軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七百八十六話 ソロで戦おう

黒岩竜ジーヴェ。それはかつて風音たちがオルドロックの洞窟で対峙して討伐したドラゴンであった。

その正体は六百年前に討伐されたレベル232の成竜の再生体。神竜には至ってはいないが能力自体はそれに近く、炎のブレスと鱗を飛ばす攻撃を行い、矢除けのスキル『風の加護』はないが、それを補ってあまりある防御力を持っているドラゴンであった。

そうしたドラゴンの中でもかなりの上位種が、相当に怒り狂って風音の前に立っていた。

『ここはどこだ? 貴様はあの男の仲間か、人間め!!』

「あの男って……うわぁっ!?」

風音が返事をする間もなくジーヴェが炎のブレスをその場で吐きだす。しかし、一瞬にして風音の周辺に風の壁ができてそれを遮った。

『ぬぅ!?』

「あっぶなー」

いきなりの攻撃には風音も目を見開いたが、自動発動した『暴風の加護』がブレスを防いだようだった。だが、炎のブレスはそれでも止まらない。

「炎が止まらないか!? ユッコネエ、竜体化してアタック!」

「にゃぁあああああ!!」

風音の指示にユッコネエが黄金竜へと変化して走り出し、ジーヴェに体当たりを食らわせた。

「ふぅっ!?」

ブレスが途切れたところで風音がスキル『ハイパーバックダッシュ』によって一気に下がり、それと入れ替わるようにその場に二体のドラゴンが絡み合うように転げていく。

『人間の 僕(しもべ) となったか水晶竜め。この竜族の恥曝しが!』

『にゃにゃにゃーーーー!!』

そして、ジーヴェとユッコネエドラゴンが互いを爪で切り裂きながら、炎のブレスを吐き合ってその場を火の海と化した。もっとも体格差からしてユッコネエドラゴンとジーヴェでは互角ではない。

『ぎにゃぁあああああ!!?』

「ユッコネエ!」

次の瞬間には、ユッコネエドラゴンの身体をジーヴェが二本角で突き刺していた。ユッコネエドラゴンの水晶角ではジーヴェは貫けないが、ジーヴェの角はユッコネエドラゴンを鱗ごと貫通できるのだ。それはドラゴンとしての格がそのまま現れた結果であった。

『愚かな。我よりも下位竜が我に楯突くとはな!』

続けてジーヴェはユッコネエドラゴンを持ち上げて深く突き刺すと、離れた場所へと首を振って投げ飛ばした。

「クッ。狂い鬼ッ、出てきて!」

さらにユッコネエドラゴンへと追撃を仕掛けようとのど袋に炎をため始めたジーヴェへと、瞬時に召喚された狂い鬼とベヒモスビーストが突撃して体当たりを仕掛けた。

「ウガァアアアアア!」

『ぬ、小癪なっ!』

それに一度はよろめいたジーヴェであったが、すぐさま尻尾を振るって狂い鬼とベヒモスビーストを弾き飛ばし、そこにブレスを吐いて炎を浴びせていく。それには狂い鬼と同時に呼び出されていたダークオーガ軍団も一緒に浴びてのたうち回っていた。

(役に立たない!?)

風音がその光景にショックを受けているが、基本ダークオーガ軍団はかなりの強敵でもなければ呼ばれないわりに、呼ばれても役に立たない場合が多いのだ。とはいえ、狂い鬼の方は一方的にやられているというわけではなかった。

「ウガァアアアアア!」

ジーヴェに対し、アーマード化した狂い鬼とベヒモスビーストが 爆発反応装甲(リアクティブアーマー) の爆発を起こしてブレスを拡散させながら、さらに飛びかかっていく。

だがジーヴェも飛びかかる狂い鬼たちに対して特に慌てることなく、尻尾を振るって体当たりされる前に弾き飛ばされた。

(こりゃあ、マジで強いね)

風音はジーヴェの強さに戦慄する。以前戦ったときには、そのほとんどを英霊ジークに任せて、自分たちは追加ダメージを与えただけであったのだ。その頃に比べて風音も随分と強くなったとはいえ、それでもジーヴェを相手に風音と 僕(しもべ) たちだけで対処するのは難しいようだった。

(カルラ王が見ているだろうし、セカンドを出すのは最後の手段だとしても、あいつなら)

すでにその存在を知られている。であれば……と、風音が手を挙げて指輪を前に差し出した。

「来てジーク!」

そして、指輪から発せられた光の中から銀色の長髪の戦士が現れる。それは風音の英霊ジークだった。その英霊ジークが地面に降り立つと同時に駆けた。

「ジーク。以前と違って相手のダメージはないよ。けど、やれるよね?」

「ふむ、問題はない……が」

『我が怨敵よ! そこにいたかぁあ!』

黒岩竜ジーヴェが、英霊ジークの大翼の剣リーンを見て激昂していた。ジーヴェの中でかつて討伐されたときの記憶が蘇り、怒りの炎が再燃したようだった。それは前回の戦いの時と同様の反応だ。その予想通りのジーヴェの動きを見ながら風音が指示を飛ばす。

「そんじゃあ、私は準備にかかるから、狂い鬼はひとまずはジークとともに攻撃を! ユッコネエはこっちで回復するから急いで!」

そして英霊ジークがジーヴェと戦いに入り、それにすでにネイキッドとなった狂い鬼とベヒモスビーストが追撃していく。

「ゴメンね、ユッコネエ。大丈夫?」

「にゃー」

風音が魔術のハイヒールを猫の姿に戻ったユッコネエにかけていく。スキル『竜体化』は本人を核として、魔力体のドラゴンの身体を生み出すものだ。それ故に魔力体の部分を攻撃されても、本体へは直接的なダメージは通らない。しかし、フィードバックダメージに加えて、竜体を串刺しにされたときにユッコネエは内部の本体も肩口をジーヴェの角によって抉られていたのである。その傷を癒しながら風音がジーヴェを見る。

(予定通り、ジークにターゲットは固定されてるって感じだね。狂い鬼は無事だけど……ベヒモスの方は召喚解除か。まあ仕方ない)

今もネイキッド狂い鬼が翼をはためかせてブレスを回避し続けているが、ネイキッドベヒモスビーストはもういなかった。ネイキッド化は速度を上げる代わりに防御が弱化する。広範囲に放たれる炎のブレスは例え『暴風の加護』であっても長時間耐えることはできず、結局削られきってベヒモスビーストは倒されてしまったのだ。

(狂い鬼も後どの程度保つか……ユッコネエも蓄魔器チョーカーがない状態だから、竜体化にブレスを使った今だと再度の変化は厳しいしなあ)

ユッコネエは緑光の壁を越えるために召喚解除して再召喚されている。そのために装備していた蓄魔器チョーカーは壁の向こうの弓花が持っている状態で、現状の魔力量はそう多くはない。

となれば風音はユッコネエに残酷な指示を出すしかなかった。そして「な、にゃぁあああ」と悲しい声を出しながら戦場に向かうユッコネエを見ながら風音は戦場を見回した。

(作戦としては、前回同様に敵の攻撃を英霊ジークに集中させる。それは変わらない。だけど……今回はもうひとつ武器がある)

「龍神の大剣なら、通るだろうね。来てロクテンくん」

風音の言葉と共に、英霊ジークたちが戦っている後方に魔法陣が発生してロクテンくんが出現していく。

『なんだ、あれは?』

「ふん。よそ見をしている暇はないぞ」

ロクテンくんの存在に気付いたジーヴェだが、英霊ジークが矢継ぎ早に攻撃を仕掛けていて、迂闊には動けないようだった。

その間にスキル『真・空間拡張』大型格納スペースより出された漆黒の巨人ロクテンくんは地面に降り立った。その巨人に知恵の実をシャクッと食べながら風音が跳んだ。

「さーってと、いくよロクテンくん。とおっ!」

風音がまさしく荒ぶる鷹のポーズでジャンプをし、胸部ハッチの中へと乗り込んだ。その内部で風音は「よいしょっと」と言いながら体操座りをして、術式を発動ささせる。それは四肢の感覚を一時的に遮断し、全身義体としてロクテンくんの身体を支配していく術式だ。

そうして風音の魔力がロクテンくん内部に浸透していくと、第六天魔王の鎧と呼ばれる装甲の表面の色が漆黒から黄金へと変わっていく。風音の魔力が流し込まれたことで硬度が増し、内部に仕込まれたマッスルクレイも活性化されて、パンプアップされたかのようにその身を肥大化させていった。

『全身接続オッケー。変形開始!』

そして風音の言葉と共に、頭部の左右からは黒岩竜ジーヴェの牙が角として伸び、顔を覆っていたのっぺらぼうのバイザーが外れて覇王の仮面が姿を現し、魔力が注がれたことで仮面からは赤い髪が発生して伸びていった。

さらには首元からは紅蓮のマントが飛び出て、そのマントが炎に染め上げられていく。

『ここまでは起動オーケー。そんじゃあ続けて腕行こうか! メタルカザネJも合体開始!』

ガコガコと背から伸びた四本の腕に加えてメタルカザネJがその背に張り付くと、六刀流を扱うために二本の腕へと擬態化した。また、それぞれの腕に握られているのは、3メートルの第六天魔王の大太刀と斬馬刀『断頭』に、1.5メートルの紅の水晶大太刀・信長式が四降り。

そして、背からは六本の腕だけではなく 金翅鳥(こんじちょう) の腕輪を発動させた黄金の翼が広がり、それはスキル『ウィングアーム』によってドラグホーントンファーを握って構えていた。さらには黄金翼から発生した『風の加護』により浮き上がった段階になると、足からはトンファーの代わりに追加されたアダマンチウムの仕込み刀が出現した。

その最後の仕上げとばかりに全身が虹色に輝いていく。それは神竜帝ナーガより与えられた虹のネックレスの効果であるオーロラカーテンが発現したものであった。

『クソッ、あれは……なぜ人間がアレを持っている!?』

ソレを見て危機感を募らせたジーヴェが英霊ジークの攻撃を敢えて受けながらも、ロクテンくんへと突撃していく。

その視線の先にあるのは最後にアイテムボックスから出して地面に突き刺さっている巨大な大剣だった。

それは三つの巨大な鱗を重ね合わせただけの無骨な武器だ。龍神の大剣と呼ばれるソレをロクテンくんが掴み、両腕で持ち上げると神力の光が放たれた。

そうしたスペル・スキル・装備を合わせてシステム化されたものこそが、ロクテンくん・阿修羅王モードバーストと呼ばれるものの正体。風音の切り札のひとつであった。

『さーて、行っくよーーー!』

そして、風音がスキル『ブースト』で一気に加速してジーヴェへと突撃し、次の瞬間にはジーヴェの強固な鱗が宙を舞ったのであった。