軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百四十九話 神剣をもらおう

風音の蹴りによって、殺魅オルタナティブの首が飛んでいく。そしてその頭部は放物線を描いて宙を舞い、そのまま道路へと、

「ほっと」

落ちる前にキャッチした男がいた。それは達良コピーであった。そして戦闘終了のブザーが鳴り響くと同時に、自分の首を持つ達良コピーに殺魅オルタナティブが口を開いた。

『お兄ちゃん、負けちゃったよ』

「うん。完敗だったね。まさか、強引に打ち崩すとは思わなかったなぁ。まあ、それもまたアリではあるけれど、作った側としては複雑かなぁ」

達良コピーの言葉に風音が首を傾げる。

「えーと、どういうこと?」

その風音の疑問には達良コピーは直接的な答えは返さない。

「まあ、続いての弓花ちゃんたちの挑戦を楽しみに……ということだね。さすがに二度続いてさっさとやられるとは思えないし。それよりも風音。無事、殺魅オルタナティブには勝利できたのだけれど、この子はどうだったかな?」

達良コピーの問いに風音は「うーん」とうなりながら口を開いた。

「なんていうか勝った気がしないんだよね。本気でやってる感じじゃなかったしさ」

『ブッ殺していいんなら、もっとやれたんだけどね』

風音の言葉に殺魅オルタナティブはそう答えた。それを達良コピーが「お願いだからブッ殺さないでね」と諫める。ブッ殺して良いことになると続いての弓花と直樹がブッ殺されてしまうのである。

「ところでさー」

その達良コピーと殺魅オルタナティブの会話に風音が割り込む。

「この殺魅オルタナティブって今どっかにあるのかな? もしかしてツヴァーラの秘密兵器とかになってたりするの?」

それは純粋な興味からの言葉だった。実物があるなら人形使いの足がかりになるかもと風音は考えたのだが、達良コピーは首を横に振る。

「この子の実物ならもう解体済みだよ。この娘は二号で、もう一体の一号はガイエルと相打ちになって壊れたし、現存している殺魅はないね。一号はマジ殺しの集大成だったんだけど、ガイエルは強かったからねえ」

その言葉に風音は眉間にシワを寄せた。その言葉から察するにそのガイエルという人物は殺魅オルタナティブの上位版と本気で戦って相打ちをしたということである。

かつて人竜戦争を引き起こしたジルベリア帝国の竜帝ガイエル、そしてその騎竜であった黒竜ハガスの実力の底知れなさを風音はその言葉から感じた。

(まあ、でももう600年前のことだしね)

とはいえ、今はもういない人物だ。その人物と会うことのない事実に風音は安堵して、達良コピーに続けての質問を投げかけた。

「解体したってことは、その子は残さなかったんだ?」

「うん。僕の造ったものは強力なものが多すぎてね。大体は処分させてもらったよ。国を護るだけならミンティアのルビーグリフォンだけで十分だったしね」

「まあねえ」

風音も暗殺集団との戦いの折りのルビーグリフォンの『滅の炎』のことは聞いている。王都防衛の際にはルビーグリフォンは 魔力の川(ナーガライン) と繋がり、無尽蔵の魔力を供給されながら、あの炎を吐き続けることが可能となる。

ジーク王子も白剣を 魔力の川(ナーガライン) と繋げてオーガ軍団を追い払ったが、守護兵装という存在は自己の領土の 魔力の川(ナーガライン) と繋いで使う兵器である。使用出来るのは自陣限定のため、基本的にその用途は防衛手段のみとなるがその威力は絶大であるのだ。

「その判断はどうやら間違いではなかったようだし安心したよ」

その感想はティアラとメフィルスを見たからこそ出た言葉だろう。ツヴァーラは現在は周辺国との諍いもほとんどなく、非常に安定した国家として存在している。それはまさしく達良の望む通りの未来だったのだろう。

「ま、そういう話はここまでにして、風音も頑張ったんだからご褒美を渡さないとね」

「うんうん。そのための譲渡クエストだからね」

風音の言葉に達良コピーも頷き、そして持っていた殺魅オルタナティブの頭部を空中に放り投げた。

「殺魅、頼んだよ」

『あいよ、お兄ちゃん』

達良の言葉に従って殺魅の姿が変化していく。頭部が光り輝き、やがてそれは細い棒状のものへと変わっていく。

「おおおお」

その姿を見ながら風音が声を上げる。それは光りながら、やがて一本の剣へと変わっていった。それは装飾の少ない銀色をした剣であり、そのまま落下し地面に突き刺さったのだ。

「えっと、殺魅オルタナティブに変形する剣?」

「いや、単純に演出ってだけだから違うよ」

その言葉に風音がガックリ来た。あれが仲間になったらさぞかし無敵だろうにとは思ったが、そうではないようである。そして達良コピーがその剣を見ながら口を開いた。

「これが風音に譲渡する武器、滅びの神剣『アースブレイカー』。いつか地球をまっぷたつにしたいという僕の思いがこもった剣だ」

「なるほど。そいつはスゲエよ達良くん」

風音が素直にその名前を賞賛する。カザネバズーカ・テラバスターと同じ思いの篭った武器である。

そもそも風音の奇行は概ね達良の影響を受けたものであり、つまりは達良は穏和な草食系に見えるが風音の師匠に該当する奇人変人の類でもある。或いは元凶と言っても良い男であった。故にその考えが似ているのも当然と言えば当然ではあるのだ。

「ええーと。でも、見た感じ、普通の剣だけど?」

「うん。そう見えるよね」

達良がうんうんと頷いた。

「それはね」

「どれどれ?」

そして達良コピーが説明をしようとする横を風音はすり抜けて、そのまま剣を取ろうとして、

「あ、ちょっと待って」

「ん?」

慌てる達良コピーの言葉と同時に風音はソレを握ったのだ。

(なにこれ?)

そして、風音が感じたのは何か巨大な暗黒、満ちる事なき無の世界だった。何もかもを喰らい尽くすような貪欲な気配。それが握った剣から感じたイメージだった。

「う、あぁああああ、ァアアアアアア!?」

そして次の瞬間には風音の握った腕から凄まじいエネルギーが剣へと流れ込まれていった。それは魔力や生命力と言ったものだ。それが勢いよく剣へと注ぎ込まれて行く。

(これ、マズッ)

その、あまりの勢いに風音の意識が揺らぎかかる。

「アアガガガガガガガガッガア」

そして、風音の力を喰らいながら銀色の剣が輝きを増しその圧力が上がっていく。風音は視界が暗くなってくるのを感じながら、ソレを見た。

(私の力を吸って、吸った力が圧縮されて、これは)

「手を離して。早くっ」

「あびゃあああっ」

達良コピーの言葉も風音には届かない。そこに二つの影が飛び出してきた。

「にゃあああーーー!」

「ウガァアアッ!」

ユッコネエと狂い鬼、二体の魔物が叫び声を上げて風音に向かって走り出した。実のところユッコネエも戦闘終了となったので、非殺傷麻痺状態が解除されていたのだ。

そして、その二体の体当たりによって、風音の身体が吹き飛び、持っていた剣も投げ捨てられ、そのまま地面へと突き刺さった。

「ふっ、ふぅ、はぁ………な、なに、今の?」

風音は己の全身から膨大な汗が流れ落ち、今のことで心身ともに消耗しきったと感じた。そして、落ちた剣はまた、ただの銀色の剣へと変わっていたのだ。

「ああ、戦闘後だったからそれほど力を吸い取れなかったんだ。使われてたらこのフィールドが弾け飛ぶところだったよ」

達良コピーが心なしか余裕のない声でそう口にした。フィールドが吹き飛んだら、恐らく起点となっているセスの宿屋一帯も崩壊しかねない。風音はその言葉にゾッとした。

「というか、これなんなのさ?」

風音はおっかなびっくり地面に突き刺さった剣を見て尋ねる。風音の背後のユッコネエと狂い鬼もその剣を凝視している。その様子に達良コピーが「やれやれ」と言った風に苦笑いをした。

「説明はちゃんと聞くべきだよ風音。何かあってからじゃ遅いんだから」

「う、うん。ごめんなさい」

その達良コピーの言葉には風音も素直に頭を下げた。そのまま風音はユッコネエと狂い鬼にも「ふたりともありがとうね」と答えた。二体がいなければ風音も危険だったのだ。ギリギリで助かったという感じであった。

そしてその様子を見ながら達良コピーが口を開く。

「それは滅びの神剣『アースブレイカー』。生命力、魔力、精神力などを吸い上げながら強力無比な攻撃を放つ、僕の造った中でももっとも高い攻撃力を持つ剣だよ」

「なんか、普通に死にそうなぐらい吸い取られたんだけど?」

「まあ、まだレベル40じゃねえ。僅かな時間なら扱えるかもしれないけど、基本的には能力不足だね」

その達良コピーの言葉には風音の口もへの字になる。

「えー、レベル上がるまでお預けってこと?」

しかし、その言葉には達良コピーは首を横に振った。

「いや。これは風音へ譲渡する武器ではあるけど、風音用に作ったものではないんだよ」

「私用じゃない?」

首を傾げる風音に達良が頷く。

「つまりは、それはね」

◎レイサンの街 セスの宿屋 食堂

「ジーク専用の剣?」

弓花がそう声を上げた。目の前には、風音と達良コピーがいて、テーブルには銀色の剣が置かれている。

風音が部屋から戻ってきて、その剣を出して見せてきたのだ。そして風音は疲れた顔で予め用意してもらっていたピーチタルトをガツガツと食べ始めた。全身から力が失われている感じなのだ。エネルギーを補充せねばとピーチタルトを食べ始めたのだった。

そして風音に代わって、達良コピーが弓花の言葉に頷いた。

「うん。ジークは元々防御主体だったからね。体力も防御力も回避力もあるけど、今の10分制限だとあまり活躍できないんじゃないかと思って造ったんだよ」

その言葉に一同が考え込んだ。ディアボの時も、黒岩竜の時も、悪魔襲撃の時も、オダノブナガの時も、英霊ジークは相手を一方的に圧倒こそしてはいなかったが活躍はしていた。そして、ジンライが「しかし」と口を挟んだのだ。

「あれほどの技量の戦士をワシは見たことがない……のですが、それを戦闘力が低いというのはどうだろうかと」

ジンライは英霊ジークの実力を見て惚れ込んでいる。あの域に近づくことこそが今のジンライの目標ともいえたのだから、達良コピーの言葉に反発するのも無理はない話だった。しかし、達良コピーは「それはそうだけどね」と前置きながら、話を続ける。

「ただね、ジークが防御や回避を重点としていて、攻撃力にリソースをあまり割いていないのは事実なんだ」

達良コピーの言葉にジンライが唸る。

「勿論、ジークが弱いという事じゃないよ。ジークは時間さえかければほとんどの相手には勝ちか引き分けに持ち込める。けどね。大翼の剣リーンも強力ではあるけど、必殺というわけではないし決定力に欠ける。実際、今の風音の全力ならジークを倒すのは無理だとしても、ジークの攻撃を耐えきることは出来るんじゃないかな?」

その達良コピーの言葉に、風音はピーチソースでベトベトにした手をペロペロなめながら「うーん」と唸りながら考えた。

「ロクテンくんに乗れば10分逃げ切るのは出来るかなあ。硬すぎるし当たらないしでジークにどの程度のダメージを入れられるかは疑問だけど、リーンのゼクシア・レイもロクテンくんフル装備の魔法防御なら防ぎきれるだろうし」

風音はそう答えた。その言葉通り、現在の英霊ジークの弱点は時間制限であった。それも防御主体であるが故に受け身の姿勢であり、自ら攻撃を仕掛けるにも決め手には欠ける。

「だからこその、この剣なんだ。もっとも英霊ジークでも使えるのは保って一分程度だろうけどね」

「それ、どんだけ酷い設定にしてるのさ」

さすがの風音も呆れ顔である。英霊が一分しか使えない剣、酷いピーキーさであった。

「姉貴、俺に貸してみろよ。ちょっと解析してみる」

スキル『魔剣の支配者』持ちの直樹である。自分ならば……と思ったのだが、しかし、それには風音が首を横に振った。

「やめておいた方がいいよ。下手すると脳味噌が吹き飛ぶかも」

「マジで?」

風音の言葉に直樹が一歩引いた。

「いや脳味噌が吹き飛びはしないけど」

その達良コピーの言葉に直樹が踏みとどまり、

「廃人にはなるかもしれない」

続けての言葉に、さらに下がった。

「なるほどな。エラいものをもらったようだな、カザネ」

そのジンライの言葉には風音も苦笑いをするしかなかった。

強力であるが故に、その使いどころは難しい。果たして、この剣を使う機会が来るときがあるのか。それは今の風音にはまだ分からなかった。