軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七百八十一話 地雷原を越えていこう

「あれ?」

戦闘終了後。弓花たちがひとまずは風音とラオンの元へと戻ってきたのだが、そこでは風音がスキルリストを見て首を捻っていた。その姉の不自然な様子に直樹が何事かと首を傾げながら尋ねる。

「ん、どうしたよ姉貴?」

対して風音は「むー」と眉をひそめながら口を開いた。

「いや、スキルが手に入らなかった……んだけどもさ」

「最近は重複も多いみたいだし、そういうこともあるんじゃないのか?」

「そうなんだけど。というか、なんか……少しおかしいかも」

「風音、どういうこと?」

弓花の問いに風音は「多分だけど……」と前置いてから話を続けた。

「こりゃあ、経験値入ってないね」

「え?」「本当に?」

それには直樹と弓花が同時に反応する。

「僅かだけど、倒した後の何かを吸い取る感覚……アレが感じられない。ロボットなら魂がないだろうし、多分異邦人の設定的にレベルが上がらない相手なんだと思う」

風音が慎重に言葉を選びながら、そう結論付けた。

「経験値なしでドロップもないとか……その上、説明なしの呪いかよ。正直バランス悪いだろ、これ?」

「洋ゲーならそういう意地の悪い仕掛けもないわけじゃないけどね。死にながら罠の場所を調べてく死にゲーなんて言われているのもあるわけだし。まあ、そもそもダンジョン自体、ゼクシアハーツにはなかったものなんだけどね」

風音の説明に、直樹は「けどよ」と返す。

「この世界で、ここが一番ゲームっぽいと思うんだけど?」

「まあ、それはそうだけど」

それには風音も頷いた。続けて弓花も「実は私も気になることがあるんだけど」と挙手して話を加わる。

「あの銃弾や爆発、思ってたよりも厄介かも」

「どうしたの?」

眉をひそめる風音に、弓花が拾ってきた銃や手榴弾をアイテムボックスから取り出して見せた。

「これ、まあやっぱり私たちには使えないんだけどさ。弾丸や爆発がただの物理現象だから 魔力抵抗(レジスト) を抜けるし、それに」

弓花が自分の足を見せた。

「鎧が硬いから弾いてくれて、私には問題なかったんだけどね。予想以上に弾がバラけてるのよ。避けたと思っても何発か当たっちゃってた。軽鎧の直樹だと結構ヤバいかも。風音も頭部は剥き出しでしょ」

その言葉に直樹の顔が難しいものとなり「かもなあ」と頷く。今の直樹の鎧は竜骨の軽鎧だ。狂骨の王衣を纏った状態ならばともかく、その剥き出しの部分が多い状態では弾丸が当たる可能性は否定できなかった。

「ギャオとジローくんも厳しいって言ってたしね。ちなみにラオンさんたちはどうやって攻略したの?」

風音の問いに、タツヨシくんケイローンに乗っていたラオンが「そうですね」と口を開く。

「我々は大盾と槍で陣形を組んで倒しましたが。その、特には苦戦と言うほどでは。爆発には多少難儀しましたが、その爆発玉も弾けば良いだけでしたし」

どうやら正攻法でいったらしい。手榴弾も返されてしまえば意味はないし、そもそも経験値の有無はプレイヤーと一部の存在だけのもので、ラオンには当然分からないことであったので、問題にも感じていないようである。

「地雷は……その装備なら問題ありませんか」

「あの地面に爆発するヤツですか。そうですね。踏んでダメージは負った団員はおりましたが、そこまで深刻ではありませんでした」

弓花はラオンの姿を見て、納得の顔をする。

ダインス自由騎士団は、基本 全身甲冑(フルプレートメイル) 姿であったのだ。地雷の爆発が 魔力抵抗(レジスト) できないとはいえ、物理攻撃の防御魔術も当然付与されているため、深刻な状態になるほどではなかったのだろう。

なお、その 全身甲冑(フルプレートメイル) にも重量軽減の付与魔術はかけられているのだが、それでも先ほどの弓花のような機敏な動きはできず、ラオンは先ほどから弓花の鎧に着目しているようだった。

「軽鎧程度の装備での特攻は難しいか。まあ、速攻で仕留めるなんて真似しなければ十分に対処は可能そうではあるね。ともあれ、倒したマシンナーズソルジャーを調べよう。抑制剤があるなら取っておかないといけないし」

「おう。じゃあ、行くぜッ!」

そう言って直樹が一歩を踏み出して、

カチッ

と、音が鳴った。

「え?」

「あ、馬鹿」

その足下には地雷があったのだ。道の端の枯れた草木の隠れた場所にそれは設置されていた。

「あ、姉貴?」

ギギギギギギギ……とまるで壊れたブリキ人形のように首を後ろに振り向く直樹に、風音はすぐさま『水晶化』のスキルで地雷を水晶に変える処理を行い、爆発を無効化した。

「た、助かったぜ姉貴。姉貴はやっぱり俺の女神様だ」

「え、キモい」

「いや、アホでしょ。もっと慎重になりなさいよ」

素直に引いた風音と、弓花の罵声がその場に響き渡った。

ともあれ、それからすぐさま風音たちは、倒したマシンナーズソルジャーを調べ始めた。しかし見つかった抑制剤は併せて五つと少なく、とても人数分に足りるものではなかった。

なお、地雷に関しては刺激しなければ落ちているものを入手することも可能ではあったが、その爆発力を考えると正直微妙なシロモノであると言わざるを得ないようだった。

ともあれ、抑制剤を全員分入手するのは困難と悟った風音たちは、英霊フーネでの浄化で対処することを決め、そのままダインス自由騎士団の待つ場所へと向かうことにしたのである。

**********

そして、それは目的地に向かう途中のことであった。

目の前で爆発が起こり、ヒッポーくんがその場で吹き飛んだのだ。それを見ている風音たちは驚きよりも呆れ顔という感じであった。

「また地雷原か。どうも道路以外は大体こんな感じっぽいなあ」

風音がボツリと口にする。どうやら舗装されていない地面の大部分は地雷原となっているようだった。

突破は不可能ではないが、地雷の除去が必要で、結局は舗装された道路に沿って回り道をせざるを得なかった。

かといって空を飛んで……と思って風音が飛んでみたところ、ビルのあちこちに 自動機関銃(セントリーガン) がセットされており、危うく蜂の巣になるところであった。

「姉貴、やっぱり基本は道路で、剥き出しの地面は慎重に調べながら進むしかないって」

「ぬぅ。けどラオンさん、この近くなんだよね」

「はい。もうまもなくです……が、口惜しいですね。もう一歩なのに。探索時はそこまで気にしていなかったのですが」

風音の言葉にラオンが悔しそうに頷く。だが、その声には若干の焦りはあるものの、年長者として、このエリアの経験者として風音へのサポートを怠らぬようにという気概が篭もっていた。

さすがに空中移動した風音が 自動機関銃(セントリーガン) に撃たれまくったのには慌てたようだが。

「道路は地雷が少しバラまかれてるときはあるけど一応安全。剥き出しの地面は地雷原の可能性ありと。マップに印付けとかないといけないね。後で地雷が追加されてないと良いけど」

「慎重に見てくしかないわね。それは」

弓花も周囲を警戒しながら進み続ける。そこにブロロロロロと自動車らしきものの走る音が聞こえてきた。

「姉貴、また来たぞ」

「ええい。しつこい。メガビーム!」

その次の瞬間には機関銃付きの軍用車両が建物の角から飛び出してきて、同時に風音の目から出たビームによって焼かれて爆発した。そして軍用車両から投げ出されて活動停止しなかったマシンナーズソルジャーに対しては、弓花が闘気を飛ばす槍術『雷走り』を放って破壊した。

「ハァ、これはこれで神経使うよね」

「まあA級ダンジョンの第七十階層に相応しい難易度なのかもしれないけど。六十階層とは正直違うわ」

そう言い合ってさらに先に進んでいったところ、次第にどこかしらから騒がしい音が聞こえてきた。

「何?」

「あれは……仲間がいる隠し部屋の方ですね。この地面を通れれば近いのですが」

ラオンの顔に焦りが見える。とはいえ、地雷原を避けるならば、迂回の必要があって……

「いや、こうなりゃ一気に行く」

「風音?」

風音が一歩踏み出した。それから弓花の疑問の声にも答えず、地雷原の手前に風音の虹杖の先を突かせると「スキル・ゴーレムメーカー・ブリッジ!」と言ってスキルを発動させたのだ。

「姉貴、何をするんだ?」

「進めない飛べない……なら進める私が道を造ればいいんだよ。ああ、最初からこうしてりゃあ良かった」

杖から魔力が放たれ、モリモリと地雷原から土塊が盛り上がっていく。また、それに反応し地雷がいくつも爆発を起こしもしたが、破壊された箇所はすぐさま修復されていき、瞬く間に石橋が形成していったのである。

「これがゴーレム使いの力?」

地雷原を横切る見事な橋が見事にできた。それにはラオンも呆気にとられたが、すぐさまその表情を引き締め直し風音を見て、風音もラオンの顔を見て頷きあった。

「そんじゃあ、さっさと行くよ」

その先からは銃声が聞こえる。

それは戦闘が行われているということだが、同時にまだダインス自由騎士団が生存しているという証明でもあった。そして、風音たちはその戦場へと一直線に走り出したのである。