軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百五十七話 ゴン太(ぶと)を撃たれよう

「さてっと」

風音はガルーダたちを見る。

混戦となったように見えて、ドン・ガルーダを中心にガルーダファイターたちは隊列を整えながらダークオーガたちとの戦闘に入っている。中々に統制の取れた魔物たちのようだった。

そのガルーダファイターはドン・ガルーダの守りのために地上に降りているが、対してガルーダゾーヒョーは空を飛んで迎撃をしようと構えている。その上に、彼らの背には今や煌々と輝く炎があった。

「当然、出してくるよね」

風音同様にガルーダファイターもガルーダゾーヒョーも背にカルラ炎を背負い出したのだ。カルラ炎は見た目は派手だが、背後の攻撃を炎の壁で攻性防御するスキルである。能力自体は地味ではあるが、戦闘ではそれなりに使える力だった。

「背中はこっちがダメージを喰らうから気をつけてねー」

と風音は仲間たちに声をかけるものの、狂い鬼たちにそれの対処を期待してはいない。どうせオーガ族は力の限りブン殴るだけなので無駄な話なのだ。

(そんじゃあ、私はあっちを落とすかな)

風音はそう考えながら、上を見る。邪魔者が空を飛んでいるのである。そして、白い翼を広げて空へと上がりながら風音は蜘蛛の糸のスキル『スパイダーウェブ』を放った。

「クェッ?」

飛ばされた蜘蛛の糸は飛んでいるガルーダゾーヒョーの足に張り付いた。それをガルーダゾーヒョーが首を傾げてみる。

「そんで、続けて、これをこうっ!」

そして、風音は飛ばした蜘蛛の糸の反対側を他のガルーダにも飛ばして張り付けたのだ。それが伸縮して、ゾーヒョー同士の空の動きを制限し、

「ギュエエエエ!?」

「クギャキャアッ!」

その場で鳥たちの悲鳴が響き渡る。まるでもつれ合うクラッカーのように無様に二体のガルーダゾーヒョーが落ちていくのが他のガルーダたちにも見えた。そのまま地上へと激突した魔物たちの姿を見て、その作戦が有効と判断した風音は『スパイダーウェブ』スキルで出した蜘蛛の糸をガルーダ同士に貼り合わせ、または地面に付けて地上に降ろす作戦を続行する。

「にゃあああッ」

「グガァアアアアッッ」

勿論、敵もそれなりのレベルの魔物ではある。落ちただけではガルーダゾーヒョーたちを倒すことは出来ないが、そこにユッコネエと狂い鬼が、投げ与えられた餌を奪うかのように仕留めに掛かってくるのであれば話は別だ。

『おおっと、メガビームッ』

そして、タツオはユッコネエの頭の上で振り落とされぬように、くわーっと鳴きながらしがみついてメガビームを放っていく。元々タツオの放つメガビームは、風音のものに比べて低コストの威力制限ビームである。それが与えられた白蓄魔器(小)によって魔力が増量されたことでさらに連発が可能となっていた。

「グガァア」「グラァア」「ォォォオッ」

一方で、ダークオーガたちも地上でドン・ガルーダを護るガルーダファイターたちと激突していく。

一体一体の実力はダークオーガの方が上のようだが、カルラ炎による背後の防御と倍はいる数の有利さから、その激突はガルーダファイターの方が若干の優勢という感じだった。もっとも、それは相手がダークオーガだけならばという話である。

「うりゃあああッ」

そして、少女の気合いの入った声が響き渡る。地上にガルーダゾーヒョーを落としまくった風音がその掃討をユッコネエたちに任せて、ガルーダファイターたちとの戦いに参入してきたのだ。風音は『空中跳び』から『キリングレッグ』をガルーダファイターに放ち、防御に構えた剣ごと本体を蹴り飛ばすことで、コンボを開始していく。

「クギャアアッ」

ガルーダたちの叫び声が木霊する。

ガルーダファイターたちはゾーヒョーとは違い、鎧に身を固めて武器を持って武装している魔物だ。しかし、並みの装備では風音の攻撃を防げない。風音はキリングレッグで剣を破壊し、ドラグホーントンファーで鎧ごと内部を砕き、トンファーの先で喉を貫いて、またトンファー入門書の下巻で覚えたトンファーの円回転による受け流しもさまになっていた。

それは日頃の訓練のたまものである。もしくは実験体にされて青あざだらけになった直樹のおかげでもある。なお、直樹にとっては姉に直接触れることが出来る貴重な触れ合いタイムであり、収支を考えれば本人換算でプラスであるとのことであった。

『キックの悪魔』スキルによる威力上昇コンボが風音の攻撃をさらに重くする。そのままダークオーガの助勢やスキル『直感』と合わせて、ガルーダファイターたちの反撃を一切寄せ付けない速度で風音は攻撃を繰り出していく。

「そんじゃあ、『蹴斬波』発動ッ!」

そして、10コンボ溜めた風音の蹴りから赤い闘気の刃が放たれる。15コンボで発動する『爆神掌』が単体攻撃であるのに対して『蹴斬波』は直線距離にダメージを与える範囲攻撃である。こうした集団戦では『蹴斬波』の方がその効力を強く発揮する。

「クギャアッ!!!」

しかし、その攻撃で何体ものガルーダファイターが吹き飛んだが、『蹴斬波』の刃は途中で発せられた叫び声にかき消されてしまう。

「防がれた!?」

赤い闘気がその場で霧散し、その先にいるドン・ガルーダが大口を広げて立っていた。風音の『フィアボイス』やドラゴンの本能を揺さぶる叫び、神狼化弓花の『ホーリーボイス』など、魔物たちの声には特別な力を帯びている場合が多いのだが、ドン・ガルーダの声も同様に、何かしらの力を帯びているようだった。

「本命登場だね」

風音はそう言ってドン・ガルーダを見る。

ガルーダファイターたちもドン・ガルーダに睨まれて、ズラズラとその道を開けていく。どうやらドン・ガルーダはファイターたちだけに任せてはおけないと考えたのか、自ら戦う気でいるようだった。

そして風音がドン・ガルーダに対して構える。デップリとした巨体ではあるが、巨大なメイスを持ち、ゲーム通りならばその敏捷性も決して低くはないはずである。

そしてドン・ガルーダの叫び声と共に、ガルーダファイターたちの気勢も上がり、戦いはさらなる激しさを増していく。

**********

「ふんぬぉぉおッ」

そして、風音がドン・ガルーダと戦っている一方で、ジンライはほぼ腐りおちかけているような姿の半生キュクロープスを相手に苦戦していた。

「ナアアアアッ!!」

「切り抜けろ、シップー」

ザクザクザクザクザクザクと地面にそれが降り注いでいる。

上空から数十という剣や槍や斧、またはそのなり損ないの刃たちがジンライたちを襲ってきているのだ。

「ヌァアアッ」

それをシップーが 悉(ことごと) く避け、それでも避けきれない刃はジンライがふたつの槍で弾き飛ばしていく。

速度も狙いも大したものではないが、なにぶん襲ってくる刃の数が多すぎる。捌くだけでジンライといえども精一杯といったところだった。

(チィッ、まともではないな。あやつ)

ジンライが己の敵を見る。それは、魔力体から物質へと変換途中で誕生し、様々な部位が爛れているような有様の『キュクロープス』であった。だが、明らかに誕生失敗しているはずのキュクロープスは己のスキルである『武具創造』を異常な速度で発動し続けて、ジンライへの攻撃を繰り返している。

(保つわけがない……が)

ジンライはその半生キュクロープスを見る。脳に当たる部分が沸騰し、血のような赤い蒸気が上がっている。肉も焼けただれるように溶けつつあり、その姿はもはや死に体といっても良い。

(自分の状態を気にしてもいないというわけか)

ジンライの見る限り、その半生キュクロープスは己の肉体の負荷を抑えるためのリミッターが解除されているようだった。その上に未完成で物質化出来ていない下半身が遺跡から放出されている魔素を吸い取って『武具創造』の魔力へと転換している。

いつ分解してもおかしくないし、仮にジンライに勝利したとしても、おそらくは短時間で消滅するしかないだろう。そんな、死ぬことを前提として宿命された魔造生命体がそこにいたのだ。

しかし、普通であれば僅かなりにでも、恐れか、哀れみか、或いは嫌悪を感じざるを得ないような相手に対して、ジンライは獰猛な光を瞳に宿しながら、ただ笑みを浮かべて対峙していた。

『グギュゴゴォォオオオッ』

それを感じ取ったのか。半生キュクロープスは、骨も見え始めている顎を広げて、叫び、そして『武具創造』を停止させた。

「ぬ?」

ジンライは訝しげに半生キュクロープスを見るが、しかし、半生キュクロープスも力尽きたわけではなかった。

「拙いな……」

ジンライはそう呟いた。同時に半生キュクロープスのたったひとつの瞳が輝き出す。それは風音の使用しているスキルと同じもの。いやリミッターが解除されている以上は更なる威力を持つ筈の光撃であるはずだった。

「下がれぃ、シップー!!!」

そして、ジンライが叫び声を上げる。しかし同時に巨大な光が半生キュクロープスの瞳から放たれたのだった。