軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七百八十二話 倒壊を防ごう

銃声響く場所へと風音たちがたどり着くと、そこは高層ビルディング一階の入り口広場であった。その周囲には機関銃付きの軍用車両が壁となって取り囲んでおり、無数のマシンナーズソルジャーたちが入り口に向かって銃撃を繰り返していた。

「風音、完全に囲まれてるわよ」

弓花がそう口にし、ラオンが「団長たちは……」と目を細めてその戦場を眺めるが、建物の入り口奥にこの場には不釣り合いな全身甲冑の騎士たちがいて、今は銃撃の雨に耐えているようだった。

「一階の奥に留まってるか。ラオンさん、あの奥に隠し部屋があったの?」

「はい。そうです。しかし、どうも見つかってしまったようですね」

ラオンがその顔に焦りの色を濃くしながらも、そう返した。

基本的に冒険者はダンジョン内にある隠し部屋をセーフルームとして使用はしている。そこは魔物の出現はなく、巡回ルートからも外されてはいるのだが、それでも実際に視認されてしまうと入り込まれてしまうし、場合によっては仲間を呼ばれて囲まれることもある。

「戦ってた時も思ってたんだけど、あのマシンナーズソルジャーって連携に特化してるんだね」

軍用車両が規則正しく入り口を取り囲んで並び、他にもマシンナーズソルジャーたちが隊列を組んで銃撃を行っている。中の団員は防御だけで手一杯のようで、まったく反撃ができていなかった。

「ラオンさん。騎士団の人って飛び道具はないの?」

「あります。全員が剣槍弓を使いこなせるよう訓練しておりますが、矢が尽きたのでしょうね」

ラオンが戦場を見回しながら、そう口にする。何体かのマシンナーズソルジャーがその場に倒れており、それらには確かに矢が何本も突き刺さっていた。

そして、そんなことを風音たちが口にしている間に、さらに自動車のエンジン音が遠くから響いてきたのだ。

「あ、また来た」

風音が声を上げた。機関銃付きの軍用車両がさらに二台やってきて、ドリフトで横につけながら囲みを強化していった。

「こりゃあ籠城は厳しいね。連絡でも取り合ってるのかな」

「どうするよ姉貴?」

直樹の問いに風音は考える。方法はいくつかある。中の人間は限界に近いだろうし、早く助けるにしてもどの程度自分たちの力を出してしまおうか……ということを風音が考えていると、弓花が何かに気付いて叫んだ。

「風音、不味い。騎士団の人たち、出てくるつもりよ」

「え、なんで?」

「これ以上、数が増えれば護りきるのは不可能と考えたのでしょう。団長たちは我々がここにいるのを知りませんから」

どの道、このまま留まってもやられるのであれば、いちかばちか囲みの突破を試みるつもりなのだ。それが彼らだけの状況ならばいざ知らず、風音たちがいる現状では無駄死にに等しい。

それ故に風音も「よし」とすぐさま判断し、仲間たちを見回しながら指示を飛ばす。

「私が道を作ってラオンさんと一緒に建物の中に入るから、直樹と弓花はマシンナーズソルジャーたちを一掃して。直樹はドクロ魔人化で行こう。あれなら連中にはほとんど無敵なはずだから」

風音の言葉に弓花と直樹が頷く。

「後は召喚体たちを呼ぶよ。ラオンさんはここから中の人に連絡して止めることはできる?」

「はい。それならば」

「おい、出てくるぞ」

直樹が叫んだ。騎士団が構え始めている。それを見てラオンが素早く背の弓と矢を取り出し、矢を空中に放った。

それは空中でキュルキュルと特殊な音を出しながら、ビルの方へと飛んでいく。

「今のは?」

「特殊な音を出すことで、連絡を取り合えるんです。よし、団長が気付いて下がっている」

そのラオンの言葉通り、ダインス自由騎士団が再び建物の中へと戻っていく。その様子を見ながら風音が手を挙げた。

「そんじゃ戦闘開始。まずは私からスキル・ソードレイン。刃竜、突撃!」

その風音の言葉とともに空中に大型格納スペースの収納入口である魔法陣が出現し、そこから剣の固まりが東洋竜のような形に集まって飛び出していく。

「一気に道を作るよ。一斉射撃ッ!」

そして風音がクンッとその腕を下ろすと刃竜は空中でバラケて、建物の入り口までの一直線に剣の雨を降らしていった。それはマシンナーズソルジャーや軍用車両へと突き刺さり、機械兵たちが次々と爆発を起こしていく。

「そんじゃあ、ラオンさんと私は『インビジブルナイツ』をかけてそのまま抜けていくから、弓花と直樹は右に分かれたのをお願い」

「左は?」

弓花の問いに風音は、

「そっちはユッコネエ、ケイローン、ホーリースカルレギオン、ゴー!」

その風音の指示で、ユッコネエとタツヨシくんケイローンが左の方の集団に走り始める。そしてタツヨシくんケイローンは持っていた不思議な袋からアダマンチウムの骨を空中に散布し、それが集まって 巨大な骨の集合体(ホーリースカルレギオン) へと変わっていく。

その様子に納得した弓花がクロマルとともに駆け出し、直樹もスキル『影世界の住人』と『暗黒の呪印剣士』を発動させ呪印を刻んだアストラル体と化し、その上に狂骨の王衣を纏い、さらにはダークマターを宿した双剣の力により、影をその身に取り込んで上位精霊化を行う。

その物理域にまで濃度を増したアストラル体である今の直樹はドクロ魔人化(風音命名)と呼ばれるもの。物理攻撃を無効化し、闇の力を存分に振るう存在であり、漆黒の翼をはためかせながら、銃弾をすり抜けてマシンナーズソルジャーたちを切り裂いていく。

(まあ、骨子に狂骨の王衣を使用しているから時間制限はあるけど……この戦闘の間なら問題はなさそうだね)

風音はそう考えながら自分も行動を開始する。中心の剣で作られた一本道をスキル『インビジブルナイツ』で身を隠し、ラオンとともに駆け抜けていく。途中、何度か流れ弾が風音たちの周囲を飛び交ったが、スキル『暴風の加護』によって回避し、問題なく建物の入り口までたどり着いたのである。

「よし、抜けた」

風音が建物入り口に入ってすぐに『インビジブルナイツ』を解くと、騎士団たちはざわついたが、団長であるモーリアはまるで分かっていたかのように自然に「ラオン、よく戻ってきてくれた」と声をかけてきた。

「カザネさんも助かりました。まさか、ここで助けられるとは」

そう口にするモーリアの顔は、見ている方が泣きたくなりそうなくらいに焦燥しきっていた。他の団員も軒並み、ほぼ死に体である。本当にギリギリだったのであろうことが見て取れた風音は、すぐさまラオンに声をかける。

「礼は後で。ラオンさんは抑制剤を」

「はい。団長、数は少ないですが、重傷者からこれを」

「それはあのリビングアーマーたちが持っていたものか?」

モーリアの問いにラオンが頷く。

「特効薬だそうです。それと結晶体をすぐさま廃棄してください。あれが呪いの元です」

「なんだと? クソッ、アガン、ローダ、外に投げ捨てろ」

「ハッ」「ハッ」

団員の中でも比較的動ける者たちが奥の袋を手に取り、そのまま窓の外へと放り投げた。それを見てから風音は外へと視線を移すと、戦闘は継続中のようである。マシンナーズソルジャーたちの連携により、思ったよりも戦闘は優勢とは行かないようだった。

「数はまだ多いか。いや、あれは……何?」

さらに離れた建物の奥から巨大な何が風音には見えた。それは巨大な円盤にタコのような口と二本足が付いたものであった。

「ありゃ、不味い」

「知っているんですか?」

難しい顔をした風音にラオンが尋ねる。

「カンナさんと達良くんに聞いてたヤツだ。あの口みたいなのから砲弾を撃って建物を破壊するの」

その言葉にラオンもモーリアも目を丸くした。どうやら、ここまで遭遇していなかったようである。

風音が聞いた達良くんの話によれば、フューチャーズウォーでは、目の前でド派手に倒壊する建物などもウリのひとつであったそうなのだ。そして倒壊を行うことが可能なエネミーのひとつが、今風音たちの元へと向かってきているバスターウォーカーと呼ばれるマシンである。

ならばと風音は人差し指をそのマシンへと向けて、声を上げた。

「狂い鬼! やられる前に倒しちゃえ!!」

「グガァアアアアアッ!!」

そしてバスターウォーカーの前に、瞬時にベヒモス・ビーストに乗った狂い鬼が出現して体当たりをかける。同時にドンッと音が鳴って、バスターウォーカーから放たれた砲弾が近くの建物に直撃し倒壊していくのが見えた。

「ぎ、ギリギリだったみたいだね」

こわーと風音が言いながら周囲を見回した。

戦闘は未だ継続中。しかし、劣勢ではない。であればと戦いは仲間たちに任せ、風音はひとまず団員たちの治療に当たり始めたのである。風音たちの登場に安堵し、気力が消えたのか、倒れている団員もすでにいる。こちらも早急に対応する必要があったのだ。