軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百七十七話 ヤツと再会しよう

風音とジローが酒場に行った日を境に白き一団への周囲の反応は一変したと言っても良かった。

アウターによる住民の説得、天使教の暗躍による冒険者たちの意識改革、また白き一団に問題が生じると上から色々と圧力をかけられかねない街の領主と冒険者ギルド支部長も微力ながらその流れに乗って動いていた。風音たちの日常はこうして様々なところからの助けにより成り立っていた。

ともあれ、あれから三日が経った。天使教とアウターのダブルサイドからの圧力を前に風音たちの陰口を叩く者などいるはずもなく、白き一団の面々は表立っては平穏な日々を満喫していた。

同時に天使教という別の問題も出てきてはいたのだが、風音は敢えて目を背ける勇気を持って、果敢にもスルーを決め込んでいた。害はない。ならば良いではないかと考えていたのである。或いは考えることを拒絶していたともいう。

◎ゴルディオスの街 白の館 中庭

「ようやくここまで来たねぇ」

「じゃあ、絞めるよ」

風音がガチャンと最後の装甲がはめて、共にいるモンドリーが装甲を固定していく。

そして、黒岩竜の骨と鱗にアダマンチウムで補強した装甲を施したタツヨシくんドラグーンがここに完成したのである。

その両脇にはウワン、サワンが共に立ち、ヒポ丸くんも横に並んでいる。それらもすでに全身の装甲がはめられていた。

「いやー、こうして眺めてると壮観だねえ」

額の汗を拭いながらの風音の言葉にモンドリーも頷いた。ようやくの新生タツヨシくんシリーズと新生ヒポ丸くんの完成である。

そして並び立っている姿を見ると、設計からして変わっているウワンとサワンの拳骨そのものの頭がもっとも印象的ではあるが、サイズアップして空を飛べるようになったドラグーンのイメージもそれなりに変わっていた。

ヒポ丸くんは印象こそ変化はないがベビーコアの出力に合わせた結果、装甲を増やしてさらに大きくなっていた。もう馬というよりも魔獣の類である。

「要望通りにウワンとサワンにはアダマンチウム製の槍と大盾を用意したよ。ドラグーンにも大型のアダマンチウム製の槍を持たせた。ただ……」

『ヒポ丸くんの衝角がありませんね母上』

風音の頭の上のタツオがそう口にした。タツオの言う通り、今までヒポ丸くんの胸部に設置されていた黒岩竜の衝角がそこはなかった。

「うん。それとユミカの鎧も 神聖物質(ホーリークレイ) の焼き物だからすでに出来上がってるんだけど、黒岩竜の衝角とユミカの槍は親方が手掛けてるところなんだ。どちらも神々の炎を使う難しい素材だし、衝角は前に携わった鍛冶師の腕がよほど良かったようで、親方も手を加えるかどうかから悩んでるみたいだったよ」

衝角を作成したのは東の竜の里ゼーガンの『護剣の四竜』スザである。ドラゴンの炎で鍛え生み出された衝角は手を加える必要もないほどに完成していたのであった。

「まあ、急いでるわけではないし、時間がかかるのは構わないよ」

風音はそう言って興奮しながらヒポ丸くんたちを見る。ようやく形になった新たなるゴーレム兵たちである。風音の小さな胸が高鳴るのもやむを得まい。

「まあ、とりあえずモンドリーさんの命令を聞くように指示しておいたから、合体や実際の動作のチェックをお願いしてもいいんだよね?」

風音の質問にモンドリーが「任せてよ」と頷いた。

「風音みたいにゴーレムの負荷とかが見れる訳じゃないけど、装甲同士の接触とか実際の動きの確認ぐらいは出来るからね。後は僕もちょっとゴーレムを動かしてみたいし」

モンドリーは照れくさそうに笑いながら、そう答えた。好青年という表現がピッタシな笑顔である。

「そういえば、親方からも鍛冶師用ゴーレムを造れないかって言われてるんだよねぇ」

「へえ、そんなことが可能なのかい?」

風音の言葉に興味深そうにモンドリーが尋ねる。ただ風音の顔は少し難しそうだった。

「うーん。不可能とは言わないけどね。現状のヒヒイロカネか魔鋼を薄くして束ねた魔導線を細かく配置して感度を上げて学習させていけば……後は人間と同じだからって感じかな。まあ、親方がその魔導線造りを今アガトさんにお願いしてるところらしいから、それ見てから考えようってことになってるんだよね」

風音の言葉にモンドリーの顔がパーッと輝いた。どうもモンドリーはこのゴーレム兵にかなり魅せられているようだった。

「ま、それじゃあこれをお願いするよ。今日はこれからまたダンジョンに行く予定があるからさ」

「そっちも頑張ってるね。今は第四階層だっけ?」

「うん。と言ってもまだ、敵も強くはないし罠もないからひたすら地図作りってところだけどね」

それからしばらくは風音とモンドリーはタツヨシくんたちについていくつか話をしていると、家の中から準備を整えた仲間たちが出てきた。

昨日にも一度潜り、第三階層と第四階層のマップを少し埋めてきたところである。隠し部屋は見つからなかったが、本来隠し部屋とはダンジョン内で少しずつ増えていくものだとのことである。つまりダンジョン内部が一新された現在は隠し部屋の件数自体が少ないため、見つけるのはオルドロックの洞窟よりも難しいようだった。

そして、風音たちはタツヨシくんらを見ているモンドリーと別れ、今日もダンジョンに潜りにいくのであった。

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第四階層

「さってと、どっから攻めてこうかなあ」

「にゃー」

『頑張りましょー』

ユッコネエに乗っている風音とその頭の上のタツオが進み、その後ろではシップーと共に並んで歩くジンライに、さらにロクテンくんがついてきている。

一度通った道は基本的に高速移動の風音たちである。弓花たちは水晶馬に乗り、風音たちはユッコネエたちに乗って四階層まで降りてきていた。

「ところでカザネよ。さっきのあれはいいのか?」

ジンライが若干の警戒心を持って風音に尋ねる。その質問は 金翅鳥(こんじちょう) 神殿に入る少し前に起きた問題についてのものだ。

「うん。問題ないというか、今の時点ではどうすれば良いかちょっと分からないからね」

風音もジンライの言葉には眉をひそめつつもそのように答えるしかなかった。

ここに来る前、ダンジョンの入り口付近で風音たちは遠隔視によって見られていた。そのことはジンライや風音、ユッコネエにタツオ、さらには直感をスキルセットしている弓花も気付いたのだが、その気配は視線を向けた瞬間にすぐに消えてしまったのである。

「ここ最近チョクチョク見に来てるみたいだけど遠隔視の相手を追うのは難しいからねぇ」

風音のスキル『犬の嗅覚』はアストラル体や魔力の流れまで追える。そのため実際に一度は追ってみたのだが、風音でも途中で撒かれて接触できなかったのである。

「追跡阻害が出来る相手となると相当だからね。どっかからの監視かなぁ。ゆっこ姉は知らないって言ってたけど」

「ふむ。ユウコ女王陛下の知らぬことかもしれぬし、別の国か、或いは組織ということもあり得るな」

『怖いですね』

タツオも不安そうである。ユッコネエとシップーは「にゃーにゃー」「ナーナー」と口を揃えて鳴いている。返り討ちにしてやるといった感じのようである。

「ま、気にしても仕方ないね。一応ゆっこ姉には連絡して、街の警護団にも報告済みだもの。後は私たちが気をつけるしかないよ」

そう風音は言って周囲の確認を集中する。

風音が『魔物創造』でこの階層の確認すると、

魔素値:12

・スライサーバット[4]

・カミカゼダチョー[7]

と表示された。いっそ自分で生み出して魔素を消費させることも不可能ではないだろうが、生み出した魔物をどうするかという問題もある。

『魔物創造』で生まれた魔物は当然餌を欲する。召喚体のように解除してバイバイという訳にはいかない。或いは主人として命令して飢えて死なせるということも出来るだろうし、直接処分という手段もある。だが、風音もそんなことを平然と出来るほど達観しているわけではなかった。

『母上、変な臭いがします』

歩いている途中で、タツオが風音に指摘した。

「んー? あ、ホントだ」

その指摘に風音が気付き、ユッコネエも同様に把握し、鼻をクンクンとさせている。

(……知っている臭いだ)

風音の視線が鋭くなり、己の中の警戒レベルを最大にまで引き上げていく。

「どうしたのだ?」

犬の嗅覚を持たないジンライとシップーが周囲を警戒しながら尋ねる。もっとも風音にも確信があるわけではなかったため、ジンライに即答ができなかった。

(この臭いは……多分、本物じゃあないね)

風音が目を細めて正面を見る。すると目の前の壁の隙間から黄色い炎が噴き出してきた。

「罠か?」

ジンライが身構える。ジンライは炎の罠かと考えたのだが、出てきた炎は風音たちへは到達せず、渦を巻いて火柱を造り出し、その中で徐々に人の形を形成していく。

「多分、ジンライさんの会いたかった人? いや魔物かな?」

『魔物で結構。私にはコア、チャイルドストーンがあるからな』

その声と共に炎の中から黄金の翼が広がった。そして、その場に金色の炎に包まれた優男が出現したのだ。

「カルラ王……」

ジンライが険しい視線をその男に向ける。しかし、苦々しい顔のジンライとは対照的にカルラ王は笑みを浮かべて、その場に立っていた。

こうして、未だ最深層には遠い第四階層の通路にて、風音たちは 金翅鳥(こんじちょう) 神殿の主『カルラ王』との対面を再び果たしたのであった。