軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七百七十七話 汚染には気を付けよう

◎ゴルディオスの街 白の館 来客室

「これが、私たちが遭遇した敵の武器と本体だよ」

そう言ってカンナが不思議なリュックから、ふたつのものを取り出して、その場に置いた。アイテムボックスではなく不思議なリュックから取り出したのは、出した片方のものの重さがそれなりにあり、重量制限に引っかかっていたためである。

「おお、ちょっとカッコいいねえ」

そのウチのひとつを風音が手に取って眺める。それはカンナたちオーリングが七十階層付近で戦った敵から手に入れた武器『銃』であった。

そして、今この場にいるのは風音に弓花、直樹にオロチとカンナというプレイヤー組のみである。本日はカンナからの呼びかけにより、七十階層で遭遇した『フューチャーズウォー』というゲームのものらしき敵の検分をプレイヤーだけで行う運びとなっていた。

「うーん。先っちょがレンズみたいじゃなくて穴ってことは実体弾かな?」

そう言いながら、風音がスチャッと人のいない方へと銃口を向けて構えたが「む?」と眉をひそめた。その様子に弓花や直樹が「なんだろう?」と首を傾げ、風音はカンナに口をとがらせて尋ねる。

「ねえ、カンナさん。なんか銃に付いてる液晶モニタにERROR表示が出ているんだけどこれって使えるの?」

その言葉にはカンナが少し困った顔で「多分、無理かな」と返す。

「指紋認証かID認証か分からないけど、その武器って連中が使ってるとき以外はまったく動かないんだよね」

風音の持っているのは未来式の銃であった。射出されるのは実弾のようだが、その構造は電子制御されており、少なくともカンナが試したところでは使用不可能であるとのことだった。

「分解は?」

「そうだね。したのもあるよ。けど……まあ、こっちもそうなんだけど」

カンナが並べてある人型の機械を指差した。それはマシンナーズソルジャーというフューチャーズウォーのシナリオ後半に登場する機械兵である。

「外装が何かの合金みたいなんだけど、溶かせないし、そのまま使うぐらいしかできなさそうなんだよね。かといって、その割にはあまり硬くないし使い道がない。んで、中に詰まってる電子部品は正直手に負えなくてね。少なくとも私たちの世界のものともかなり違うっぽいから、これもまたサッパリで。けど、この可動部の油圧シリンダーみたいなのの構造とかは使えるのかな? 技術的な観点で」

カンナが外れた腕を持ち上げて尋ねるが、当然風音もそれが有用なものなのかは分からない。

「なんか、こう未来的なパーツでスゴいことできそうなんだけど」

「こちらで扱えるものならともかく、正直思いつかないな」

「私、機械苦手だからなあ……」

直樹とオロチ、それに弓花もお手上げという感じであった。

「そっか。うちのスポンサーに聞いてみたら、風音たちに持ってけって言われたんで、一応こいつはそっちに提供するけどね」

「スポンサー?」

「うん、そう。アングレー・メッシっていうリンド-王国の商人は知ってるでしょ? 彼、私たちオーリングの後援をしてくれてるんだよね」

「ああ。あの人、そんなこともしてるんだ」

風音が感心した顔をしているが、貴族や商人が冒険者の後援をするというのは、この世界ではよくある話ではある。ただカンナがひとつだけ話してないことがあるとすれば、アングレーがオーリングのスポンサーとなっているのは事実ではあるが、カンナはその以前からアングレーをパトロンとしていて、そもそもオーリングに入ったのも風音たちとの接触が目的であったということであった。

もっともそのアングレーも今ではゆっこ姉に完全に取り込まれているため、現時点においてはカンナに後ろめたいことはもう何もなかった。

「あの人、いつの間にかユウコ女王陛下と繋がってたみたいで」

「ああ。それでこっちに回せって話になるんだ。とはいっても私、PCのコードを繋げるのも無理だし、OSだってアップデートすることぐらいしかできないよ」

「え、スゴい。パソコンに触れるんだ」

風音の言葉に弓花が戦慄していた。ちなみにふたりともスマートフォンは普通に扱える。その辺りの状況を元々知っていた直樹はスルーしていたが、攻略サイトをPCメインで更新していたオロチは「え、女子高生ってそんなんなの?」という顔で驚いていた。

「後は持ち帰れなかったけど、デカいロボット兵器なんかも出てきたんだよね。そっちも中身は似たような感じだったけど」

その言葉に風音が唸った。勿体無い気もするが、ゴーレムとは勝手が違いすぎて、どうにも扱える気がしないのだ。

(まあ、そりゃ未来のスマホとかタブレット渡されても、電源はいらなきゃどう活用しろって話にはなるけどさあ)

そんなことを風音が考えていると、その後ろでオロチが挙手をした。

「そういえば思い出したんだが……」

「何?」

「いや、確かフューチャーズウォーのゲームの世界観って……大汚染戦争とか言う……核兵器とかを別の何かに置き換えたような戦争の後の設定だった気がしたんだが」

風音が眉をひそめた。

「どゆこと?」

この場においてフューチャーズウォーをプレイしたことのあるのはカンナが本当に触りでやったことがある程度である。

何しろゼクシアハーツが発売したのが風音の体感時間で五年前、フューチャーズウォーが出たのはさらにその五年前である。つまりは十年も昔のことなのだ。その上にフューチャーズウォーはZ指定のゲームなので、現時点での風音でも購入はできないものだった。

そのような事情もあり、オロチもゲームそのものはプレイしたことがなかったのだが、世界観の設定自体はインターネットを通じて一応目は通していた。

「いや、なんかゲームシステムに汚染メーターとかがあったような気がするんだ……うろ覚えなんだが」

「汚染メーター? それってどういうシステムなの?」

「確か、貯まってくと画面が歪み始めて最終的に……死ぬ?」

オロチの言葉にカンナと風音がそれぞれカランと腕と銃を落とした。それから風音が顔をこわばらせながらカンナに尋ねる。

「その……メーターは?」

「いやいや、始めて知ったよ。私、説明書とか読まないし。そういえば、なんで死んだんだろうとか思った記憶が……それ以降やってなかったし。というか、どういうことなのオロチ?」

カンナの問いにオロチも戸惑いながら答える。

「いや、俺だってやったことはないんだからプレイしたお前が知らないとなると……な。そもそもフューチャーズウォーは、ゼクシアハーツスタッフの造ったゲームだが、MODの素材に流用されたものがあるということぐらいしか知らないんだ」

そう言われてカンナがオロチを「えー」という顔で見た。オロチにしてみれば、唯一のプレイ経験者がその状態なのが「えー」という感じではあったが、口べたなオロチは何も言えなかったのである。

その後、風音がフューチャーズウォー経験者である達良くんの記憶を持つ譲渡クエストナビへとゆっこ姉経由のメールで質問を送ったところ、メーターは街にあるだろうということと抑制剤を入手すれば汚染は直るだろうとのことであり、ひとまずはカンナにその探索を行うように連絡をしたのであった。

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第六十六階層

「まあ、そんなわけで今回は七十階層まではいかないけど、結構危険そうだからカンナさんたちの報告を聞いてから行動しようと思うよ」

それは 金翅鳥(こんじちょう) 神殿探索の途中のことである。風音が白き一団全員に探索前にカンナたちと話したことを移動中に説明していた。

「ふーむ。ようするに毒の地帯があるという言うことか?」

ジンライの問いに風音が「そうみたいだね」と返す。

「汚染が濃い地域もあるらしいから気をつけないと。まあ、そのためにはまずは汚染メーターってのを見つけないといけないらしいけど……と、アレ?」

「どうした?」

話をしている途中で風音の視線がとある場所に向けられていた。それは風音のスキル『直感』が働いた結果だ。目の前の壁に何かしらの違和感を感じたのだ。

「いや、アレ? むむ、ちょっと待っててね。せい、スキル『ドリル化』!」

そう言って風音がドリルと化した風音の虹杖をその場所へと突き刺すと、案の定と言うべきか、壁が崩れて隠し部屋が出てきたのである。

「あれえ? この隣って通路だったはずだけど?」

マップウィンドウを見ながら弓花が首を傾げたが、実際に隠し部屋があるのは見ての通りである。可能性としては他の階同様に構造が変化した……ということであろうが、ともあれ風音たちがその中へと入っていくと、そこにはやたら豪奢な宝箱が置いてあった。

そして、風音がその宝箱を開けると、その中にはとあるアイテムが入っていたのである。そのアイテムの名を『柩に飾るローゼ』といい、それは棺(柩)シリーズ装備の能力を増幅することができる薔薇型の強化アイテムであったのだ。