軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第六話 街に行こう

「いやー助かったぜ」

最後のレイダードッグを倒したところで中年の男性が風音に声をかけてきた。

「いやいや。それよりも大丈夫ですかぁ? ところどころ噛まれてるみたいだけど」

中年の腕は血まみれで見るからに痛々しい。

「いや俺の方は大丈夫だ。鍛えてるからな。ただモンドリーは少しやばいかもしれねえ」

「親方、面目ないです」

そばで倒れているモンドリーが親方に謝る。

「しゃーねえさ。馬も無事だったしいったん街に戻るしかねえな。嬢ちゃんらも乗ってくかい?」

「いいんですか?」

風音が聞くと

「へっ命の恩人が遠慮なんざすんなよ」

そう言って親方はモンドリーと風音と弓花を乗せ、馬車をコンラッドの街に向けて走りだした。

「ああ、ユミカはあの宿の人だったのか。道理で見たことがあると思ったら」

「ええ、モンドリーさんもいつ気付いてくれるのかと思ってたんですけど」

馬車の中。応急手当も終え、落ち着いたモンドリーと弓花が会話に花を咲かせていた。

「いやまさか朝送り出してくれた宿の従業員さんが街道で助太刀してくれるとか思わなかったしな」

(モンドリーさん、弓花が世話になってる宿に泊まってたんだ。確かクックの鍋処とかいうところだっけか)

風音は会話に混じることなく、疲れた体を休めるため横になっていた。

(弓花は昔から男の子と仲良くなるのうまかったもんなあ)

中学、高校と同じ学校、同じクラスの腐れ縁である弓花のそうした性格を内向的な風音は若干うらやましく感じていた。それは弓花視点から見ればまた違った印象になるのだが。

(スキルがまた増えたんだ)

風音は眠いわけでもないのでウィンドウを開きスキル欄を見ていた。レイダードッグとの戦いでスキルが二つほど追加されている。

(『噛み殺す一撃』はたぶん即死攻撃かな)

これはさきほど戦闘で発動した。どうも相手を仕留める攻撃を導き出す…とでもいうようなものなのだろう。ゲーム中でもレイダードッグなどの犬族はレベル差に関係なくプレイヤーを即死させることがまれにある。

(あとはこの『犬の嗅覚』はそのままか)

目を瞑っていても周りの状況がよくわかる。弓花、モンドリー、親方の位置。血の臭い。馬車の外はもう森を抜け、今は再び草原になっているのも感覚的に把握できる。

(これは便利だなあ)

例えばモンドリーが先ほどの戦闘で若干漏ってるなども分かる。

(ま、こっちの世界の住人と言ってもあんな目に遭うことはそうそうないんだろうし)

自分たちの体験した状況はこちらでも相当に過酷な部類だったのだろうと風音は考える。ガタゴトとゆれる馬車。風音の意識はやがてゆっくりと闇に落ちていった。

「おうし。街に着いたぞ」

(むぅん…?)

いつの間にか眠っていた風音は親方の声で目を覚ました。

「風音、ほら着いたってさ」

ウトウトとしている風音を弓花がさする。

「うん、うん。分かったぁ」

次第に意識を覚醒していく風音は外に無数の人の気配を感じる。

(便利だなあ。犬の嗅覚…)

初めて得た未知の感覚に風音は素直に驚いていた。

「ここがコンラッドの街…なの?」

馬車から出て風音が周囲を見渡しながら呟く。それは見たことのない光景だった。

「おや、嬢ちゃんは初めてなのかい?」

「うーん。そうなるのかな。ちょっと私の認識と違っていてビックリした」

コンラッドの街はプレイヤーがゲーム開始時にいる街だ。この世界標準では比較的栄えている設定だったと風音は認識している。

(露店とか多いし交易都市なのは変わってないんだろうけど)

建物の配置などはえらい様変わりしている。フィールド同様に街の規模自体がゲームとは違うので単純に時代の差異なのかゲームとの差異なのかは分からないが。

(確かに弓花の言う通り、ゲームとは違うなぁ。こりゃ、想像以上に)

馬車は城門内のスペースに止めたあと、四人は街の広場まで辿り着く。

「それじゃあ俺らは診療所に行くからここらでお別れだぁな」

モンドリーだけではなく親方も少なからずのダメージを受けている。なるべく早い治療が必要だった。

「はい。ここまで送っていただいてありがとうございました」

「親方もモンドリーさんもお気をつけて」

「うん、ユミカもカザネもね。あ、宿屋にいけばまた会えるのかな?」

モンドリーの質問に、弓花は頷き

「今日、泊まるんでしたら話通しておきますけど?」

「うーん。いや、そのまま診療所に泊まるかもしれないし必要があればこちらから出向くよ」

「分かりました。それじゃあお大事に」

弓花の言葉にモンドリーも頷き、親方とともに雑踏の中に消えていった。

「さてと風音、これからどうする?」

二人の姿が見えなくなった辺りで弓花が横にいる風音に声をかける。

「そうだね」

風音は少し悩んで、そして弓花に質問をする。

「ところで弓花、依頼を受けたってことは冒険者ギルドは存在していてゲームとそれほどの違いはないのかな?」

風音の質問に弓花はうーんと唸り、若干考えた後頷いた。

「そうね。私も昨日登録したばかりなんだけどそこまでの違いはないと思う。ほら、これ」

弓花は懐からカードを取り出す。

名前:ユミカ・タチキ

職業:冒険者

レベル:11

ランク:F

カードには冒険者ギルド登録カードの文字と名前、職業、レベル、ランクが書かれている。

「簡易版のステータスウィンドウみたいな?」

「レベルは自動で変わるんだけどね。ステータスウィンドウのレベルと一致してるし同じ仕組みみたいだけど名前と職業は申告制でランクは実績でギルドが承認して上げてく仕組みよ」

「ほうほう」

「職業は自己申告でなんでも記入できるけど、能力にかけ離れてるとギルドが判断したらNG喰らうし、騎士や貴族みたいな職業によっては罪に問われるものもあるから気をつけないといけないわね」

「なるほどね」

「冒険者っていれとけば特に問題はないけど他とパーティ組んだり逆指名の時に相手が何ができるか分からないと不便だから…ってのはまあ、あんたには釈迦に説法か」

「いや。ゲームと似たようなもんだって分かれば安心だよ」

「そう? じゃあ登録自体は簡単だしチャチャッとやっとく?」

「うん、そうする」

ついてきなさいと先に進む弓花を追って風音はとことこと歩き出す。その顔には満面の笑みが浮かんでいた。