軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七百三十二話 探索準備をしよう

仮面のふたり組が来てから四日が経った。

その間に風音たちは闇の森探索のための準備に二日をかけ、それから王都コーダをサンダーチャリオットトレインで出て、さらに二日をかけてロードゾラン大樹林の手前のメゾトルの森の中へとたどり着いていた。

◎メゾトルの森

「久方ぶりーだけど、まあ普通の森だね」

「そりゃあ、普通の森だからしょうがないね」

メゾトルの森の中で風音と弓花がそう言い合う。

とはいえ以前に来たメゾトルの森と今風音たちがいる場所は、実は相当に離れている。そこはハーディ・レーンによって教えられたエンジェルヘア・デトネイターの生息地の一歩手前の地域であったのだ。

なお、ロードゾラン大樹林はアモリア領内ではないので、ミサリは今回は一緒に来てはいない。

立場ある身で国を離れるわけにも行かないし、ミサリはライルと違って身の程をわきまえているので闇の森に挑もうなどとも思ってはいなかったのである。

「さーてと…そんじゃあ準備しちゃうから、ジンライさんたちは周辺を見回ってきてもらえる?」

「承知した。ライル、ナオキ、行くぞ」

そう言ってジンライが直樹たちを連れて森の中へと入っていくと、風音はちゃっちゃと拠点造りの準備をしていく。

まずは最初にゴーレムメーカーで穴を掘り、そこに『真・空間拡張』の大型格納スペースから風音コテージを呼び出して入れて埋める。それから水珠を使ってその上に偽装用の池を作り出していった。

それから風音は、ジンライたちが戻ってくるのを見計らってミーティングを行うことにした。

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「そんじゃあ、とりあえずはここを拠点にするよ。直樹は刻印を刻んできた?」

「ああ、問題ない」

風音の言葉に戻ってきた直樹が頷いた。直樹は見回りついでにここより離れた場所に刻印を刻んできていた。それを疑問に思ったユーコーが挙手して尋ねる。

「風音、ここに直には戻らないの?」

「うん。隠してはいるけど、ここから出入りはするから入り口に匂いは付いちゃうでしょ。戻ってきた途端に匂いに気付いて待ちかまえてた魔物とはち合わせても困るから、一応場所は離してるんだよ。それに 帰還の楔(リターナーズ・ステイカー) の転移で一緒に闇の森の魔物も引っ張ってきちゃうかもしれないしね」

帰還の楔(リターナーズ・ステイカー) の長距離転移は範囲指定であるので、タイミングによっては戦っている魔物も一緒に連れてきてしまう危険性もある。また匂いをたどってきたのかは不明だが、以前に風音たちが戻ってきたときにはフォレストロブスターが池で泳いでいたりもしたのだ。その風音の言葉にユーコーも「ああ、なるほど。了解したわ」と言って頷いた。

「そんで、今回は全員で……まあ、浅いところ中心に闇の森に挑むつもりだけど。タツオたちにはこのアダミノくんに乗ってもらうよ」

そう言って風音がスキル『真・空間拡張』の大型格納スペースから、巨大なメタリックグレイの 全身鎧(フルアーマー) ミノタウロスを呼び出した。

それは以前までの黒炎装備であった黒ミノくんにアダマンチウムの鎧を着せたもので名前もアダミノくんと改められている。

このアダマンチウム製の鎧は、黒炎装備の形をそのままに、あまり使われないアダマンチウムの斧をゴーレムメーカーの金属操作で溶かし、二日かけてアダマンチウム製の鎧として作り替えたものである。

もっとも、背の形状に関しては今までとはかなり違っていた。

「おーし、そんじゃあ乗るぜ」

事前にゴレムスキャノンに搭乗し準備していたレームが出現したアダミノくんの背に乗り、アタッチメントの穴に下半身を差し込むと、そのまま身体をグルリと一回転させて接続したのだ。

また、ゴレムスキャノンのアタッチメントの周囲は人が乗れるような柵付きの台座になっていて、その見た目はパレードで象が背負う鞍のような形となっていった。

「わたくしたちはこのアダミノさんの上に乗って移動するのですね」

ティアラがそれを見上げながらつぶやくと風音が頷く。

「うん。ティアラやエミリィ、レームやタツオはこれに乗って移動砲台として動いてもらうつもりだよ。後衛が固まってると狙われやすいし、アダミノくんのパワーと付与魔術なら緊急回避も可能だからね」

マッスルクレイのパワーがあれば、それだけの人数を乗せても問題なく移動ができるし、アダミノくんは付与魔術のテレポートを使えるので緊急時に短距離転移で逃れることもできる。

また、腕は前回同様に 刺股(さすまた) の武器腕になっており、何かあったときに支え棒的な役割としても使用可能であった。

「そんでアダミノくんの護衛には直樹とお爺ちゃんで」

「了解だ」

『うむ。任せよ』

召喚騎士であるメフィルスの力に加え、 帰還の楔(リターナーズ・ステイカー) 持ちの直樹がそばにいれば、よりいっそう脱出は容易となる。それはタツオやティアラたちの安全マージンを限りなく取った布陣であった。

「それからゆっこね……ユーコーはタツヨシくんケイローンに乗って攻撃だね。ケイローン、ユーコーの指示を良く聞いてね」

風音の言葉にケイローンが『オォォオオオン』と雄叫びをあげた。ケイローンの 知性の金属(インテリジェンスメタル) も快く従っているようである。

「まあ私も魔術に集中できるならその方がいいわね」

アダミノくんの上に乗るという選択もあったが、このメンツでもっとも強いのはユーコーである。故に後ろにつかせるよりは好きにやらせた方が戦果が期待できると風音は判断して、この配置を選択していた。

「それと風音。私、自分用にもこういうのが欲しいわ。蓄魔器がさすがに重くてね」

「蓄魔器? ああ、持ち過ぎなんだよ」

風音が苦言を呈すが、ユーコーは肩をすくめるだけであった。

蓄魔器は常に装備していないと魔力が放出されて、すぐに空になってしまう仕様であるため、莫大な魔力をため込んだ蓄魔器の扱いは面倒であるのだ。

そして今は外しているが、ユーコーは高レベルならではの筋力を使い、普段は恐るべき量の蓄魔器をスカートの中に持ち歩いていた。それは、起きているときも寝ているときもであった。

「うーん。持ち運び用のサポートゴーレムか。できるけどね。ああ、そうか。だったらティアラの 大型蓄魔器(ランドセル) にも使えそうかも」

ティアラの所有している 大型蓄魔器(ランドセル) は、魔力値523をプラスしてくれる個人としては最大クラスの蓄魔器である。だが、その重量故に腹筋が割れているティアラであっても常時持っているのはきついものがあり、今のところ上手く活用できていなかった。

今なら 悪魔憑き(デビル) ドラゴンから手に入れた『竜の心臓』のストックもあるので、それでサポートゴーレムを造ることを風音は考え始めていた。

「ま、それは追々考えておくよ。そんで、後はみんな前衛だね。ジンさんとライルにも期待してるよ」

『任せて下さい』

「な、ナオキ……」

ジン・バハルはカシャンと敬礼している一方で、ライルは救いを求める顔をしていて直樹を見ていた。直樹のスキル『救いを求む声』も反応していたが、それに直樹が手を差し伸べることはない。姉の判断と親友の判断ではどっちの方が重いかは言うまでもないことだった。

「まあ、言っとくけど……本当に気を付けろよ。デュアルモーターマシラオー辺りの単体なら多分なんとかなる。それ以上は死ぬからな」

その直樹の忠告に、ライルがガックリと肩を落とす。そうしたやりとりを見ながら風音が全員に対して口を開く。

「とはいえ、闇の森に移動する前にちょっと回収したいものもあるから、まずはそっちを優先するけどね」

「何よそれ?」

ユーコーが首を傾げるが、その問いに対しては風音はとある写真を取りだした。それはこの場の上空から撮影した航空写真であった。

「上から? それ、どうやって撮ったのよ?」

「さっき、テレポートで一旦上空に飛んで撮って戻ってきた」

事も無げに風音がそう言ったが、上空を飛んでいると闇の森だけではなく、周辺から他の魔物を呼び寄せそうだったので転移で瞬間的に出現するだけに留めて撮影していたのである。

そして、ジンライがその写真を見て尋ねる。

「なんだ、それは?」

そこには闇の森の方向から延びた、森を切り裂くような線が写っていて、その先には魔物が群がっているようだった。そして、風音は一言答える。

「龍神の鱗だよ。前回の流れ弾のひとつが、その場所にあるみたいなんだよね」