作品タイトル不明
第七百九十二話 基地内を片付けよう
『レームたちは左側から来るのを足止めしておいてくれ』
「あいよー」
ドクロ魔人化した直樹の言葉にレームが返事をしながら、次々と左側の角から出てくるマシンナーズソルジャーたちを倒していく。
そこにエミリィのファイアヴォーテックス付き矢とタツオのメガビームが合わさり、出現したエネミーをほぼ確実に仕留め続けることに成功していた。
また、彼らの右手からくるマシンナーズソルジャーたちに対しては、直樹とシップーに乗ったジンライ、それにライルとジン・バハルが挑んで排除し続けていたのだが、途中でライルの口から悲鳴が上がった。
「クソッ、いてえ」
『ライルは下がってろ。ジンさん、護衛を』
『承知ッ』
直樹の指示にジン・バハルが従い、敵の攻撃を避けながらライルを背負ってサンダーチャリオットトレインへと戻っていく。
元より骸骨であるジン・バハル、物理攻撃の効かないドクロ魔人化直樹に、ともかく避け続けるジンライとシップーに比べて猪突猛進が目立つライルは、マシンナーズソルジャー相手では被弾することが多かった。身に纏う鎧や竜気の障壁により致命傷には至っていないが、そのダメージは決して少ないものではなかったのである。
「くっそ。ここだとホント俺使えねえ」
ここまでにも同じようなことがあったライルが、治療されながら弱音を漏らす。
『仕方ない。あれを相手にするには、ジンライ殿ほどの回避力がなければ厳しいぞライル様。私とてこの有様だ』
そう言ってジン・バハルが己の腕の骨を見せると、そこには何度か被弾した後があり、ひびが何本も入っていた。
『後何発か食らえば、戦闘不能になるでしょうな。ダインス天使騎士団のように重武装で挑むのが本来は正解なのでしょうが』
「そりゃあ、そうなんだろうけど。ナオキが羨ましい……ってのは言っちゃあ駄目だしな」
直樹のドクロ魔人化は強力ではあるが、ドラゴン一体分の竜気を持つライルの方が持っている力は上なのだ。使いこなせていないのは、己の未熟故であるとライルも理解している。
『仕方あるまい我よ。アダマンチウムの槍ならば大量にあるのだ。遠距離から『雷神槍』で倒していくしかあるまいて』
「はぁ。そうは言うけどな。さっきのアレを感じると、いや……まあ、そうだな」
高ぶっていた気持ちを抑え、ライルがジーヴェの槍の言葉に同意する。先ほど感じた同種の気配にライルとジーヴェの槍はやや過敏になっていた。
その気配とは風音の中に宿った再生体のジーヴェの魂のもの。転生竜となったアカや、武具として生まれ変わり再構成されたジーヴェの槍とは違い、鬼皇の竜鎧の中にいるのはかつてのジーヴェの魂と同じものがそのまま宿されたものだ。
ジーヴェの槍と魂が同化しているライルからしてみれば、それは生まれ変わる前の自分を見ているような感覚でもあった。
そんなことを考えていたライルたちの頭上から声が発せられる。
「みなさま、外からも敵が来ております。まずはケイローンと騎士団を向かわせますわ」
それはアダミノくんに乗っていたティアラの声であった。さらに共に乗っているエミリィがライルにも声をかける。
「兄さんも来て。バスターウォーカーもいるわ。私たちじゃあ押さえきれない」
「ちっ、しゃーねえなあ」
ライルはそう言って立ち上がり、槍専用の不思議な袋から何本ものアダマンチウムの槍と彗星の投槍を取り出した。
それらを地面に次々と突き刺しながら、軍事施設の入り口の外をライルは見据える。その視線の先、倒壊した街の方からは確かにマシンナーズソルジャーとバスターウォーカーが近付いてきていた。
「そんじゃ、一発決めてやるよ」
そして、ライルは彗星の投槍に膨大な竜気を溜め込むと、バスターウォーカーへと一気に放ったのであった。
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「爆発音?」
『ふむ。基地外からも敵がやってきておるのだ。今のはライルがバスターウォーカーを倒した音であるな』
「ああ、それで」
弓花が外の騎士とも繋がりのあるメフィルスとそう話しながら、部屋の中で最後の一体を突き刺して倒した。
弓花たちが施設内に突入してから、外で起きた爆発はすでに五度目である。内四度は風音たちがガレージでバスターウォーカーを倒したときの爆発音である。ガレージ内でのものであったため、施設が崩れないかと弓花は少し怖かったが、今回は少し離れたところのようで、振動もほとんどなかった。
「ウォンッ」
そして刀を咥え鱗に覆われたクロマルが、部屋の外から入ってきた。部屋に近付いてきた敵を倒したようである。
「よし、偉いよクロマル」
その近付く麒麟化クロマルに対して弓花が頭を撫でると、尻尾が嬉しそうにボフボフと揺れた。
なお、現在周囲の通路には 炎の騎士団(フレイムナイツ) が警護に当たっているので、奇襲の心配もない状態である。
それから部屋の片隅の破壊された赤色の丸いものがついた機械を見ながら、メフィルスが弓花に尋ねる。
『それで……これで良かったのかの? 実際に音は止まったようではあるが』
「多分。正直、私も良くは分かりませんけどね」
弓花は自信なさげに答える。
弓花たちが今いる部屋はどうやら基地内のセキュリティルームのようで、彼女らの前にはズラズラと碁盤の目のようにモニタが並んでいた。いくつかのモニタは映っていなかったり、もしくは映像を映すカメラが死んでいるのかノイズが走っていたりもしたが、そこには基地内の大体の場所が映し出されていた。
そして、弓花はそのセキュリティルームの壁にあった赤く点滅していた機械を破壊していた。それで基地内の警報音は止まったのだから、ひとまずはミッションのひとつはクリアしたと弓花は考えていた。
『しかし、建物の内部がこうも筒抜けとはな。そりゃ、すぐに見つかるわけだな』
「ですね。まあ、あの機械の兵隊たちなら、奇襲でもそれほど問題はないですけど」
『そう言えるのはそなたやジンライ、カザネくらいであろうよ』
メフィルスがそう言って苦笑する。炎の精霊と化したメフィルスや闇の精霊と化した直樹は例外としても、マシンナーズソルジャーたちは普通に戦えば、かなりの苦戦を強いられる相手だろうとメフィルスは認識していた。
少なくともジンライたちと旅をしていた若い頃のメフィルスでは、逃げ帰るのが精々だったと考えていた。そのメフィルスの言葉に弓花が首を傾げる。
「そうですかね。それこそ装備次第じゃないかなって思えますよ。ダインス天使騎士団やメフィルス様ならそこまで苦労するものでもないでしょ?」
『まあ、相性を生かすというのは基本的なことではあるか。確かにな』
納得して頷くメフィルスの横で、弓花が視線をモニタに移した。
「けど、結構片付けたと思ってたんですけど、まだそこそこ残っていますね。施設も思ったよりも大きいし」
『確かに。どうやらこの投影装置にも映らぬ場所を護っているようなのもいくつかおるようだな。こりゃ、ひとつひとつ潰していくしかあるまいて』
「ですねー。あ、洗濯機発見。冷蔵庫もあるか。うーん、永久バッテリーと繋がると良いけど」
そして弓花がセキュリティルームのモニタに映る施設内地図にマップウィンドウを近づけて、そのマップ情報を写し取ると、それから物品リストと敵の集まっている場所をそこに書き始めた。その様子を見ながらメフィルスが尋ねる。
『それは、またうぃんどうとやらを使っておるのだな?』
「はい、そうですよ。ひとまず地図に敵の場所や欲しい物品の配置を書き込んでます。共有で、風音にも届きますし、バスターウォーカーも倒したんならすぐに来るんじゃないですかね」
『なるほどなぁ。便利なものよの』
その言葉には弓花も頷かざるを得ない。
魔導カメラ自体は風音が所持しているために、今弓花が書き込んだものをメフィルスがすぐに確認することはできない。だが、それでもウィンドウの機能にはメフィルスも随分と世話になっていることは分かっている。それから、ひとつ気になったことをメフィルスが弓花に尋ねた。
『ところで、あのレームのかけているゴーグルとやらは、確かそのうぃんどうと似たようなものなのであったな?』
「そうですね。小マップと動体レーダー表示があるから、戦闘ではあっちの方が実は便利です。『犬の嗅覚』と『直感』で代用できるから風音はいらないって言ってましたけど。ああ、あのゴーグルないかなー」
そう言って弓花が施設内をモニタ越しに見るが、確認した限りではゴーグルが置かれている部屋はないようだった。
そしてモニタの見方をメフィルスに教えた弓花は、メフィルスをセキュリティルームに残して、他の 炎の騎士(フレイムナイト) たちと共に基地内のエネミーの駆除を再開する。外の戦闘と合わせ、この施設内の占拠が完了したのはそれから一時間後のことであった。