軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百七十四話 英雄と会おう

◎ 金翅鳥(こんじちょう) 神殿 第二階層 隠し部屋

「15時ジャストっと。みんな、揃ってるみたいだねえ」

「あんたが最後よ風音」

風音が指定の隠し部屋に入ると、その場には参加予定の全員が揃っていた。パーティ『ブレイブ』と弓花組、それにここに風音組が揃ったわけである。

「時間通りではあるけどね。ガーラさんとアンナさんはギャオの教育の時にあったけど、ジローくんとメロウさんはお久しぶりだね」

その言葉にガーラとアンナは苦笑いをして、ジローとメロウがそれぞれ「よっ」「お久しぶりー」と返してきた。そして共にいるギャオは、

「おはようございますカザネさん。おれっちは今日も元気です」

綺麗な目で丁寧に頭を下げた。キラキラしている。

「う、見るに耐えない」

「いや、お前がやったんだよね。あれ」

風音が目を背け、ジローがツッコミを入れる。ギャオの瞳が綺麗なのも、ギャオの口調が丁寧なのも、女性に見向きもせずに白き一団を酒場で褒め讃えているのも、雑貨店で買い物をして小銭を寄付箱にすべてぶち込むのも、ショーウィンドウを物欲しそうに眺める子供にトランペットをプレゼントしたのもすべては風音とジンライの教育の成果である。

「おれっちは生まれ変わったのです。ニューギャオに」

にこやかに言うギャオに、メロウがボソリと呟く。

「でも、徐々にゆるみ始めてきてる気がするのよね。最近はまた女の子に視線が向き始めてるし」

「まあ、別に私たちとしては私たちの変な噂を流さなきゃいいだけだし、ギャオの下半身の問題までは知らないよ。そういうのはあの罪状とは特に関係ないし」

その風音の言葉にギャオの耳がピクリと動いたのだが、誰も気付いてはいなかった。

ちなみにギャオの罪状は上流階級に相当する人物の風評被害に対してのものなので基本的にギャオの下半身がどう動こうと関係はないのである。

「まー、もう私にもどうでもいいことだしねぇ。ねージロー?」

「お、おう」

メロウが隣にいるジローに肩を寄せる。それをルイーズが鬼の形相で見ているが、メロウは敢えてジローを自分の方に向けて、ルイーズの方を見せないようにしていた。女の戦いがそこにあった。

「くっ、恋人ですって。あれを……あれが……夜が……」

「まだプラトニックな関係なんだけどねー」

「おう。俺もメロウを……その、大事にしたいし」

「ごめんね。私、まだ少し怖くて」

ジローの胸の中でメロウがそう言って顔を赤らめて、併せてルイーズの顔が歪んでいく。

「なんでよ。もったいない。代わりなさい」

「いやーよ、ねージロー」

「お、おう。ルイーズさんも冗談きついぜ」

「くっ」

メロウとジローのやり取りに、ルイーズが憔悴しきった顔で肩を落とした。ルイーズ完全敗北の瞬間である。

(メフィルス様……これは?)

(まるでそなたがシンディと結婚すると告げられた日のようであるな)

(はぁ……それぐらい、ショックだったと)

ルイーズたちの後ろでジンライとメフィルスがボソボソと話しているが、何気に同じショック具合と聞いてジンライもショックを受けていた。ツーショックである。

「それにしてもジローくんとはホント久しぶりだねえ。最近も活躍してるみたいだけど、その刀と鎧は役に立ったみたいだね」

風音の言葉にジローが「おう、サンキューな」と口にしながら、腰のふた振りの小太刀を抜いた。

それは紅の水晶小太刀・織田信長式。そしてジローが身に着けているのはオダオブナガ・アシガルの鎧であった。

「なんだか分からないうちに妙な噂がバンバン湧いてきて、もう首くくってごめんなさいしちゃおうかと思ってた矢先に届いてさ。これのおかげで最低限は格好が付いたんだよ。ホント、風音は命の恩人だぜ。でも凄く貴重なものなんだろう? 俺がもらっちゃっていいのか?」

「あーうん。まだあるから」

風音は冷や汗をかきながらジローに言葉を返した。ギリギリセーフであったらしい。そして風音が再度ジローの鎧を見て、首を傾げた。

「あれ、鎧が送ったときとちょっと違う?」

風音の疑問にジローは苦笑しながら答える。

「ダンジョンの罠にかかってさ。高濃度の魔素を浴びたら進化したんだな。おかげでこれを着ると動きが速くなるんだよ」

その言葉に風音が「へぇ」と感心する。アシガルの鎧が進化し俊敏力を中心に各ステータスが上昇しているようである。その上で鎧が危機を感知して声で知らせる機能まで付いていた。

「とは言ってもいいことだけじゃあないぞカザネ」

ガーラがズイと前に出て、風音にそう答えた。

名を呼ばれた風音は視線をガーラに移す。ガーラの身体は以前に比べて左腕と左側の一部が変質していた。額の左側には小さな角が一本生えていて、その左腕は赤黒く、右手に比べてアンバランスに大きかった。

「『狂鬼腕』のガーラって呼ばれてるって聞いてたけど」

「お前の脚甲のように、俺は手甲を狂い鬼の角で造ってもらったんだけどな。ジローと一緒に魔素を浴びてこの様さ。ま、今じゃ使いこなしてはいるがな」

そう言いながらもガーラの顔はあまり余裕があるようには見えなかった。

「ガーラ。やせ我慢はよして」

後ろからアンナがガーラを咎める。

「チッ、久しぶりに会ったんだから多少はカッコつけさせてもらいてえもんだがな」

「そう言う問題じゃないでしょ。今回会おうとしたのだってカザネに対応を期待してのことじゃない」

アンナの言葉に風音が首を傾げる。ガーラはバツの悪そうな顔で風音を見た。

「ま、久しぶりに話したかったってのは嘘じゃねえが」

「うん。そりゃあ、疑ってはいないけどさ。悪いの、それ?」

風音の質問にガーラが神妙に頷いた。

「こうなってから色々とキツい状況ではあったんだがカルラ王が出たときから妙にざわつきだしてよ。今じゃあ、痛み止めを打ってどうにか保たせてる感じさ。情けねえ話だが」

アンナがすがるような目で風音を見る。

「もしかすると、そっちの脚甲の狂い鬼が影響してるんじゃないかと思って……けど、カザネは今は別の装備になっているのよね?」

アンナはカザネの着ている鎧を見て尋ねる。まるで刃物のような造りの装甲で出来ていて、全身を覆っているのだ。とても以前に見た脚甲が装備されているようには見えなかった。

「あーいや、これは以前の脚甲が進化して全身鎧になったものなんだよ」

風音の言葉にアンナもガーラも驚きの目でその鎧を見た。確かに以前の脚甲の面影はあるが、漂う気配はまるで別モノというほどに殺気立った恐ろしいものになっている。

「ええと、出てこれる狂い鬼?」

風音は論より証拠と声をかけると風音の鎧からズルリと4メートルの狂い鬼が出てきた。その上に風音たちの周囲には23体のダークオーガたちまでもが立ち並んでいた。

「な、なんだ、こりゃあ?」

ガーラも、他の『ブレイブ』の面々も「うわー、怖そうな人たちですねえ」とのんきに言うギャオ以外は身構えた。

「狂い鬼以外は呼んでないんだけど」

「ウガァア」

見せた方がわかりやすいと思って……というような感じで狂い鬼が吠えた。気を利かせてくれたようである。

「こいつらはお前さんの召喚鬼か? その翼の生えた黒い狂い鬼っぽいのも周りのも全部?」

ガーラの質問に風音が頷いた。かつて風音たちが倒した狂い鬼はガーラの腕のように赤黒かったのだが、風音の召喚鬼となった狂い鬼は黒岩竜の因子の影響を受けて真っ黒になっていた。その上に背には白い翼が生えているのだから、それはそれでたいそう目立っていた。

「その……かつての仇だけど、その場にいて大丈夫?」

ガーラとアンナは以前にパーティの仲間を狂い鬼に殺されている。その敵討ちのために狂い鬼の討伐に参加していたのである。しかし、ガーラは首を縦に振る。

「新たに召喚体となったんだ。再構成されたもので、以前の狂い鬼とは別物だってのは俺も分かってるさ。それに今の俺はそれこそ自分の一部が狂い鬼だし今更だよ」

そういうガーラはやはり辛そうではあった。狂い鬼が出たことでより一層腕の痛みが増してきているようである。

「グッ、ウゥウ」

そして、堪えきれなくなったのだろう。ガーラがうめき、その場で膝を突いた。

「ガーラさんっ!?」

「カザネ、どうにかならないの?」

アンナが必死な顔で風音に尋ねる。

「うん。出来るけど……」

そう答えながら風音は狂い鬼を見る。

「原因はどうも……嫉妬だって狂い鬼が言ってるんだよね」

『嫉妬?』

風音の言葉に、その場の全員の声がハモった。