軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百四十八話 白スクと決着つけよう

殺魅オルタナティブの極大レーザーソードのエネルギーをすべて吸収した光輪が自壊し、その内側から放たれる光の奔流が全方位に拡散していく。

(くっ、なんて威力だよ!?)

その破壊の光の中で、風音はイージスシールドを張ってその身をガードし、さらには虹のネックレスから発生させているレインボーカーテンやロクテンくんの鎧の対魔法耐性によってその威力を大幅に減衰させている。

しかし、それでも防ぎきれない。

風音の乗ったロクテンくん・阿修羅王モードはその衝撃を喰らって、その場から大きく弾き飛ばされた。そして、それは殺魅オルタナティブも同様だった。

『ユッコネエ、狂い鬼!』

そして、風音は自身が飛ばされながらも 僕(しもべ) たちへと指示を飛ばす。レーザーソードも今は消え、レールカノンも使用不可状態。それはチャンスであった。

『倒すなら今だよッ!』

もはや武器をすべて失い、丸裸となった殺魅オルタナティブである。そして、闘志を燃やす狂い鬼と黄金竜ユッコネエが一気に殺魅オルタナティブに踊りかかる。

『それは甘いよ、魔物さんたち』

しかし、殺魅オルタナティブはその身を地面に投げ出されていても、うろたえることはない。そして、飛びかかる二体の魔物に殺魅オルタナティブが何かを投げた。

(なに、あれ?)

地面を破壊しながら転がり、どうにか勢いを殺して止まった風音がそれを見る。それは黒い手榴弾だ。それがユッコネエと狂い鬼の前で発動し、空間が歪んだ。

『ふにゃッ!?』

そして一瞬の判断でユッコネエは『直感』を働かせて避ける。『風の加護』を使って空中で急ブレーキをかけたのだ。だが、狂い鬼はそこまで器用な真似は出来ず、そのまま歪んだ空間へと突撃してしまう。

「グッ、ガァアアアアアアア!?」

その直後に狂い鬼は落下した。尋常ではない速度で空中から地面へと落とされたのだ。

そして、殺魅オルタナティブが投げつけたのはグラビティボムという投擲系消費アイテムだ。それは飛翔系には特に効果の高い、巨大な重力を発生させて対象を地面に叩き落とす爆弾であった。

『狂い鬼っ!?』

風音が叫ぶが、狂い鬼はそのまま地上の自動車に激突してそれを爆発させ、さらにはその衝撃で陥没した割れ目へと落ちていく。

『にゃーーッ!』

一方でグラビティボムを避けきったユッコネエも態勢を立て直し、剣を突き出しながら殺魅オルタナティブへと特攻する。今の殺魅オルタナティブに攻撃手段はない。そう考えたのだ。しかし殺魅オルタナティブにはまだ手があった。それは、

『必殺・無属性メガビーム!』

『にゃぎゃあああああ!?』

殺魅オルタナティブの目から高出力のビームが出たのだ。その攻撃は特攻するユッコネエにクリティカルに直撃してしまう。そして、ユッコネエはそのまま弾き飛ばされて竜体化が解除されて地面に転がっていった。

『ユッコネエ!? って、こっちにも来るのか!』

光輪の爆散からようやくロクテンくん・阿修羅王モードを立て直した風音だったが休んでいる暇はなかった。ユッコネエを倒したそのメガビームがそのまま風音に迫ってきているのだ。

『スキル・イージスシールドッ!』

『無駄無駄無駄ーーー!』

風音は『イージスシールド』を発動させる。だが、殺魅オルタナティブの言葉通りにイージスシールドは通過され、無駄に終わってしまう。

『くっ、なんでさ!?』

最初のミサイルランチャーのビームも防げなかったのだ。その理由が分からない。しかし、それを考える間もなくメガビームは襲いかかってくる。

「もういっちょ!」

風音は全速力で飛んで逃げながら再度イージスシールドを放つがまったく効く様子がない。

(物理と魔術、どちらも防げるはずなのに!?)

それが効かない。つまりは防御手段がない。肉の盾なら防御可能だったのは狂い鬼で実証済みだが、そんな便利なものは今はなかった。そして、風音が避けるメガビームで周囲のビルがさらに倒壊されながら、

『くっ、追いつかれ……』

ついにはロクテンくん阿修羅王モードにも到達し、直撃した。

『ぶっ飛べッ』

抑揚のない殺魅オルタナティブの声と共にロクテンくんの巨体は弾き飛ばされ、背後のビルへと砲弾のように激突した。

『んー、勝ったかなぁ』

その様子を見ても、やはり無表情のまま殺魅オルタナティブは棒読みでそう口にした。そこらへんは達良の趣味であろう。無表情系幼女が好きなのだ。彼は自分に正直な男であった。

『これでお兄ちゃんにも誉めて……ん?』

しかし、油断は禁物である。まだ、戦闘終了は告げられていない。

「旦那様フルバーストッ!」

空中から声が響き渡った。そして殺魅オルタナティブの頭上に唐突に巨大な水晶のドラゴンが出現したかと思えば七色の光が無数に発射されたのだ。勿論、その声は風音で、出てきたのは神竜帝ナーガを模した召喚体だ。

風音はロクテンくんを捨ててメガビームから脱出し、そのまま白き翼を広げて空中に逃れて虹竜の指輪を使用した。つまりは神竜帝ナーガの最大攻撃『セブンスレイ・オーバーキル』を発動させたのだ。

『しつこいねっ』

だが、殺魅オルタナティブも焦らずに、その場でエーテルフレアというアイテムを使用して高濃度のエーテルミストをばらまく。それは魔術を散らす効果のある消費アイテムだ。そして『セブンスレイ・オーバーキル』の攻撃が、ばら撒かれた高濃度エーテルの霧によって対消滅する。

「まだまだぁあっ!」

しかし風音はそれを読んでいた。だから七色の光と共にソレを飛ばしていた。それは黒い巨大な鬼だった。

「グォォォオオオ!」

『鬼?』

狂い鬼が叫び声を上げて殺魅オルタナティブへと特攻していく。実のところ狂い鬼は地下に落ちた時に一度召喚を解除され、今ここで再召喚されていた。

『けどね、力なら僕にだってあるんだからねっ!』

殺魅オルタナティブはレールカノンを手放して、狂い鬼の全力の棍棒攻撃を左拳で迎撃しようと振りかぶる。だが、狂い鬼は殺魅オルタナティブへと振り下ろした棍棒を手放した。

『なんで?』

殺魅オルタナティブは疑問を口にするが左拳は止まらない。そして、棍棒に殺魅の拳が激突するのと同時に狂い鬼が殺魅オルタナティブの身体を掴み上げた。

『くっ、掴まれた?』

そう、狂い鬼が殺魅オルタナティブをガッシリと掴んだのだ。どこまでも棒読みの殺魅オルタナティブだが、出てくる言葉自体はフェイクではない。

対して狂い鬼はトドメは自分ではないと理解していた。空高く舞った己の主が 殺(や) ってくれる。狂い鬼はそれを信じて、己は補助の役割を全うしようとしていた。

「スキル・キリングレーーーーッグッ!」

そして、天より巨大な力の奔流が殺魅と狂い鬼に向けられたのだ。

それはロクテンくんと共にドラグホーントンファーが飛ばされているためにファイアブーストなしの縮小カザネバズーカだったが、その攻撃が強力であることには変わりはない。

『くっ、仲間ごと僕を倒そうっていうんだ?』

殺魅オルタナティブはそう口にしたがその認識は間違っている。狂い鬼にはカザネバズーカには当たらない。当たる直前に風音によって召喚解除されて逃れるからだ。つまり喰らうのは殺魅オルタナティブだけだった。

『危なッ』

そして狂い鬼が消え自由になった殺魅オルタナティブは、本当にギリギリでそれを避けた。右腕はカザネバズーカと接触し削り飛ばされたが、人形である殺魅オルタナティブの行動には支障がない。

「浅いッ!?」

風音は舌打ちする。狂い鬼の召喚解除が僅かに早かったのか、或いは殺魅オルタナティブの回避が異常に速かったのか。いずれにせよ、一撃でしとめるには至らなかった。

『あのまま、一緒に倒しておけば良かったものを。情が君の敗因さ』

そう口にする殺魅オルタナティブに、

『グッ』

「誰の敗因だって?」

しかし風音の拳は決まっていた。

それは一瞬のことだった。風音は発動させたマテリアルシールドを自身に使ってカザネバズーカの反動を利用したパンチを殺魅オルタナティブに叩きつけていたのだ。

(ツゥッ)

その威力は抜群に高かったが、代償として風音の左拳もまた砕けた。『赤体化』もかかり、『竜喰らいし鬼軍の鎧』の籠手にも覆われているにも関わらず砕けたのだ。しかし、それはそれだけ威力が高いということでもあった。

「狂い鬼ッ、抑えて!」

「ガアアアッ」

『また出たぁッ!?』

殺魅オルタナティブがそう口にするが、召喚解除されれば狂い鬼は『竜喰らいし鬼軍の鎧』の中に帰るのだ。であれば、そこから出て来るのは当然。魔生石を得て、風音の鎧から直接出れるようになった狂い鬼が目の前の殺魅オルタナティブをガッシリと握りしめた。

「いっけええええ!!」

そして抑えつけられた殺魅オルタナティブを、風音が蹴り、殴り、コンボを決めていく。端から見れば、小学生低学年の幼女を大男が抑えつけて、小学生高学年の少女が執拗にリンチしているようにしか見えない光景である。とても人にお見せ出来るものではなかった。

そして『キックの悪魔』スキルによりその威力も徐々に上がる。さらには殴りつけ、蹴りつけながら、風音は気付いた。

(コンボ10以上いけるかっ)

「うりゃああああ!」

砕けた拳も振るって風音は殺魅を滅多打ちにする。風音の手から流れた血が殺魅オルタナティブに付着し、現場はさらに凄惨さを増していた。そして15コンボ目の技が発動する。

「赤く輝け『爆神掌ッ』!」

トドメとばかりに、風音の真っ赤に輝いている掌底打ちが殺魅オルタナティブの腹に決まった。ここまで溜め込んだソレを一点集中させて叩き込んだ。その接触点から闘気の衝撃が吹き荒れ、膨大な破壊の力が殺魅オルタナティブに注がれる。

『ウァアアアアッ』

「ウガァアッ」

そして、あまりの威力に狂い鬼の抑えていた手も弾かれ、殺魅オルタナティブが吹き飛ばされていく。

「ウガァアアアッ!」

狂い鬼が勝利の声を上げるが、カザネの目には油断はなかった。ここで「勝った」宣言は負けフラグと理解しているのだ。

「まだだよ!狂い鬼ッ!!」

そして、風音は瞬時にスキルスパイダーウェブを発動させて倒れている殺魅オルタナティブに飛ばした。飛ばす先は残された左手だ。

『クッ、そこまで分かってたのかい?』

その風音の蜘蛛の糸は殺魅の左手と持っていた『元気が出るお注射』を固定化していた。それは全回復アイテムである。その効力は装備品にまで及び、発動すれば何もかもが元通りになる禁断の回復アイテムだ。今の風音にとっては悪魔の注射に等しい。

「狂い鬼ッ!」

そして風音が叫び、その意図に気付いた狂い鬼が風音を持ち上げてブン投げた。

「うりゃああッ」

そして風音がスキル『ブースト』でさらに加速し、

「だめ押しのスキル・キリングレッグ!!」

『ガフッ』

カザネの解放された竜爪付きキリングレッグが殺魅の首へと突き刺さる。

『くっ、やるねお姉ちゃん』

だが、そこまでだ。殺魅オルタナティブの首に竜爪が突き刺さっているがそこで止まっている。それ以上は貫けも斬り裂けもしない。

(硬い。無理かッ。いや)

人形だけあり殺魅オルタナティブの防御力は強力だ。しかし、次の瞬間には風音は久方ぶりのスキルの発動を感じた。

「でやぁああああっ!」

そして風音は『身軽』と『柔軟』により可能となった左回し蹴りを続けて放ち、殺魅の首をはね飛ばした。

それは渾身の一撃だ。スキル『噛み殺す一撃』。低確率の即死攻撃スキルが、風音の最後の駄目押しをしたのだった。