軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百八十一話 地上に戻ろう

風音の一撃が決まりコアが破壊されたことでスカルキングカルラは絶命し、その場で崩れ落ちた。

また、ジンライたちの闘っていたアダマンスカルカルラたちの動きも主の死と共に活動を終え、アダマンチウム製の骨がバラバラに床一面に転がっていった。

「ふむ。手応えのない」

『それは私が言いたいことだ主殿』

ジンライの言葉に久方ぶりに実戦に召喚されたジン・バハルがため息をつきながら返した。

毎日のように訓練時には呼び出されるジン・バハルだが、ダンジョン探索で姿を見せることは少ない。

それはジンライが常時召喚を出来るほど魔力がないという事情もあるのだが、もっと根本的な問題としてジン・バハルを喚ぶ必要があるような魔物と遭遇することがないのである。

そして、今回の戦闘は終了に至るまでにわずか2分足らず。ジンライとジン・バハルのふたりが物足りないと感じるのも無理はなかった。

もっともこの戦いは観客に対しては受けが良かったようである。

『ははは、素晴らしい』

戦闘を見ていたカルラ王が思わず感嘆の声を上げて、拍手をしていた。

カルラ王も風音たちがやられるとまでは当然思ってはいなかったのだが、まさかここまで呆気なく自分の手勢が倒されるとも予測していなかったのである。故に期待以上の実力に非常に満足しているようだった。

「あー呑気に観戦ですかー。いいご身分だよね」

風音がカルラ王にイヤミを口にする。その言葉にカルラ王が笑みを浮かべる。

『ふ、いいご身分なのだよ私は。望んで得たものではないがな』

その影の落ちた笑い顔に風音が首を傾げるが、カルラ王は気にせず言葉を投げる。

『今のが我がダンジョンのイベント『試練の闘い』だ。冒険者ギルドとやらに伝えておけ。適正者あらば、私が試すと』

「今のを……私たち以外にもやるっての?」

風音が眉間にしわを寄せて尋ねると、カルラ王は首肯した。どういう意図かはともかく、カルラ王は見所のある冒険者にちょっかいを出す気満々のようである。

(そりゃあ、気を付けるように言っておかないとね)

風音が慎重な面もちでカルラ王を睨みつける。さきほどのスカルキングカルラは風音たちだから比較的容易く倒せたものの、決して油断して良い相手ではなかった。

そんな風音の様子を興味深そうに見ながらカルラ王は口を開く。

『ふむ。お前たちのお仲間にも仕掛けてみたが、あちらも大差ない速度で倒してしまったようだな』

その言葉によって風音たちの間に緊張が走る。しかし、その様子を眺めながらカルラ王は肩を竦めて笑う。

『安心しろ。全員、無傷だ。まあ、化け物が一匹紛れ込んでいたのには驚いたがね。それを褒めたら悪鬼のごとき形相で飛びかかってきて、こちらが言葉を紡ぐ前に身体を破壊されてしまった』

「あー、そりゃ怒るよ」

風音も化け物というのが誰を指すのかはすぐに理解できた。 血塗れの狂戦士(ブラッディベルセルク) さんは今日も絶好調らしいということである。

『さてと、それではまた会おうカザネよ。そして』

カルラ王がジンライを見た。

『次は失望させてくれるなよ』

その言葉を放ったカルラ王をジンライが睨みつける。

カルラ王はその殺気の篭もった視線に満足そうに頷くと、その場で炎をまき散らして消えていった。

**********

弓花「こっちでムカつくイケメンと会った。多分、カルラ王。名前聞く前に倒しちゃったんで分かんないけど」

風音「こっちも会ったよ。そんで魔物呼び出されて闘ったけど全員無事。そっちはどうだった?」

弓花「こっちも問題なし。アダマンチウムの骨がまたザックザクだね」

風音「(笑)」

弓花「なんかボス戦したって感じだったし、とりあえずは今日は切り上げて一旦戻ろうと思うんだけど、どう?」

風音「らじゃー。そんじゃ合流して戻ろっか」

弓花「おっけー。んじゃ四階層の階段前で」

風音「あいさー。そんじゃね」

「弓花たちも全員無事だってさ」

「そうか。何よりだ」

ウィンドウを閉じた風音がジンライに告げると、ジンライも頷いた。戦闘終了後、風音が急ぎ弓花とチャットで連絡を取ったのだが、カルラ王の言葉通りに無傷であるようだった。

またチャットでの内容通りに、アダマンスカルカルラの骨はアダマンスカルアシュラと同様にアダマンチウム製であり、素材としても申し分ないため回収となっていたのである。

アダマンチウムは白き一団にとっては余剰在庫気味ではあるが、普通は稀少な鉱物なのだ。こんな低階層で手に入るようなものではないレアアイテムなのである。

また、スカルキングカルラから手に入ったのは古代鳥の頭蓋骨というのものであった。鑑定メガネで調べた結果、滋養強壮の薬に使うらしいのでとりあえず回収。本当はスケルトンコアが手にはいるのが理想であったが風音は破壊していたので、今回手に入ったのはそれだけである。

「こんだけ素材も手に入ったし、とりあえず今日は一旦上がる予定だけど、なんかあるジンライさん?」

「いや、問題はないな。今日はあれ以上の手応えのある相手も出んだろうし、ワシも探索しておるより今は外で修行をしていたい気分だしな」

ジンライはそう言ってふたつの槍を抱える。ジレているのは風音にも分かった。

そしてシップーがジンライに寄り添い「ナー」と鳴いたが、ジンライも笑ってシップーの頭を撫でるだけであった。それを見ていたジン・バハルも声をかける。

『主殿、焦ってはいかんよ。お前は『森羅万象』を覚えたてで、まだまだ鍛える余地があるんだからな』

「ああ、分かっておるさ」

ジン・バハルの言葉をジンライも理解はしている。

そもそもジンライという男には才能がない。『森羅万象』というバハル流の奥義を会得できたのも、長年の経験の蓄積による『観察眼』という素地があった為に適合したに過ぎないし、ここまで強くなれたのも血のにじむような修行の結果であって才覚ありきの弓花やライノクスのように軽々と壁を突破できるような者たちとは違うのである。

そして、ジンライはカルラ王と出会ってから風音に黄金炎を出してもらって常日頃から解析しようと努力をしているのだが、未だに黄金炎を無効化出来る感触が掴めていなかった。

「ワシのやることは昔も今も変わらん。ワシのことはワシが一番分かっておるさ」

それでもジンライは愚直に対処していくしかない。自分が足りない人間なのは自分が一番知っているのだから、今まで通りにやるしかないのだ。

(ワシは……負けぬ。絶対に)

ジンライはひとり心の中でそう呟いた。

そんな風にやる気になっているジンライの横ではタツオが『フー』と安堵の息を吐いていた。

『久方ぶりの戦闘に緊張しました』

そして、くわーっと鳴いた。

タツオもオーリオル海岸以降は飛行訓練も積み続け、空を飛びながらのメガビーム発射にもだいぶ馴染んできているようだった。

またユッコネエもさきほどの戦闘ではスキル『竜体化』を使用して、猫のままで高熱ブレスを吐いていた。蓄魔器チョーカーにより魔力値が上がったことで特に負担もなくそうした攻撃も行えるようになっていたのである。

そして、第四階層の登り階段に戻るべく「よいしょっと」とユッコネエの背に乗った風音は自分のステータスウィンドウを開いて見ていた。

(レベルアップ来たねぇ)

今回の戦闘で風音のレベルは41になっていたのである。

『見習い解除』が使用可能になったことでカザネーランドの目処も立った。また『技の手』『進化の手』のポイントも1ずつ増えた。『技の手』のポイントが2になったことで、レベル2のスキルのレベルを上げることが可能になっているのである。

(そろそろ試すか。でも今回我慢してレベル3のヤツを上げるって方法も……うーん)

風音はスキルリストを見ながら熟考する。うーんと悩む風音を乗せてユッコネエたちは弓花組と合流し、そのまま夕方には 金翅鳥(こんじちょう) 神殿の入り口にたどり着いたのであった。

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 入り口

「あ、待ってたんですよ皆さん。ちょっと、急ぎの連絡がありまして」

「え、なに?」

そこで風音たちはダンジョン管理人のシーザーから告げられることになる。

バトロイ工房の研究員であるモンドリーが何者かに襲撃を受け、現在癒術院に運び込まれてるという話を。