軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七百九十三話 基地内を探索しよう

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第七十二階層 中央軍軍事基地 地下

「メタルカザネJ、ゴー!」

赤いライトに照らされた部屋の中を、風音の指示に従って 金剛石(マナダイヤ) のラインの入ったアダマンチウムのボディのメタルカザネJが駆けていく。その先にいるのはバリケードを築いて防戦の構えを取っているマシンナーズソルジャーたちだ。

そのマシンナーズソルジャーたちから発せられる銃声とマズルフラッシュの中をメタルカザネJは飛び越え、密集した陣形の中心に降り立つとその全身をまるで扇風機のような刃の羽に変えて、その場の敵を破壊していく。

そして、瞬く間にその場のマシンナーズソルジャーたちが一掃され、続けて奥へと進むと、他のエネミーたちの掃討も着々と行い、十分と経たずに、そのエリアの占拠を完了したのであった。

「これで全滅かな。こういう狭い地点で護られてると、さすがにキツいね」

「んー、無理に突っ込んでも良かったんだけどね。ちょっと怖い部分もあったし」

赤いライトに照らされる通路を進む風音の後ろで、弓花が少しばかり眉をひそめながら、そう口にした。

建物内の掃討を担当していた弓花であったが、この場所の対応は風音に頼んでいた。

狼仮面を被ったフル装備の状態で突撃すれば、問題なく仕留められる相手ではあるようだったが、手榴弾やロケットランチャーなどを集中的で喰らえばダメージを受ける可能性もある。そうした点を考慮した結果、弓花は 安全策(メタルカザネJ) での対応を希望したのである。そうした臆病な一面とも言えることを、特に気にすることなく提案できるのが弓花の長所だ。

そうして風音たちが足を運んでいるのは、襲撃した基地内の最後の探索ポイントである地下エリアであった。施設内の他の場所の探索はおおよそ終えて、いよいよ最後のエリアの探索となったのだが……

「うーん。ここでマシンナーズソルジャーを造っているみたいだね。部品がどこから来てるのかは分からないけど魔素から造ってるのかな?」

そこはベルトコンベアとロボットアームが動いている、マシンナーズソルジャーの組立工場であった。

ベルトコンベアで運ばれているパーツの出元はその場からでは把握できないが、この世界においては魔力体の密度を上げることで物質化を行うこともできるのだから、パーツ自体もそうして造られているのではないかと風音は考える。とはいえ、このまま造られ続けても敵が増えるだけなので、風音はすぐさま製造装置を破壊してその動きを止めると、それから探索を開始し始めた。

もっともその工場内で風音たちの目の引いたものは特にはないようで、一通り見終わるとメンバーたちは工場内の制御室らしき場所に集まっていた。

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第七十二階層 中央軍軍事基地 地下制御室

「必要なのって、なんかある?」

「うーん。微妙? ひとまず工場は止めたんだから、マシンナーズソルジャーの数は減るとは思うけどさ」

探索を終えて、全員での確認の場での弓花からの問いに風音がそう答えた。

調べた結果、工場内にあるのは組み立てのために動いているロボットアームに、マシンナーズソルジャーのパーツが転がっている程度であったのだ。

「けど、この中って汚染濃度は低いのな。敵の本拠地だから、こう一気に上がるんじゃねーかと思ってたけど」

ここに来るまでに発見していた汚染メーターを見ながらレームがそう口にする。頭の上に乗っているタツオが『空気は綺麗ですよ』と返した。

当初発覚していたフューチャーズウォー階層の問題であるナノマシン汚染に関してだが、汚染メーターで確認しながら進んではいるが、ナノマシンが固まった結晶体を避けてはいるし、抑制剤を定期的に飲むことで汚染率も下げ続けている。そのため、特に問題らしい問題も発生していなかった。

「室内はナノマシンの汚染度はほぼゼロっぽいね。隠し部屋があればここをセーフルームに使いたいくらいだけど、どうにも見つからないんだよね」

「外はでっかい四角い砦ばかりだし。構造が分かりにくいから、隠し部屋も見つけにくいのよね」

エミリィの言葉にライルがコクコクと頷いている。

元々見慣れている風音たちとは違って、この世界の住人であるエミリィたちには崩れた摩天楼は馴染みのない光景であるためし、そもそもビルがなんのために立っているのかも分かってはいないようだった。

あの中で毎日仕事をしている人たちがいたのだと説明はしたが、あんな大きい建物の中で何の仕事しているのかと問われれば、元学生であった風音たちも答えようがなかったのである。

「まあ……バッテリーや、そっちの銃や弾は持ってこうか。ロケットランチャーや手榴弾はともかく、銃とかは使い道があんま考えつかないんだけどさ」

風音が周囲を見渡しながらテキパキと指示をしていく。

この基地内の探索もこの地下施設で最後である。

セキュリティルームのモニタに表示されていなかった場所は三カ所で、それはこの地下生産工場と、マシンナーズソルジャーたちのバッテリー補給所、それに武器庫であった。

それらを含めて探索した結果、風音たちにもっとも有益であったのは事務室にあった生活用品だったようである。

「結局、使えそうなのはレンジに冷蔵庫に洗濯機に……パソコンや空調は施設に固定されてて取れなかったし、そんなところかな。冷蔵庫ん中の食べ物もちょっと手を出したくないしねえ」

風音がマップウィンドウの基地内マップを見ながら難しい顔をしている。

基地内を探索した結果、思った以上に実りがなかったことが分かったのだ。銃や銃弾などの武器やバッテリー、汚染メーターに抑制剤などは大量に見つかったためにそれらはストックしたが、現状でそこまで必要なものでもない。また、ゴーグルの類もこの場にはおいていなかった。

「うーん。基地そのものはマシンナーズソルジャー専用みたいだし、さっきの事務室みたいなのぐらいしか人の住むスペースないし、微妙だな。あ、本がある」

風音が管制室内の棚に置かれている本を手に取った。

「ふーむ」

「姉貴、何見てんだよ?」

ペラペラと本をめくる風音に直樹が声をかける。そして、後ろからのぞき込むと、その本の中身が見えた。それは、金髪の女性が紐のような水着を着て海岸を走っていたり、犬に抱きついていたり、森で森林浴をしているような写真が大量に載っている本であった。

「そりゃ、グラビア本か」

目を細めて見ている直樹に気付いた風音は、本を閉じてから直樹へと向き合った。

「直樹……」

「な、なんだよ?」

少しばかり身構えた直樹に、風音はスッと持っていた本を手渡す。それから少しばかり微笑んで「私は理解のある姉だからね」と言って、そのまま去ろうとしたのである。

「ちょ、ちょっと待て、姉貴」

「何? 返さなくてもいいよ。うん」

風音が笑って、そう言葉を返した。

良い姉とは、弟がエロ本を持っていようとそれを笑って許してあげられる姉のことである。さらにもっと上級の姉ともなれば、自らそうした本を弟に提供することすらもできるのだと風音は独自解釈をしていた。

そのスマイルに直樹はウッとなってよろめく。周囲の目は痛いが、姉の目は優しい。それを喜ぶべきか否かと直樹の中で揺れ動いたが「それよりも」と指をとある方に向けた。

「こっちを見ろよ。不思議な倉庫の中身がなんかもうネットで見たマフィアの武器自慢動画みたいになってるぞ」

その直樹が指差した先にあったのは、扉の先が亜空間に通じている不思議な倉庫であった。その扉が開かれ、そこから数十の機関銃とロケットランチャーと、弾薬や手榴弾を詰め込んだ木箱が何箱も置かれている光景が目に入る。それは一見して、ゲリラの倉庫のようでもあった。

「いやー、なんか勿体なくてさ。ほら、このダンジョンも攻略しちゃったらこのエリアも消えるわけでしょ。そうなると、これを再度入手するのって難しいと思うし……集められるだけ集めた方がお得な感じがするじゃない? あ、あっちの世界に行けたら売っちゃえばいいわけだし」

「武器商人にでもなるつもりか姉貴は!?」

この場所以外では二度と取れないアイテムかもしれないのだ。であれば、集められるなら集めておきたいという心理が風音の中で働いていたようである。

ともあれ、基地内の探索は完了。風音たちは冷蔵庫と洗濯機、それにグラビア本を手に入れることには成功し、それから基地内を後にしたのであった。