軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百五十八話 ビームを防ごう

風音はそれを見た。

遺跡の入り口付近にいるキュクロープスに似た崩れかけた化け物の瞳に恐ろしい密度の魔力の光が集中していくのを。そしてそれを見た風音の『直感』が激しく警鐘を鳴らし出したのを強く感じていた。

(あれが街に放たれたら……)

風音の背筋にゾッとするような冷たい感触があった。まず間違いなく、多くの人間が死ぬ。壊滅とは行かないが、街をまっぷたつになるぐらいの威力はありそうだった。そう思えるほどの驚異がそこにはあったのだ。

(ジークは……いや、天鏡の大盾の展開は今からじゃ間に合わない……ならッ!)

「狂い鬼、ユッコネエ!!」

風音は 僕(しもべ) たちに叫ぶ。風音と彼らは一心同体に近い存在だ。風音の意図をすぐさま正確に把握し、両者は一斉に動き出した。それを見る間もなく風音も準備にかかる。

「スキル・光輪!」

風音がその手を掲げて、そこに『光輪』スキルを発動させて、すぐさま手に取った。そして、風音は大きく振りかぶった。

「クギャアー」

それを見ていたドン・ガルーダは叫びながら止めようと走り出すが、その動きには狂い鬼が反応し、ドン・ガルーダに掴み掛かってくい止めた。そして、風音が全力で『光輪』を投げたのだ。それは半生キュクロープスから極大の『メガビーム』が放たれるのとほぼ同時のことだった。

「届けーーー!!」

風音が叫び、『メガビーム』と『光輪』が空中で本当にギリギリのタイミングで接触する。そして、凄まじい量のエネルギーが『光輪』へと吸収されていく。

(うわぁあああ、すっごい威力だよ、これ)

風音が目を覆いながらも、渦巻くエネルギーの奔流に恐れおののく。その、あまりの光量に、遠目からはまるでその場に小さな太陽が出来ているかのように見えていることだろう。

(けど、『光輪』なら吸収は出来るはず)

あの殺魅オルタナティブの極大レーザーソードですら吸収しきったのだ。風音はそこには問題はないと考えていた。ただし、そこから先の問題についての対処はこれからとなる。街への被害は防げたが、目の前の自分たちの身の危険の回避はできていないのだ。

「ユッコネエ、ミラーシールド展開ッ」

「にゃーーーー!!」

すでに風音のそばに寄っていたユッコネエが光輪に向けて魔術のミラーシールドを展開する。さらには風音もミラーシールドを作り、効果範囲を広げていく。 そして風音はメガビームを最後まで吸収しきった『光輪』の表面がビキバキと割れていくのが見えた。

(旦那様、私とタツオを護って!)

同時に風音と、ユッコネエの頭の上にいるタツオの虹のネックレスが輝き出す。それは、神竜帝ナーガのコア『レインボーハート』から造られた魔法具で、竜気を込めることで魔法防御膜『レインボーカーテン』を発生させる。そして、それが風音やタツオ、ユッコネエの周囲を覆う。

そして、風音たちの準備が揃ったと同時に『光輪』が破裂し爆発する。内部エネルギーが暴走し、周囲に光が放出されたのだ。

「グガー」「クケェエエ」「アガアァアアア」

その光に包まれて、ガルーダファイターとダークオーガたちが吹き飛ばされていく。前回の盾といい哀れな役回りである。

やがて、光が止んだ時、ゴルド黄金遺跡の入り口前の広場には小規模のクレーターが出来ていた。

(光輪で威力を半分に減衰させて、指向性を外して全方位射出……それでもまだこの威力か)

そのクレーターの中で風音は戦慄するが、しかしその風音たちはミラーシールドとレインボーカーテンで防御し無傷だった。殺魅オルタナティブの時とは違い、風音は護りきったのである。

そして、ガルーダたちだが、ガルーダファイターとゾーヒョーは全滅していたが、ドン・ガルーダはまだ生きているようだった。

「『蹴斬波』同様に『相殺共鳴』で防いだわけだね」

風音はドン・ガルーダを見ながら、そう呟いた。

それは、自らの魔力を放って相殺することで放出系の攻撃を無効化するスキルである。だが、それも魔力あってのこと。魔力が尽きれば、相殺することも出来ずにダメージを喰らうのは当然の話だ。

「く……ギュエエエ」

そして、ドン・ガルーダは焼け焦げながら、その場で崩れ落ちた。

(あ、スキルが入った)

同時に風音の目の前で『魔物創造』スキル入手を知らせるウィンドウが開いた。どうやら、ドン・ガルーダを倒したのは間違いないようだった。

(元はメガビームだけど『光輪』からの攻撃は私の攻撃扱いになるってことかな)

風音は少しだけ考えて、そう結論づけた。もっとも、その意識はすぐさま遺跡の入り口へ向けられる。あれだけの威力の攻撃である。ジンライの身が心配だったのだ。だが、風音はそこでさらに驚くべき『あるもの』を目撃する。それは……

**********

「グッ、ウウゥウオオオオ」

そして、風音の目の前でドン・ガルーダが倒れたのとほぼ同じ頃に、ジンライは呻きながら立ち上がっていた。一瞬途切れた意識を繋げようと記憶を辿りながら、ジンライは周囲を見回した。

(一体、何が起きた?)

そこは先ほどよりも僅かに離れた場所だった。どうやらジンライは無傷のようで、そして、ジンライよりもさらに離れたところには、傷つき転がって倒れているシップーがいた。

「シップー!!」

そのジンライの叫びには「なー」という弱々しい鳴き声が返ってきた。

思わず死んでいるのではないかとも思って叫んでしまったが、ひとまずは生きているようでジンライは心底ホッとして、胸をなで下ろした。

そして、ジンライは入り口を見る。そこにいるのは、すでにドロドロと溶け始めている半生キュクロープスだ。さすがに、さきほどのメガビームは半生キュクロープスの能力を超えすぎていたのだろう。無茶が祟って、もはやジンライに攻撃を仕掛ける力もなく、その命は風前の灯火のようであった。

「…………」

だが、ジンライの表情は硬い。

確かにジンライは一方的に半生キュクロープスに攻撃を受け、自分も相棒のシップーもダメージを負い、それでいて、それを負わせた相手は自滅していくのだ。思うところがないわけではない。しかし、それは良いのだとジンライは思う。生きていればこその勝利。例え一方的にやられようと最後に立っている方が勝者なのだから。だから、それは良い。問題はもっと別のところにある。

「そちらの猫くんも、このひとつ目くんと同様に限界を超えた力を出したみたいだね。君の盾になりながら、風と雷の力でメガビームを受け流し、ゴム鞠のように跳ね飛ばされた」

目の前に、ジンライにそう、悠々と語る人物がいるのだ。

「まだ生きてるのが奇跡のようなものだが、君はどうやらほとんど無傷らしいね」

そう、半生キュクロープスの前に男がいたのだ。それは黄金の翼を背負った、金髪の男だった。

(なんだ。こやつは?)

ジンライは全身から粟立つものを感じていた。明らかに普通ではない男だ。そもそも、ジンライはその気配を人のものとは感じられない。別の何かだと感じていた。

訝しがるジンライに対し、男は一歩踏み出して、笑いながら口を開いた。

「ああ、紹介がまだだったね」

それは翼や鎧、その髪から瞳の色まで金色の男だった。

「私の名はカルラ王。このゴルド黄金遺跡の最深層の心臓球を守護する……」

そして、

「このダンジョンの主だ」

そう、告げたのだ。