軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七百九十四話 探索の予定を決めよう

未来洗濯機。それは超音波とナノミストマシンにより服に付いた汚れや雑菌を除去し、まるで買った当時のような状態にまで戻せるという未来仕様のハイパワー洗濯機である。

未来冷蔵庫。それは対物センサーを搭載し、内部の食材を自動判定して対象に適した保存を行い、また一緒に搭載されている冷凍庫スペースには氷製造のみならず、アイスクリーム製造機能までもが備わっているという優れものである。

未来オーブンレンジ。いろんなものが焼けたり、蒸したりできる。

未来ドライヤー。それなりに便利。

風音たちが基地内で発見したものは大体そんな感じのものだった。

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第七十二階層 隠し部屋

「うーん。ゆっこ姉から一セット欲しいってメールが来てる」

基地襲撃後の夜。

隠し部屋(セーフルーム) に戻った風音たちは風音コテージミニのリビングに集まり、いつも通りにミーティングを行っていたのだが、その途中で風音にメールが届いたようだった。

「あれ、もうゆっこ姉に連絡してたのか姉貴。複数あったドライヤーはともかく、他の家電は余ってないよな。渡しちゃうのか?」

「え、やだよ。別の基地が見つかったら送ってあげるけどさ。大体ゆっこ姉は女王様なんだから、侍女さんらが全部やってくれるし、そういうの必要ないはずなんだよね」

風音の言葉通り、女王陛下としての立場からすれば髪を解かすにしても、服を洗うにしても、食べ物を保存するにしても、呼び鈴ひとつで人を呼んで対応してもらえばいいだけの話である。

風音としては、現状報告メールについてはゆっこ姉と共にいる譲渡クエストナビの達良くんコピーの知識を頼りにするために送っている感じであった。

「ま、基地内の隠し部屋ならいいものも出てきそうだしね。今回の感じだと攻略はそれほど難しくはないから、次も見つけたら襲撃はかけようと思うけど」

その風音の言葉には、特に他のメンバーも異論はないようだった。

ダインス天使騎士団よりもらったコマンドゴーグルの優秀性は着用しているレームも理解しているし、永久バッテリーがあればエリア内で拾ったものを、ハードが壊れない限りは常時使用し続けることもできるのだ。普通にドロップしたアイテムには、それほどの価値が見込めないということもあり、隠し部屋への期待が高くなっていた。

また風音としても、なんとなくため込んでいる銃をなんとなく増やしたいという思いもあったので、基地襲撃には意欲的なようだった。

「後はオロチさんからのメールも来てるね。ふむ。竜牙衆についてみたい」

その報告には、その場に集まった全員が注目した。

メールに書かれている内容は、竜牙衆について一度会って話がしたいというものであった。それに直樹が「姉貴と会いたい?」と殺意を露わにし、その横では弓花が眉をひそめて口を開く。

「竜牙衆って確か、あのドラゴンと人間の戦争を起こしたいって人たちなんだっけ?」

「そうだね。今、私たちにとっては一番危険な相手だよ」

その言葉にライルが眉をひそめながら口を開いた。

「うーん。竜朱山の竜狩りの街だろ。ハイヴァーンだと竜騎士かレガリアかって言われてるくらい、憧れのひとつなんだけどな」

「そうなのですか?」

ティアラがライルの言葉に首を傾げた。ハイヴァーン公国は竜と縁深い国だ。竜を狩る街などとはむしろ敵対していても良さそうな気がしたのだが、それにはエミリィが横から口を挟んできた。

「ええ。あの街の長であるエンロ様は、ナーガ様とも盟友であらせられるわ。ハイヴァーンでの害竜退治の際に力を借りることも少なくはないのよ」

ティアラの認識している通りに、ハイヴァーン公国はドラゴンと確かに縁深き国だ。

竜の里のひとつがあり、また『害竜も多く』生息している。ドラゴンを敬いながらも、ドラゴンを恐れ、ドラゴンを殺し続けている国でもあるのだ。

故に『ドラゴンスレイヤー』の称号は、ハイヴァーン公国に於いては竜騎士と並ぶ憧れのひとつであり、竜の里にしても対等の力を持つ友として扱っているのである。

「けーど、竜牙衆ってのは、基本的にレガリア内でも異端の竜排斥派だってことだからね。それが動いているってのは無視できない話なんだけど……」

風音は説明しなかったが、竜牙衆は主にドラゴンに家族や仲間を奪われた者たちの集団だ。ドラゴンを敬うことなどあり得ず、竜の里の存在も、それが国と繋がっていることにも反発している……というのが、風音が聞いた情報であった。

「それでタツオを狙っているのかよ。フザケた連中だな」

『まったくです。返り討ちにしてやります』

憤るレームと、その頭の上にいるタツオがくわーっと鳴いた。現時点において狙われているのはタツオだが、風音は、自分自身やクロフェ、ソル、ユッコネエも情報が漏れていれば、対象になっている可能性はあるとも説明されていた。

「まあ、ゴルディオスの街には、クロフェさんもいるからね。屋敷を襲撃しようとしたって無理だろうけどさ」

慎重そうな表情をした風音の横では、若干楽観視した顔で弓花がそう言って軽く笑った。それは場を和ませるためのものであったが、風音は少しばかり苦い顔をして首を横に振った。

「と思うんだけどね。けど、ゆっこ姉も、レガリアの街も、それに経由しているはずのトゥーレ王国でも足取りが掴めないらしくて。どうもインビジブル的な能力持ちでもいるかもしれないってゆっこ姉から連絡があったんだよ」

「そりゃあ、ちょっと心配だな」

レームが眉をひそめると、その頭の上でタツオがドンッと自分の胸を叩いた。

『大丈夫です。私も母上より授かった『直感』を鍛えておりますので』

「まあ、タツオのはほとんど予知に近いレベルだからね。慎重にしてればインビジブルも破れるかもしれないけど」

タツオはかつてのベヒモス戦において『直感』を『未来予測』と呼ばれる域にまで昇華させている。それはジンライも持つ未来を予測するほどの洞察眼だ。

それはこの階層においても活用されていて、事前に銃弾が来ることを予測することで、クリスタルシールドで防御を行っていたのであった。

「とはいえ、インビジブル系統だと気付かぬ内に……というのは十分にある話だし、ひとまずタツオはツインソードとの連携をもっと行えるようにするべきだね。いずれ大きくなったときにも、アレにはタツオのガードを任せる予定だから」

『はい。頼もしいです』

「頼もしいのはいいけど……こっちは自信をなくすな」

直樹が少しだけ落ち込んだ顔を見せる。

なにしろ直樹の二刀流の師匠であるイリアは、ゆっこ姉が帰還してからも影武者時にたまった仕事を片づけるために奔走しており、今はタツヨシくんツインソードが直樹を鍛え続けている状態であった。

剣術に限った話とはいえ、タツオの護衛にコテンパンにされ続けることは直樹のプライドをそれなりに傷付けているようだった。

「まあ、ツインソードは技量も膂力も相当なものだからね。そうなるように造ったわけだし」

フフフンと鼻を鳴らす風音が、自慢げにタツヨシくんツインソードを見る。

タツヨシくんツインソードの二刀流の技量は確かなもので、マッスルクレイや魔導線の恩恵により各部位への反応速度も高く、近接戦闘における能力で言えばジンライや変化した弓花やジン・バハルに次いでの実力であった。

正直に言って、護衛にしておくには勿体ないスペックである。

「で、オロチさんと話すってのはいつにするの? 緊急性があるなら、すぐに戻っても良いと思うけど」

「うーん。状況が見えないから予定通りには進むよ。ある意味ではダンジョン内が一番安全だろうしね」

その風音の言葉に全員が納得の顔を見せた。

冒険者ギルドに管理されたダンジョン内へと竜牙衆がコッソリ入ることなど無理な話だし、例え潜入できてポータルまで使ったとしても、六十階層から今いる七十二階層まで風音たちを探さなければならない。それはあまりにも現実的ではない話であった。

それらを加味して考えながら、風音が口を開く。

「予定通りに明日、明後日で七十三階層を攻略。明明後日はフィールドが変わるっていう七十四階層へと一旦降りて、どういったものかを確認したら地上に戻ろうと思うよ」

そして、白き一団のダンジョン攻略は続いていく。

それから予定通りに二日かけて風音たちは第七十三階層を探索し、ゴーレムメーカーで地雷地帯にショートカットの橋を作りながら、第七十四階層に通じる地下鉄入り口までの最短ルートを作り上げていった。

その間に発見したものはそれほどなく、また再度戻ってきたときには第七十三階層も細かく探索することを予定に入れながら、風音たちは第七十四階層へと向かったのである。

そしてたどり着いた風音たちを待っていたのは、砂漠であった。そこは砂漠に飲まれた巨大カジノが軍事基地に転用された……というような、くどい色のネオンが並び立つ異様な場所であった。