軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百五十一話 黒煙を発見しよう

風音が滅びの神剣『アースブレイカー』を、弓花が『穢れなき聖女のケ-プ』を入手した譲渡クエストではあったが、レイサンの街を訪れてから三日ほど経っても直樹は譲渡クエストをクリアできなかった。

そして、直樹がこの三日で譲渡クエストに挑んだ回数は実に27回。ボロボロになって戻った後も風音が治癒系統の上位魔術である『ハイヒール』をかけて「直樹なら出来る。お姉ちゃん信じてるから」と言って再度送り出し、日に何度も戦い続けさせてみたのだが結局、成果は出なかった。

そして一行は、現状では遂行困難な直樹の譲渡クエストを一時中断して本来の目的地であるゴルディオスの街へと向かうことになったのであった。

◎ミンシアナ王国 北街道

「ファンタジーなのにミサイルとかレーザーとか馬鹿かって話なんだが……」

「まあ、お前は頑張ったよ」

『聞いた感じでは……正直神竜でも勝てるか分からぬ強さのようだしな』

遠い目の直樹をライルとジーヴェの槍が慰めている。そして、ふたりが乗る水晶馬に護衛されているヒポ丸くんに牽かれているサンダーチャリオットの御者席にはいつもとは違うメンツが並んで座っていた。

「ワシもやってみたかったのですがね」

口惜しそうにそう言うのはジンライである。風音と弓花、それに直樹の受けた譲渡クエストの内容を聞いて、ジンライは自分がその殺魅オルタナティブと戦いたくて仕方がなくなっているようだった。

『タツヨシ王陛下の試練は、あの方と縁あるものでなければいかんそうだからな。相対する幼子は英霊ジークを退けるほどの能力を持つとのことだ。英雄王の力はやはり凄まじいものがあるようだな』

「ご健在だったら、あたしも一戦お願いしたいところだったわ」

現在、御者席にはジンライ、ルイーズに 炎の騎士団長(フレイムナイツリーダー) 化しているメフィルスが並んで座っていた。なお、ルイーズの望む一戦とは殺魅オルタナティブではなく、達良本人であり、勝負の方法は彼女の得意技を希望であった。

そして、白蓄魔器(改)を二つ装備しているティアラは今ではメフィルスの 炎の騎士団長(フレイムナイトリーダー) の常態化を可能としており、ここ最近のメフィルスは生前のもっとも健康であった頃のように活き活きとしているようだった。

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「お爺さまも最近はずいぶんとお元気になられたようですわね」

ティアラは楽しそうに話しているメフィルスを馬車の中から見ながら微笑ましげにそう口にしていた。ティアラはここ数年、メフィルスがベッドから降りることなく衰えていくのを見ているしか出来なかった。それが今は元気にああして笑っているのである。それがティアラにはとても嬉しいようだった。

「お爺ちゃんも今まで何も出来ないことを結構気にしてたみたいだからねえ」

そのティアラに風音もそう口にした。それにはティアラも「そうですわね」と頷いた。

ここまでの間、メフィルスは『ただ、いる』という以外にはティアラの修行の手伝い程度しかできなかったのだ。しかし今は違う。白き一団の仲間として動けることをメフィルスが心から喜んでいることは、精神がある程度リンクしているティアラにも感じられていた。そして昔の仲間たちと共に対等に旅が出来る今を謳歌しているようだった。

「それで、ナオキの方は大丈夫なのかしら? なんか、かなり精神的に参っているみたいだけど」

馬車の外では直樹がライルと何かを話しているようだった。その様子を見ながらエミリィが口を開く。どうも直樹は殺魅オルタナティブにフルボッコにされて傷心中のようであった。だが、風音は「大丈夫だよ」とエミリィに言う。

「落ち着かせておけば、そのうち元に戻るよ。殺魅オルタナティブとの戦いで、以前に比べれば直樹もそれなりに強くはなったはずだもの。実際に他と戦わせて強くなったって実感できりゃあ、また気持ちも変わるんじゃないかな」

そう風音が言う通り、直樹は殺魅オルタナティブとの戦いでそのスキルを成長させていた。それは魔剣を竜やホストに変じさせるスキル『魔剣解放』の常態化と、剣より発する『魔法刃』の物理化である。

「今後も直樹には、定期的に殺魅と戦ってもらうつもりだよ。達良くんの譲渡アイテムも強力だろうけど、達良くんが自力攻略を望んでいるならそれを優先してあげたいし、直樹自身のスキル強化にも使えるようだしね」

そう風音は言う。それが最終的に直樹を強くするだろうと風音は考えていた。

「達良のコピーも連れてこないのも、それでいいのよね」

そして、達良の話が出てきたからか、ひとり外を見ていた弓花が風音にそう尋ねた。その言葉に風音は頷く。

「ん、あれはやっぱり本人じゃないからね。私はゆっこ姉とは違うし、一緒にいるのはなんか違うと思うんだよ」

風音は少しだけ寂しそうな顔で弓花の言葉にそう返した。風音は達良コピーの同行を明確に拒絶していたのである。

「そっか。まあ、私は良いわ、あんたがそう思うなら」

そう言葉を返して弓花は再び窓の外を見た。それを口にした弓花の気持ちは風音には分からなかった。それはおそらく弓花にも分かってはいなかったのかもしれない。

「それで、ようやくの本命に到着か。ずいぶんと長かった気がするわね」

弓花が窓から顔を出しながら街道の先を見る。今はまだ見えていないが、この道の先にあるのがゴルディオスの街である。そこにあるA級ダンジョン『ゴルド黄金遺跡』の最深部には元の世界へ通じる穴が存在している筈であった。

風音と弓花が当初に目標に掲げていた場所にようやくたどり着くのだ。

「そうだね。ホント、想像以上に長かったなぁ」

風音も弓花の言葉に感慨深い思いで、そう返した。

「ゴルド黄金遺跡ね。確か、一週間ほど前に67階が攻略されたって聞いているけど」

「うん。オロチって人のパーティ『レイブンソウル』だね」

話に加わってきたエミリィに風音が頷いて、そう返した。

「オロチって、確か?」

「うん。 制約の黄金鎖(ギアス・ゴルディチェーン) を持ってるらしい人だよ」

外に出していた頭を馬車の中に戻した弓花の言葉に風音はそう返した。

オロチとは、クリスタルドラゴン戦の際に出会った冒険者エイブラから聞いた、成竜をひとりで捕縛したという人物である。

その男の使用している武器の特徴はアーティファクト『 制約の黄金鎖(ギアス・ゴルディチェーン) 』と酷似していた。そして『 制約の黄金鎖(ギアス・ゴルディチェーン) 』はコーラル神殿でのみ手に入れられるアイテムであり、そのオロチという人物がプレイヤーである可能性は高かったのである。

「ミナカさんもその人のパーティにいるらしいんだよねえ」

そして、レイサンの街の冒険者ギルドで得た情報によれば、そのオロチのパーティ『レイブンソウル』にはリザレクトの街で別れたミナカ・ライドウもいるとのことであった。真白い刀を持った女剣士がいるという話であったので、斬魔刀となった『白雪』もちゃんと所持しているようである。

その他にそのゴルド黄金遺跡で活躍している風音たちに馴染みがあるパーティは、オーリ率いるパーティ『オーリング』にジロー率いる……ことになっているパーティ『ブレイブ』といったところであろうか。

「みんな、元気にしてるかなぁ」

風音はそう言って、外を見る。

空はどこまでも青く、雲一つない光景だった。その先に、風音たちの目指すものがある。

(……ふーむ?)

そして。風音はその先にある黒い煙のようなものを見た。それを風音は凝視する。

「カザネよ。見えているか」

そして窓から顔を出していた風音に、ジンライが声をかける。

ジンライもその異常に気付いたようだ。そしてジンライの言葉に風音も首肯する。

「姉貴。多分ゴルディオスの街だと思うけど、中で煙が上がってる。魔物もいるっぽい」

そのジンライと風音の話に水晶馬で併走する直樹が声をかける。

遠見のイヤリングを使って遠隔視を行っているようである。今もイヤリングを着けている右側の瞳は、ここではない遠い場所を見ているように視界が定まっていない。

そして、直樹の言葉に馬車の中にいる弓花たちも顔を窓から出して道の先を見た。少し近付いてきたからか、火の手が増えたのか、すでにいくつもの黒煙が見えていた。

「襲撃されてるの?」

「だと思うけど、外から攻め込まれてる様子もないし、多分ダンジョンの中からだな」

直樹の言葉にジンライが唸る。

「むぅ、誰かがモンスターハウスでも踏んだのやのもしれぬな」

『どちらにせよ、急いだ方がよかろうな』

「そうですね」

メフィルスの言葉にジンライも頷いた。しかし……と、風音はヒポ丸くんを見ながら口を開く。

「今はヒポ丸くんを全速力では動かせないしなあ」

ヒポ丸くんは今なお魔力が洩れている状態だ。無理が出来る状態ではない。

「おいおい、何言ってるんだよ、姉貴」

そして、そこに声をかけたのは直樹であった。

「直樹?」

「ここは俺の出番だぜ?」