軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第七話 登録をしよう

「まあ槍代の分と考えておくわ」

「ごめんねえ。無一文で」

人の通りが多くなったこともあり、さすがに風音もタンクトップにハーフパンツという自分の格好が気になってきたため、冒険者ギルドにいく前に服を購入することになった。

とりあえずは市場に寄り、中古で裾のある太ももの先まで覆う布の服を購入し腰を革のベルトで止めることにする。

「せめて素材でも持ってこれれば良かったんだけどね」

ゴブリンの武装は爆破で消滅。レイダードッグの毛皮も売れるものだがモンドリーの容体を考え、倒したレイダードッグは放置して街に戻っている。換金できるアイテムもないので風音は金がない。

もっとも風音の拾ってきた、現在弓花が装備中の槍はかなり高額で本来布の服一枚で釣り合いがとれるものでもないのだが。

「いらっしゃい。嬢ちゃん、クエストの依頼でも預かってきたのかな?」

冒険者ギルドに入り受付に行くとすぐさまそんな声が掛かってきた。

「いえ。私たち、というかこいつにギルドの登録させたいんですけど宜しいですか?」

「ああ、冒険者志望だったかい。すまないね、そうは見えなかったんで」

(まあ、もろ町人ルックだしねえ)

と弓花は風音を見る。腰に下げてる剣もカウンターごしでは見えないだろう。

「で、登録するんだっけか。まあ登録するだけなら誰でもできるけど本当に大丈夫かい?」

受付のお姉さんが心配そうに風音を見る。

風音は実年齢の平均的な女性よりも小さい。加えてこの世界でも日本人の容姿は幼く見られがちなのだからこの世界の住人からすれば10歳程度の子供にしか見えないのである。

「とりあえずゴブリンとレイダードッグを倒した経験はありますし問題はないかと」

「へぇ。ああ、剣もそこそこみたいだね。なるほど」

お姉さんがカウンターから風音の得物をのぞき込むと頷いた。

「まあいいか。必要事項を書く用紙を渡すけどお嬢ちゃん、文字を読み書きすることはできるの?」

これは年齢如何というよりもこの世界の識字率が低いための確認だ。教会が開く日曜学校はあるが、それも出れる子供は限られるし、ある程度の年になれば親の仕事の手伝いを優先させることが多い。

「ええと。うん、大丈夫みたいだね」

受付のお姉さんの出した用紙を見ながら風音は応答する。

理屈は分からないがこの世界の文字や言葉は日本語と同じように理解できた。

「ここと、これと、カザネ…と」

名前はカザネ・ユイハマ。職業はとりあえず冒険者のまま。そのほかいくつかの確認事項はあったが書くのに大して時間はかからなかった。

「はい。これでいいですか?」

「うん、問題ないね」

そう言って受付のお姉さんが呪文を唱えると用紙がカードへと変質していった。

(うわぁあ、魔法だぁあ)

風音はその光景を驚きの目で見ている。

「ほい、登録完了。記録は…大丈夫だね。て、もうレベル15か。確かに問題はないみたいだねえ」

お姉さんは帳簿を開いて確認をする。どうやら書いた内容はカード化した際に帳簿に内容がコピーされるようだった。

「それじゃあこのカード、結構高いんでなくさないように。再発行はできるけどお金掛かるからね」

「はい。最初はいいんですか?」

「必要経費ってやつだよ。あんたらにガッチリ稼いでもらうためのね」

「そうですか」

風音はカードを受け取ると物珍しそうに眺める。

「あと別の冒険者ギルドでも使用できるけどその場合は一度冒険者ギルドで記録し直す必要があるから忘れないように。それと罪を犯した場合は使用停止にはなるから気をつけてね」

「罪を犯しても登録抹消にはならないんですか?」

「ええ、冒険者ってのは基本は荒事専門でしょ。だからちょくちょく捕まるのよ。色々な事情でね。ただ登録抹消して山賊にでも成り下がられると困るし罰金を払ってもらうってことで折り合いつけてるわけ」

「なるほど」

「だからお嬢ちゃんも気をつけてね。ま、そういうタイプには見えないけどさ」

「そうですね。気をつけます」

「お願いね。ああ、そうだ。あたしの名前はプラン・プルートっての。いつも受付やってるからよろしく」

「はい。よろしくお願いします」

「これで一応は体裁は整ったかな」

「うん。弓花のお陰だよ」

ギルドを出て広場に戻ると、弓花と風音は設置してある石の台座に座ってひと息つけていた。

「最初のクエストも無事クリアして300キリギアもらえたし」

風音は貨幣価値が分からないのでピンとこなかったが、弓花の喜びようからそこそこ高い金額なのだろうと理解する。

「そういえばそのクエストの依頼人ってのは誰だったの?」

風音の質問に弓花は苦笑いをした。

「聞いてみたけど分からないって。報酬まで前金で渡してたみたいで」

「依頼人不明って危ないねえ」

「内容が浮遊石を取ってくるだけだったからね。内容で安全と判断されたんじゃないかな」

それでも妙ではある気がするけどねと弓花もうなる。

「となると手がかりはなしか。ゲームだと依頼終了後に自動イベントが発生したけどそういうのもなかったんだよね」

「ない。やっぱり、あの遺跡だけ特別だったのかも」

「そっか。まあなんもないなら好きにやっちゃってもいいのかな」

風音はそう言って弓花を見る。

「ところで弓花、聞いていい?」

「なに?」

風音は若干緊張しながら口を開く。

「弓花はこれからどうするの?」

「うん?」

風音の言うことがよく分からなくて弓花は聞き返す。

「ほら、この街の宿屋でお世話になってるんでしょ」

そう言われて弓花は「ああ」と頷いた。

「いや、お世話って言ってもご厚意に甘えてるだけで、もうそろそろどうにかしないとって感じだったからね。風音と一緒に冒険者やれるんなら願ったりかなったりだよ」

明るくそう返す弓花に風音はホッとひと息ついて「ありがとう」と返した。

実際、風音は今後自分がどうするかは決まっている。たとえ一人でも冒険者としてがんばる決意はあったがそれでも、親しい友人が一緒にいてほしい気持ちは強かった。

「それで風音はこれからどうするの。冒険者やるんでしょ?」

風音は友人の言葉に大きく頷く。

「今後シグナ遺跡クエストみたいなのがまた出てこないとも限らないしとりあえずはこの街のギルドでがんばって経験値を稼いでいこうと思うの。どうも私には魔物のスキルを奪う能力があるみたいだから、そっちも伸ばしたいし」

「ああ、そうね。手数が増えるならそれに越したことないもんね」

「後はこの世界の情報を集めながら決めていけばいいんじゃないかな~と思うんだけど、どうかな?」

弓花は特に迷うこともなく頷いた。

こうして風音たちの冒険の旅は、ようやく始まりを迎えることとなる。