軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百八十話 攻撃を仕掛けよう

前後を壁に遮られた逃げ場のない通路を20体のアダマンチウムスカルカルラが駆けて行く。左右に列を組んで風音たちに向かって走り出していく。

(敵は20。まあ、なんとかはなる数か)

しかし、その状況を見ても風音は焦りはしない。

アダマンスカルアシュラのいたヴォード遺跡のように通路の幅が狭ければ確かにかなりの脅威ではあったかもしれない。しかし、この 金翅鳥(こんじちょう) 神殿の通路は左右上下共に8メートルはありダンジョンの通路としては広い。勿論、通路いっぱいに並ばれては厄介ではあるのだが、風音たちのパーティにはそれをどうにかするだけの力があった。

「そんじゃあ、ユッコネエはスキル『壁歩き』で天井から、タツオは飛んで上空から攻撃でお願いね。ロクテンくんはそのまま突貫しちゃおっか」

『にゃー』

「はいっ」

風音は次々と指示を出し、ユッコネエが壁走りをして天井に張り付き、タツオも翼を広げて風の加護を受け飛び上がる。そして、ロクテンくんは斬馬刀『断頭』を振り上げてアダマンスカルカルラへと突撃していく。

「んで、ジンライさんはどうする?」

「ふむ」

風音の問いにジンライは奥にいるスカルキングカルラと迫るアダマンスカルカルラを見比べて、アダマンスカルカルラの方へと視線を戻して口を開いた。

「ワシは数が多い方をいただこう」

「うん。じゃあ私はデッカい方を倒すよ」

大物はスカルキングカルラだが、難易度はアダマンスカルカルラの方が高いとジンライは判断したようである。スキル狙いの風音もその選択には不満はなく、すぐさま行動を開始する。

「そんじゃ、突撃ッ!!」

声を上げながら風音が黄金の翼を広げて宙を舞った。対してアダマンスカルカルラたちも妨害しようと骨の翼を広げて飛びかかる。

「おりゃっと」

その襲いかかってくるアダマンスカルカルラに風音はマテリアルシールドを次々と放つ。踏ん張りの利かない空中ではマテリアルシールドを避けることは難しい。故に面白いようにアダマンスカルカルラが地上に叩きつけられていった。

「いけシップー!!」

「ナーゴッ!」

さらにはすでに攻撃を開始しているロクテンくんに加えて、ジンライとシップーも群れの中に入って攻撃を仕掛けていく。その上に離れた場所からはタツオのメガビームやユッコネエの高熱ガスブレスが飛び出てくるとなればアダマンスカルカルラの群れも風音への追撃どころではなくなっていった。

「よいしょっとぉッ!」

そして、アダマンスカルカルラの群れを悠々と飛び越えた風音はスカルキングカルラの元へとシュタッと降り立った。

『フゥオオオッ』

一方で、目の前に降りたチンチクリンに対してスカルキングカルラは唸りながら背の翼を大きく広げて戦闘態勢に入っていく。

(マテリアルシールド……は駄目か?)

攻撃が来ると判断した風音がマテリアルシールドを正面に張ろうとする。しかし、スキル『直感』が警告を発してきた。

「狂い鬼、出てきてッ!」

ならばと風音は別の手段を選択する。

「グォオオオッ」

風音が狂い鬼を喚び出すと瞬時に巨大な鬼が風音の正面に現れ、己の小さな主を護るべく仁王立ちで構えた。風音はその背に隠れ、不滅のマントにくるまりながら、狂い鬼に声をかける。

「ごめん、狂い鬼。私を護って!」

「グォオオッ!」

風音に答えるように狂い鬼が叫ぶ。それは頼りにされたことへの歓喜の声だったが、そんなことは気にせずスカルキングカルラの翼からは無数の小さな何かが放たれた。

「グォッ!!」

しかし、放たれた『何か』は黒岩竜の鱗に匹敵する狂い鬼の肌を通すことは出来なかった。威力が足りてないのだ。そして、飛び出した何かはすべて弾かれて、周囲に散らばっていく。

(羽の小骨? 羽攻撃の骨版……みたいなものかな?)

風音は落ちている白い骨のようなものを確認する。しかし、攻撃は発射から5秒経過してもまだ止まないため、身動きがとれない。

(あー、マテリアルシールドだと発動時間切れで当たってたね)

風音は先ほどとは違う選択をした未来を想像して少しだけ震えたが、すぐさま頭から振り払って次の手を打つ。

「狂い鬼、一発行くからタイミングを合わせて」

その風音の言葉に狂い鬼が「ガァ」と叫びながら頷いた。そして風音は大きく息を吸い込んで叫んだ。

「3・2・1・今だよッ!」

風音の合図と共に狂い鬼が風音の正面から右へと逸れる。と、同時に風音の瞳から強力なビームが発射された。それは風音の手持ちのスキルの中でも最大の攻撃力を誇るメガビームである。

「燃え尽きろォォオッ!!」

その風音から飛び出たメガビームは発射された小骨を蒸発させ、スカルキングカルラへと向かって突き進む。

『フォォオッ!』

「むっ?」

しかし、メガビームはスカルキングカルラの手前に発生した不可視の障壁によって『反射された』。それは風音たちも修得しているミラーシールドであった。

『母上ーーー!?』

風音が放ったメガビームが、風音に向かって反射された。その光景を見ていたタツオが叫ぶが、しかし共にいるユッコネエは「にゃっ」と一言鳴いて、アダマンスカルカルラに対して攻撃を継続していく。

ユッコネエは風音への加勢を考えてはいない。何故ならばユッコネエが託されたのはアダマンスカルカルラを風音に近づけないことだからだ。また同時に風音が勝つことをユッコネエは微塵も疑ってはいなかった。主の勝利を確信してユッコネエは己の成すべきことを成すべく戦い続ける。

そして、スカルキングカルラの手前で爆発が起こった。

『ォォオオオオオ』

凄まじい光量がその場を覆い、光が消えるとカラカラと飛び散った骨たちがその場に転がり、上半身を破壊されたスカルキングカルラがその場に立っていた。

その胸にはチャイルドストーンではないが剥き出しのコアが見えていた。

「あーやっぱ、爆破って効くなぁ」

崩れかかったスカルキングカルラの前に風音と狂い鬼が平然と立っている。いや、狂い鬼は「グガーグガー」と叫んでオロオロしていた。どうやら叫び声を翻訳すると「目がー目がー」という感じのようである。光を直接見てしまったらしかった。

『母上ーー!!』

タツオが風音の無事を見てくわーと鳴いた。何が起きたかまではタツオには分からなかったが、風音は無事であったのだ。

「あーもう、『光輪』があって助かったね」

泣いて鳴いてるタツオに手を振りながら風音は若干キモを冷やしつつもそう口にした。

メガビームのような光線系の術は高い攻撃力の反面、反射技で返してくる高レベルの魔物も少なくはないのだ。その対策として風音はスキル『光輪』を常時具現化して持ち歩いていて、今回はその保険が利いたわけだった。

(そんで、上手く当たってくれたみたいだねえ)

風音はスカルキングカルラを見る。

メガビームを吸収させた『光輪』をスカルキングカルラに投げつけて意図的に暴発させた結果がそこにあった。

風音もここまでの殺魅オルタナティブや半生キュクロープスとの戦いの中で暴発による全方位攻撃の強さを体感として理解していた。『光輪』の吸収では威力が減衰されたメガビームをまた放つよりも、瞬時にエネルギーを発散し尽くす近距離爆発の威力の方が高いと把握していた。

そして、そのことを裏付けるように見事に上半身を破壊され、無惨な姿となったスカルキングカルラが風音と狂い鬼の元へとゆっくりと向かってきていた。ならば迎え撃つのみと風音はドラグホーントンファーをギュッと握ってスカルキングカルラに視線を向けた。

「そんじゃ狂い鬼、遊んでないでとっとと行くよっ!!」

「ゥゥガァアアア!!!」

風音が走り出し、狂い鬼も少しよろけながらスカルキングカルラに向かって駆けだしていく。

「スキル・キリングレェエッグッ!!」

スカルキングカルラのどうにか繋がっていた右腕の骨が風音に向かって振り下ろされるが、風音の『キリングレッグ』によって逆に粉砕される。狂い鬼も手に持った棍棒を振り下ろしてスカルキングカルラの骨を破壊していく。

『フォォオ、フォ、フォォオオオ!』

スカルキングカルラがその状況に叫び声をあげるが、風音と狂い鬼は意に介さず敵の攻撃を避けながら、己の攻撃を繰り出し続けていく。

スカルキングカルラも自身を構成する骨を集めては、まるで千手観音のように手らしきモノを次々と形成しては攻撃を仕掛けてくるのだが、対する風音はそれらをすべて破壊し、さらに攻撃は繰り出すたびに重くなっていった。そのまま『キックの悪魔』の威力増加コンボがスカルキングカルラの骨を粉々に打ち砕いてゆき、

「これでふっ飛べーーー!!」

15コンボ目に発動するトドメの『爆神掌』が風音の掌から放たれた。

それは、ここまでに溜めた闘気を一気に収束して放出する技だ。

その攻撃は見事なまでにスカルキングカルラの体を抉り、強大な闘気の塊がスカルキングカルラのコアをもまとめて粉砕したのであった。