫通する。
『そして、撃ちます!』
タツオは『直感』により迷いなく相手の頭部へと照準を合わせると、すぐさまトリガーを引いてマシンナーズソルジャーの頭部を撃ち抜いた。
「さすがタツオ!」
風音の声にタツオがくわーっと反応する。マシンナーズソルジャーはもう動く気配はない。だが、状況はまだ終わっていないようである。そのことに気付いた弓花が、風音へと声をかける。
「風音、足音が近付いてくるわ」
「了解。一旦戻って隠れよう」
「倒さんのか?」
ジンライの意外そうな声に風音は頷いた。
「うん。相手の動きを見ておきたいんだよね。だから、ひとまずはこいつを置いて観察する」
そう言って、風音は杖の先についている 魔金剛石(マナダイヤ) にゴーレムメーカーをかけてジュエルカザネを起動させると、よく分からない装置の裏側に隠して、自分たちは元来た通路の奥に戻って、隠れたのであった。
「どうだ?」
自動ドアも閉まって部屋の中も見えぬ状況だ。頼りになるのは風音がスキル『情報連携』で繋げているジュエルカザネのみ。それからジンライの問いに風音は「あ、来たね」と答えた。
「三体で組んで移動してる。前の階層に比べて小綺麗に見えるけど形はマシンナーズソルジャーだね」
「先ほどタツオが倒した相手も普通にマシンナーズソルジャーであったな」
「そうだね。けど……一体だけ、頭に角っぽいものが生えてるのがいる。これって隊長機かも?」
『カザネよ。角が生えていると隊長なのか?』
疑問に思ったメフィルスの問いには「まあ、なんとなく」と風音は答え、それから「角というかアンテナ棒かな。アレ」と補足した。
「多分、あれで遠くの仲間と連絡取れるんじゃないかな。そう考えると隊長と言うよりも斥候とか通信兵的なヤツなのかも。あ、倒したマシンナーズソルジャーを角付きが運んでいる。一緒に来た二体は周囲の警戒を始めたみたい」
「となると、そのまま留まられては進めんな。どうする?」
「うん。ひとまずは倒しておこう」
風音はそう言って、その部屋の装置の後ろに隠れているジュエルカザネを動かしていく。
身体を水銀のスライムのように慎重にソロソロと動かしながら、マシンナーズソルジャーたちのすぐ近くまで近付き、その形状を変化させる。
「そんじゃバッサリと行くよ」
カザネは己の意思のままに 魔金剛石(マナダイヤ) の触手を伸ばし、その先を鋭い槍のように変えて、マシンナーズソルジャーの一体を串刺しにした。
「あり、気付かれた?」
その直後に、風音は意外なものを見た。もう一体のマシンナーズソルジャーが、ジュエルカザネに対して銃口を向けたのである。背中を向けていたはずなのに、まったく迷いなく振り向きざまに撃ってきたのだ。そのマシンナーズソルジャーの行動を風音は怪訝に感じながらも、ジュエルカザネを頭部へと飛びかからせ、触手を貫き、その行動停止させたのである。
「む、銃声が聞こえたが」
その戦闘の状況を理解していないジンライが怪訝な顔をして、扉を睨むがすでに敵は倒している。
「ジュエルカザネで一体を攻撃したら、すぐに反撃食らったんだよ。見えない角度で奇襲をかけたのに……それに反応自体が前の階層のマシンナーズソルジャーよりもいいかもしれない」
「見た目も新しそうであったしな。強化されているのか、それともそれが本来の性能なのか………」
そう言ってジンライが唸る。今回は風音のジュエルカザネの奇襲が成功したものの、反撃があればそれなりに苦労しそうだとジンライは感じたようであった。
「それで風音、角付きは?」
「戻っては来てはいないね。けど、部屋の奥に監視カメラっぽいのがあるみたいだよ。緑のランプが付いてるから……多分、発見されてないのかな?」
『監視カメラ……ああ、あの基地にあったガラス板に他の場所の光景を映す道具であったな。中々に興味深いものであった』
メフィルスが思い出したという風に頷いた。施設内を網羅するように映し出されていた監視室のモニタは、メフィルスにとっては非常にインパクトのあるものだったようである。
「うーん。あの時はこちらが活用できたけど、今は見られる側だからね。破壊しておこうかな」
「気付かれない?」
弓花の問いに、風音は「かもしれないけど」と言いながら眉をひそめた。
「今後もここを通ることになるかもしれないし、ひとまずは目を潰しておきたいかな。ついでにスキル『空身』で気付かれないかもチェックしとこうか」
そう言って風音たちは、再び部屋に戻っていったのであった。
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そして、結論からいえば『空身』で監視カメラに気付かれずに抜けることはできた。
風音は同時に久々に造り出したゴレムくんのミニサイズをその場に置いておき、少し距離を取った後に監視カメラを破壊させたのである。
「あ、やられた」
風音が後ろを向きながらそう口にした。スキル『情報連携』での繋がりが切れた以上、ゴレムくんミニは敵に倒されたようである。その様子にジンライが眉をひそめる。
「敵が来たのかカザネ?」
「うん。さすがにさっさとやられちゃったみたい。まあ、結構距離は取ったし、こっちまでは追ってこないとは思うけどね」
そう風音は言葉を返しながら、先へと進んでいく。
「順調だなぁ」
その途中で直樹が呟く。敵の姿はなく、窓の外には大気を通さない美しい星々の光景があった。それらを眺めながら、メフィルスが少しばかり眉をひそめて口を開く。
『しかし、第七十五階層というには温い感じがするの。のぉジンライよ?』
「確かに。少々もの足りぬ……いえ、不気味ではありますな」
メフィルスの疑問にジンライも頷いた。A級ダンジョンを四分の三も越えたのだ。もっと手応えのある状況が待っているとジンライは考えていたようだが、今は穏やかな限りである。
「あ、ストップ」
それから少し進んだところで、風音が手を挙げて仲間たちも足を止める。それから風音は慎重に前を見ながら「多分、トラップだね」と言って、風音の虹杖を手に取って前に向けた。
「ジュエルカザネ、行って!」
風音が、杖の先の 魔金剛石(マナダイヤ) を変形させて先に進ませる。すると壁から銃らしきものが出てきて、銃口からジュエルカザネに向かってレーザーが放たれたのだ。
もっともジュエルカザネにはレーザーは効かず、その透明な体内を若干歪ませながらすり抜けてしまう。
ジュエルカザネはそのままあっさりと壁から出てきたレーザーガン装置を破壊すると、風音の虹杖へと戻っていった。
「あー、危ねえなぁ」
ライルが怖々という顔で、すでに煙を噴いているレーザーガン装置を見た。風音の『直感』で気付けたから良かったものの、食らっていたらただでは済まなかったはずである。それにはジンライも少しばかり苦い顔をする。
「未知の罠か。出がかりが分かり辛いのが厳しいな」
「確かに。けど、いいものが見つかったかもしれないよ」
そう言って、風音は破壊されたレーザーガン装置の横を指差した。そこは鉄板がめくり上がっていて、その奥に何かしらの空間があるのが見えていたのだ。
「お、こりゃ隠し部屋だな」
『さすが母上です』
レームとタツオが歓喜の声を上げる。
そして鉄板をタツヨシくんツインソードにめくらせて入口を広げて中へ入ると、ガランとした鋼鉄の部屋の真ん中に電子ロック式のロッカーらしきものがあったのである。
風音は、電子ロックキーでそれをあっさり解除すると、扉が開いて中に入っていたものが見えた。
「お、ラッキー」
風音が笑顔で、ロッカーの中をみる。そこにあったものは今もレームがかけているものと同じコマンドゴーグルだったのである。