軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七百七十六話 別ゲーの話を聞こう

「なるほどな。シンディの 補助腕(サブアーム) みてえな足を使って移動させるのか。下についてるのは車輪だな。まあ平地ならそっちの方がスピードは出るかもしれねえな」

風音の用意した図面を見ながら親方が唸る。

その図面に描かれたものは大型蓄魔器を備えた高速機動を行うサポートゴーレムであった。魔術師であるゆっこ姉や、召喚師であるティアラが戦闘中に十全に魔術を行使できるようサポートする究極の台座を風音は親方に依頼してきたのである。

「まあ車輪を動かすのもその足でなんだけどね。汽車みたいな感じに車輪を動かすんだけど」

「汽車なあ。北のドワーフの国で走ってるヤツだったか」

「うん、それそれ。んで、台座の後ろに大型蓄魔器を置いてね。一応装備継続ってことでヒヒイロカネのチェーンを当人と繋いどけば魔力については放出もされないだろうし」

「なるほど。まあ、上手く行くかは分かんねえけど、試してみる価値はあらあな」

蓄魔器の難点は装備から外すと時間経過で蓄積した魔力が放出されてしまうことにあった。それを解消するためのアイディアがヒヒイロカネチェーンで繋いでの装備状態の継続である。

「まあ、こっちにゃヒポ丸くんやタツヨシくんの蓄積がある。製造自体は問題はねえな」

「一応、これはティアラ用で運用を試して問題なければゆっこ姉……じゃなくてユウコ女王様用のも造るつもりなんだけどね。ともかく蓄魔器の量が多いから大型になると思うけど」

「あーあの人なあ。ホント際限ないからな」

風音の言葉に親方も肩をすくめた。ちなみにゆっこ姉のオーダーである蓄魔器の総魔力量は8000の大台に乗る予定とのことだった。その分の蓄魔器の大きさも相当なものとなるし、蓄積できる量は増えても当人の魔力回復量自体は変わらないのだから蓄積する期間も相当なものとなる。そもそも、そんな魔力を何に使おうというのかという問題もあった。大陸制覇に乗り出すつもりだと言ってもおかしくはない武装なのだ。

「ま、まあ、今の時点でもゆっこ姉に勝てる人なんていないし、今更なんだけど」

その風音の言葉には親方が苦笑した。

「言っちゃあなんだが、おめえも似たようなもんだぜ?」

「んなことないよ。真面目にやったら私はゆっこ姉には勝てないもの」

風音の言葉に親方は意外そうな顔で「そういうもんなんかね」と返すが、風音は少なくとも魔術防御すらも貫くゆっこ姉の攻撃には英霊ジーククラスの防御力がなければ耐えられないと認識していた。継続される灼熱の炎の地獄の中で、爆炎竜サラマンドラと召喚剣レーヴァテインの物理攻撃を防ぎ続けることは今の風音でも不可能だ。もちろん、戦う気はないのであくまで風音の頭の中だけの話とはなるが。

「ま、女王陛下のご命令とあらば従うしかねえわな。そんじゃあティアラにゃあ、ちょいと協力してもらうぜ。乗り心地なんかも確かめてもらいたいしな」

「はい。是非とも」

ティアラは拳を握りしめて、そう返した。ゆっこ姉の前座であるとはいえ、風音が自分のために用意してくれるものである。鍛え上げた腹筋も引き締まろうというものだった。

その横で風音は図面を見ながら少しだけ不満げに呟いた。

「うーん、本当なら 雷神砲(レールガン) も設置したいんだけどね。十丁ぐらい」

「おめえさん、誰と戦争するつもりなんだよ。つか、ありゃあ腕扱いじゃねえといけねえんだったよな」

呆れ顔の親方の言葉に風音が「そうなんだよねぇ」と返す。風音制作の義手は基本的にゲームの仕様をそのまま実現するというウィンドウの機能に依存しているため、あくまで義手として使った場合にしか 雷神砲(レールガン) 、及び 雷王砲(レールキャノン) は起動することはない。

ジンライの場合はそのまま義手、ゴレムスキャノンの場合は、レームが風音のロクテンくん操縦と同様に一時的に自身の腕の機能を奪って義手相当として使うことで使用可能となっているのである。

「ルイーズさんもオルトヴァさんも 雷神砲(レールガン) の使用術式の解析は転移以上に難儀だろうって言ってたし、色々と難しいところなんだよね。まあ、アレに関してはその方がいいのかもしれないけどさ」

「かもな。あれが大量に造られた日にゃあ国がいくつも消えそうだ」

性能だけならば強力な術者でも抗せる術は放てるだろうが、 雷神砲(レールガン) の恐るべきところはただのゴーレム魔術を少しかじっただけのレームがランクSクラスの戦闘力を容易に手に入れられる汎用性の高さにある。

それは 雷神砲(レールガン) を知っている者にとっては共通した認識であったが、現時点において制作は風音しかできず、使用素材も高額で、おまけに義手として扱う必要があるという制約もついているために、ひとまずは問題なしとなっていた。

「とりあえず、まずは図面通りに骨組みから造ってみらあな。できあがったら報告するぜ」

親方はそう言って図面を詳しく眺め始め、風音たちはそのまま工房を出ることとなる。そして風音はティアラと工房の前で別れると、タツオと共に次の目的地である冒険者ギルド事務所へと向かうのであった。

◎ゴルディオスの街 冒険者ギルド事務所隣接酒場

「誰だ、こいつ?」

ギャオが首を傾げて、それを見ていた。待ち合わせていた風音が少し遅れてやってきたのはまあ良しとしても、その横にドラゴンの仮面を付けた黒い甲冑姿の何者かがいたのがギャオには分からなかった。見知らぬ相手である。そうしてジロジロと眺めたギャオの目の前で、その黒い甲冑男の頭部が開いたのである。

『私ですよギャオ』

くわーっと鳴きながら、タツヨシくんツインソードの頭部からタツオが出てきた。それを見て「うぉっ」と叫んだギャオだったが、中から出たのがタツオであるのを知ると安堵のため息をついた。

「タツオか。ビビらせやがって。なんだよ、そのキラキラした姿を隠すのは止めたんじゃなかったのかよ」

『隠れてませんよ。けどこの中は快適で居心地が良いのです』

タツオがくわーっと鳴いた。タツヨシくんツインソードの頭部は普通の頭よりも大きく幅をとっており、タツオが乗り込むのには問題なかったし、戦闘でも支障ないようにベルトなどの固定具も付いていた。

その横で風音は「まあ、敢えて注目させる必要もないしねぇ」と答える。

「別にタツオを隠すつもりはないんだよ。もう大体は周知されてるだろうしさ。けど、うちの子って可愛いし、新規さんも多いから、タツオの愛らしい姿を見たら良からぬことを考えるのもいるだろうし」

「まーそうだな」

ギャオと共にいたジローがそう答える。タツオの素性を知らずともクリスタルドラゴンの子供と言うだけで狙われる要素は十分にある。撃退はできるし、実際にそういう相手はしているが、撃退しすぎているのも問題ではあった。

「けど、タツオの方はいいとしても、そっちのタツヨシくんも変わってないか。前に見たときにはなんか宝石みたいな感じだったけど黒いし」

ジローは直樹と二刀流の修行を白の館の中庭でしているために、タツヨシくんツインソードの制作途中の姿も目撃していた。

その時には装甲部の半分以上が宝石となっていたのだが、今のタツヨシくんツインソードは全身が漆黒に包まれた姿となっていた。

「うーん、こっちもさすがにねえ。元々は館の守りにしか使う予定はなかったからってのもあったから。こうして外に出すにはあの姿は目立ちすぎるからね。偽装してあるんだよ。ほれ」

風音がコンッと黒い装甲を叩くと黒炎装備の装甲の一部が消えて、中から宝石の装甲が現れた。アダマンチウム装甲を風音のスキル『宝石化』で強化したジュエルアダマス装甲である。

そもそも白の館の中でもちょっと目立ちすぎるんじゃないかな……という極めて常識的な言葉を飲み込んだジローの横では、ギャオが「なるほどなー」と口を開いていた。

「おれっちも事情知らなきゃ間違いなく襲うね。マジで。そんで当分は豪遊するぜ」

「いや、知らなくても襲うなよ。まあ、確かにジュエルナイトみたいなのが目の前に出てきたら一か八かで狙うかもしれないけどよ」

ジローが口にしたジュエルナイトというのはジュエルラビットと同系統の、倒せば笑って暮らせるほどの財を手に入れられる魔物である。

「その腰に下げてる剣だけでも襲う価値はあるっての。もっとも白き一団に手を出すようなバカはもうこの街にゃあいねえだろうけどな」

「そうあってほしいもんだね」

風音は心からそう口にした。狙う相手はいるのである。ともあれ風音は一段落付いたところで、この場に来た目的を口にした。

「それでさギャオにジローくん。七十階層から先のフィールドのこと教えてよ。カンナさん、ちょっと引っかからなくてさ」

風音は元々カンナに話を聞くつもりではあったのだが、あいにくカンナは 金翅鳥(こんじちょう) 神殿探索から地上に戻った後、どこかに行ってしまったようで捕まえられなかったのである。

その風音の問いにギャオとジローが顔を見合わせてから、共に風音へと向き合った。

「んー、そうだなあ。まあ、情報提供自体はリーダー同士で共有しようって話にはなってるみてえだし問題はねえんだけどよ。おれっちらにもよく分からねえんだよ」

『分からない……ですか?』

タツオがタツヨシくんツインソードの頭部でくわーっと鳴きながら首を傾げた。それにギャオが「そうなんだよ」と返す。

「なんか崩れた四角い建物が出てきてよぉ。魔物については人間っぽくて、リビングアーマーの一種なんかね。カンナはフューチャーズウォーのマシンナーズソルジャーだって言ってたけど聞いたこともねえんだよな。変な飛び道具使ってきて、結構強かったぜ」

「ああ、正直防御力はそこまででもないんだけどさ。連携を取るんだよ。その変な……北の方の魔銃って言ったっけか? アレに似た武器も使ってきてさ。正直マジで死ぬかと思ったぜ」

ジローとギャオが「参った」と言い合って、共に頷き合っていた。

「は?」

一方で風音はその言葉に目を丸くしていた。聞き捨てならない単語がいくつも聞こえてきたのである。

「フューチャーズウォーに四角い建物に……銃? なにそれ?」

フューチャーズウォー。それはゼクシアハーツを作ったスタッフたちがゼクシアハーツ以前に発売したゲームタイトルだ。それは荒廃した近未来が舞台のオープンワールドRPGの名であった。