軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七百八十三話 豊満を見よう

閃光手榴弾。それはゲーム中であれば、プレイヤーはモニタの表示を真っ白にされて目潰し的な用途で使われていたものであった。だが今、マシンナーズソルジャーたちはそれを別の目的で目の前の相手に使用していた。

それを使われている相手とは直樹である。ドクロ魔人化した直樹は、苛立ちを露わにしながら閃光手榴弾を避けつつ戦場を駆けていた。

『くそっ、対策が分かればすぐさま使ってくるか。本当に連携と学習能力は高いな』

再び投げられる閃光手榴弾を飛竜で弾きながら、ドクロ魔人化直樹は剣を振るって正面のマシンナーズソルジャーを切り裂いた。

そこに他のマシンナーズソルジャーがヒートナイフで迫ってきたが、それをドクロ魔人化直樹はすり抜けて、返す刀でその二機も仕留める。

だが、次の瞬間には離れた位置にいたマシンナーズソルジャーがさらに閃光手榴弾を投げてきたのだ。

『たく、オチオチ留まってもいられないか』

ドクロ魔人化直樹はそれに舌打ちしながら蝙蝠の翼を広げて上空へと一時離脱する。

周辺の建物に設置されている 自動機関銃(セントリーガン) のがそれに反応して銃撃を行うが、物理無効化した直樹にそれは意味のないものだった。

その銃弾のシャワーを無視して直樹は急降下し、

『うぉっりゃぁあああああ』

さらに別のマシンナーズソルジャーを倒すべく剣を振るっていく。

このように闇の属性の上位精霊となった直樹に物理攻撃である銃弾のダメージはない。しかし、閃光手榴弾の強烈な光は闇の精霊であるが故にダメージを負ってしまうのだ。

そして、たまたま使われた閃光手榴弾にダメージを受けた直樹の姿を視認したマシンナーズソルジャーたちは、すぐさま閃光手榴弾を直樹に集中させるよう戦闘パターンを変化させていったのである。とはいえ、ドクロ魔人化直樹にとって、それは致命的な問題ではなかった。

『まあ痛いけど……そこまで怖いものではないさ』

そう嘯きながら、ドクロ魔人化直樹はさらに閃光手榴弾を投げようとしたマシンナーズソルジャーへと接近し、閃光手榴弾を持っていた腕を右の剣で切り裂き、左の剣でコアを貫く。そしてこぼれ落ちた閃光手榴弾が爆発する前に、その場から一気に跳んで下がった。

確かに閃光手榴弾は直樹に対してダメージを与えることはできる。だが上位精霊化した直樹にそれは致命的なダメージではなかったし、その攻撃以外に自分にダメージを与えられるものはないことは分かっている。

故に直樹は焦らず、一機ずつ確実に仕留めていく戦法を取っていた。そしてさらに直樹がもう一機を仕留めて、次……と思って戦場を見回すと、最後のマシンナーズソルジャーを片付けている弓花の姿が見えた。

『相変わらず、ペース早いな』

それを見た直樹が呆れ顔になった。

自分が一機仕留める間に三四機まとめて弓花は始末するのだ。それも 神狼の腕輪(フェンリルリング) 等も用いずに己の力だけで。

実際にここまでの弓花の撃破数は風音の広域攻撃による殲滅を除けば、パーティ内でもトップであり、その殲滅力はジンライをも大きく上回る。

プレイヤーであるために素のスペックが高いということもあるのだが、弓花の戦闘における手の抜き方は熟練者であるジンライよりも上手いのだ。それは『天賦の才:槍』という一点特化のスキルが、弓花という少女を今現在に至っても常時引き上げ続けているという証左でもあった。

ともあれ、戦闘は終了した。大型マシンのバスターウォーカーも一機のみがやってきただけで、それも狂い鬼が仕留めている。タツヨシくんケイローンたちもすでに戦闘を終えており、もうこの場に動いている敵はいなかった。

なお、タツヨシくんケイローンは現在ホーリースカルレギオンとともに大量に地面に突き刺さっている剣の回収に入り始めていた。スキル『ソードレイン』によって飛ばされた剣は自動回収されるモノではないため、大量に使用すると戦闘後の後始末が大変なのである。

そして、直樹と弓花は剣の回収をしているタツヨシくんケイローンたちの横を通って、風音たちのいるビルの一階へと向かっていく。戦闘を終えて治療に入れる状況となった今、いよいよ直樹の英霊フーネの出番であったのだ。

◎第七十階層 崩壊高層ビル 一階

「スペル・フルリフレッシュアンドフルヒーラー」

ボインボインボインボインボインボインボインボインボインボインボインボインボインボイン。

そこには天使がいた。天使の格好をしたチンチクリンがいた。その小さなボディには不釣り合いな豊満なる胸がそこにはあった。その癒しボイン天使が極上の癒しの光を与えて騎士たちの体と心と瞳を癒していた。

「おお、大きい」

「これが本当の白き一団のリーダー」

「大きい」

「実際大きい」

騎士団たちが、次々とフーネの浄化と癒しの術を受けて回復していく。そのボインなチンチクリンはもちろん直樹の英霊、レベル126のロリ巨乳回復士フーネである。

直樹に召喚された彼女は、騎士団の団員のナノマシン汚染や疲労、戦いによるダメージなどを根こそぎ回復させ続けていた。直樹のプレイしていたフーネは八方美人の癒しの天使。良い姉を演じるあまり、姉とかけ離れてしまった至高の存在がそこにはいた。

「はーい。順番にねー。大丈夫、みんな直してあげるからー」

心をくすぐる猫なで声とローリタフェイスにボインボイン。

その表情は、アイドルによくある『見せる』ということを意識した姿勢が強く見られており、誰かさんとは違ってお馬鹿な子という印象はまったくなかった。

そんな天使を前にしては、いかに禁欲的な騎士団とはいえ崇めるしかなかった。

まさに天使光臨である。彼らはこの薄暗い地獄の底で、ついに己の天使を見たのだ。ボインボインであったのだ。

そして英霊フーネは団員の回復を完了し、ついでに直樹たちも癒して消滅して、隠れていた風音と交代したのである。

つまりは、今回も英霊の存在を隠すためにフーネは風音が変身した姿という設定を通すつもりであったのだが……

「ハァ……」

「ハァ……」

「ハァ……」

「ハァ……」

「ハァ……」

登場した風音の一部を見て、あからさまなため息が大量に漏れた。それに思わず『魔王の威圧』を発動しかけた風音であったがグッと堪えた。

別に彼らも悪意があったわけではないのだ。ただあまりにも素晴らし過ぎたものを見てしまったがために、萎んでしまった(と思っている)ソレに絶望的な気持ちになったのと、そうさせてしまった自分たちの不甲斐なさが溢れて、ついつい口から漏れてしまっただけなのだ。それは誰が悪いというわけではなかったのである。

「カザネさん。あなた方には本当に助けられました。ありがとう」

ともあれ、団長であるモーリアが一歩前に出て、感謝の言葉を述べると、ラオンたち騎士団全員が膝を突いて頭を垂れた。その間にも、モーリアがとある部分を見て少しばかりため息をついていたが、風音は青筋を立てながらも「ま、まあ、いいってことよ」と返した。

紛れもなく感謝してくれている相手に「どこ見てんだ。こら」とはなかなか言えないものである。ましてやその視線は明らかに「自分たちのために申し訳ない」という気持ちが溢れていたのである。明るく元気で天真爛漫がウリな風音が、この世界に来て、初めて死にたいと思っていた。

なお、現在の騎士団の状況だが、先ほどの戦闘で死にかけた者やそれ以前に瀕死の状態の者がほとんどであったのだが、死には至っていなかったようで、英霊フーネの力により今ではみな完全に回復していた。

「ロンは残念であったが、白き一団と引き合わせてくれたのだ。ヤツに感謝せねばな」

「ハッ」

今回唯一の死者は救出に行き、罠にかかって死んだメンバーひとりのみであった。それは騎士団にとっては無念な話ではあろうが、状況を考えれば全滅であった可能性は高く、結果としては最善に近いものであったのだ。

それから風音は大きく息を吸って、吐いて、己の中の鬼を諫めると、気を取り直して口を開いた。

「そ、そんじゃあ、ひとまずは外の敵の残骸からアイテムを回収しようか。ああ、今はタツヨシくんたちが剣を回収してるところか。アレ、ネコババしないでよ?」

「いやいや。命の恩人のものを盗るなど、そんな恩知らずなことはせんよ。まあ、しかし……」

モーリアが外を突き刺さっている剣たちを見た。

風音がスキル『ソードレイン』に使用したのはサイタンソードとアダマンチウムソードを百本ずつ。普通に見れば、戦士にとっては極上と言っても良い剣がそれだけの数、そこには突き刺さっていたのだ。

それは確かに風音が警戒するのも当然のものであったし、白き一団の力の程が伺えるようだともモーリアは考えた。だが、モーリアは外の光景を見て「はて?」と声を上げた。

「カザネさん。その……まだ、お仲間がいたのかな?」

そのモーリアの問いに風音は「え?」と口にして、その視線を建物の外へと向けた。

「さて、終わったようだな」

一階の入り口には、とある人物が立っていた。

「あんたは!?」

懐かしい。だがその相手は、このダンジョン内ではもっとも警戒すべき相手だ。

故に風音や弓花、直樹はすぐさま身構えて戦闘の態勢を取った。それを察した騎士たちも一瞬で戦闘の状態へと至るダインス自由騎士団もすでに体調は万全。銃弾も大型の魔物の攻撃ですらも弾く大盾を前に構えて、槍を握って投擲の構えを取る。外にいたタツヨシくんケイローンたちも剣の回収を止めて、その相手に対して取り囲んだ。

そして、それらが僅かな間に行われたことに男は満足そうに頷いく。

「なるほど。さすがは、ここまで来た者たちではあるようだな」

そう言って男は笑い、風音がその人物の名を口にした。

「カルラ王……」

それは久しく地上に姿を見せなくなったカルラ王その人であった。黄金の翼をはためかせて、このダンジョンの主が姿を現したのだ。