軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百二十七話 友を罵られよう

◎オーリオル海 水晶ガレー船『風音丸』

ザバーンと海の中からドラゴンが出てくる。そして、それは空中に飛び上がると光を放ってチンチクリンへと変わり、そのままクルリンと回転して船の上に飛び乗ってきた。風音ドラゴンは風音チンチクリンへと戻ったのである。その風音ドラゴンの背に乗っていたルイーズも一緒に船上へと降り立った。さらにはタツオと弓花も海の中から一旦は空を飛んで船へと降りる。なお、ユーイの水騎士は水中で解除されていた。

「姉貴、随分と大漁だったそうじゃねえか。ほらよ」

「うん、サンキュ」

直樹が船の上に上がった風音に不滅のタオルを手渡した。水も吸い取るのに常にふんわりとしている謎のタオルである。それをスク水姿の風音が受け取った。そう風音はスク水だった。そして、このスク水はスキル『武具創造:黒炎』によって作られた水着である。

風音は初日には用意されていたビキニを着ていたのだが、AAAカップではやはりずり落ちそうになっていたのだ。人の技術はまだAAAを扱えるほど進歩はしていない。横からサクランボが見えそうになるのに耐えきれなくなった風音はやむなく自前で水着を作ることにしたのだ。

しかし、風音がスキル『武具創造:黒炎』で造って装備できる水着はスクール水着しかなかったのである。他はみんな装備不可だった。女子専用装備なのに装備不可だった。AAAには厳しい世の中だったのだ。やるせなかった。

なお、スク水はゼクシアハーツ内では武具であるので、何も問題はない。スク水は正義である。

「そんで、ティアラが呼び出したって聞いたけど、神々の種火のことだよね?」

そしてスク水風音がタオルで頭を拭きながら、ティアラの方を向く。なぜかスク水には『6の2 ゆいはま かざね』と刺繍がしてある。ちなみに風音は小学校時代は6の2ではなかった。何度か造ってみたところランダムで数字が表示されるようであった。ゲーム的な仕様というヤツだ。

「ええ。その、話をする前にユミカ、そのランタンを見せていただいていただきたいのですけど?」

「うん、分かった。はいよっと」

その言葉に、すでに完全竜化を解除した弓花がアイテムボックスからランタンを取り出してティアラに手渡した。その中にはやはり白い炎が燃えていた。

「ああ、やっぱりそうですわね」

『間違いなかろう』

そしてティアラがランタンの底をのぞき見てつぶやく。腕の中のメフィルスもそう口にした。

「何か見つかったの?」

「旧ツヴァーラ王国とボンゴ帝国の紋章ですわ」

『やはり、600年前に失われた神々の種火で間違いないようだな』

ティアラの言葉にメフィルスが続く。どうやらメフィルスとティアラはこのランタンと種火を知っているようだった。

「ええと、つまりは、それは返さないといけないってことかな?」

そう口にする弓花はどことなく預けたい気持ちがにじみ出ているようだった。面倒事の種になるというのは言われるまでもなく分かりきったものである。出来れば、厄介事はチンチクリンに任せて、自分は安全マージンとりながら地味ーに行きたい弓花である。しかし、ティアラは首を横に振る。

「結論から言いますと、その神々の火種はツヴァーラ王族が買い取り、その後にその所有権を破棄しておりますので、誰が所有していましても問題はありませんの」

「そうなんですの、お姉さま?」

ティアラの言葉にユーイが目を丸くする。

「ええ、600年前の人竜戦争時に、ツヴァーラはボンゴ帝国から巫女と種火を借り受けて、秘密裏に切り札となる武器を製造しようとしたのですわ」

『もっとも、街ごと沈められてしまったがの』

それがこの船の下にある街なのだろう。ガイエルとの戦争中にこの街は沈没させられたのだ。

『当時のツヴァーラはガイエルに気付かれぬように秘密裏に事を進めていたそうでな。一緒に沈んだ種火は正確な場所も分からず、当時は探索チームを編成して何度も探したにも関わらず、結局見つからなかったと聞く』

「それで、その後にツヴァーラ王国は購入という形でボンゴ帝国に実質的な賠償金を支払いましたの。その後に万が一を考えてツヴァーラも所有権自体を破棄しているのですわ」

「万が一ってのは?」

風音の問いにティアラは少し怒った顔で答える。

「我がツヴァーラが意図的に神々の種火を奪ったのではないかという疑いを晴らすためですわね。なので、その種火が発見されてもツヴァーラに帰属することも出来ないのですわ、カザネ」

『もっとも、お金を払っておるのでな。ツヴァーラに帰属することは出来ぬ契約だがボンゴ帝国への返却義務はない』

「そんじゃあ私が持っていても問題はないってこと?」

「まあボンゴ帝国から返却を要求されてもはねのけることは出来ますわね。その上で、ユミカがユウコ女王に帰属する鍛冶の巫女となれば、ある程度の問題は確かに防げると思います」

その言葉に弓花が「おおーー」と言って、明るい顔になる。ちなみにボンゴ帝国からの返却要求をはねのけられるだけで、ルイーズが先ほど言ったことは特に防げはしないのだが、まあ喜んでいるので水を差さなくても良いか……とルイーズは思ってたりしていた。

ともあれ、ティアラとメフィルスからの話は終わりのようである。

「うーん。とりあえず使って良いなら親方にさっきのインゴットと種火を使って武器を使ってもらうことは出来そうだよねえ」

そして、風音は今手に入れたものを思い出しながら、そう言う。

現在親方は今後風音たちが向かう予定のゴルディオスの街にいるはずである。そこでオリハルコンなどの鉱物を加工してもらえるのであれば非常に便利なことであろうと風音は頷いた。

「あ、私も親方に造ってもらいたいものあるしなあ」

そして弓花も風音の言葉を聞いてそんなことを呟いた。

「ん? もう決まってるの?」

「うん。風音にも協力して欲しいんだよね。お金は出すから」

そう弓花は答える。その言葉に風音は首を傾げるが、しかし続けての弓花の言葉に「ああ、それはいいねえ」と口にした。その弓花が造りたくて、風音の協力が必要なものとは……と、少し離れていて聞こえなかった直樹が尋ねようとして前に出た時、それは突然現れた。

『母上ッ、なんか来ます』

タツオが声を上げ、全員が船の外を見る。

そして、海の中から出現したのだ。巨大な戦艦が、ひとつ、ふたつ、みっつ……と、荒々しく海上へと浮かび上がってくる。

「えっと、何アレ?」

風音が目を丸くして、ソレを見る。『犬の嗅覚』にも『直感』にも反応はなかった。故に目の前のソレが普通のものではないと理解する。

「アストラル体の気配が強い。 幽霊船(ゴーストシップ) ?」

ルイーズが眉をひそめて、ソレを見る。そして甲板にいる骸骨兵たちの中でも、一番豪奢な鎧を着たスケルトンが、船首に立って水晶ガレー船を見下ろしながら、尋ねてきた。

『尋ねよう。貴様らが我らが街を滅ぼせし忌まわしきドラゴンどもか』

その言葉に、風音が首を傾げる。

「何言ってるの、あの人?」

「うーん。軍艦の 幽霊船(ゴーストシップ) でしょう。ってことは沈められた昔のツヴァーラの兵隊さんよね?」

ルイーズの言葉に風音が「なるほど」と頷いた。

「こういうことはよくあるんですの?」

ティアラの問いに執事のベンハーは顔を青くして首を横に振る。

「ありませんし、記録にもそうした話はありません」

(けど、忌まわしきドラゴンって……ああ、竜帝ガイエルの手下かなんかだと思われてる?)

竜帝ガイエルも、恐らくはその手下のドラゴンたちも600年前の戦争で達良たちに倒されてるはずである。それをあの幽霊たちは理解していないようだった。

(けどなんで今になって……って、そうか、さっきの私たちか)

さきほどはドラゴン三頭で街を探索していたのだ。その竜気を察知して、ガイエルの手の者かと思い、幽霊となって復活した……ということかもしれないと風音は考える。

『答えよ。汝等は竜帝に仕えし者か? 我らが敵か?』

であれば簡単だ。風音は己が敵意がないことを示せば良いと。さらにはこの場にはツヴァーラの姫であるティアラやユーイもいるのだ。戦いになどならぬだろうと考えた。

「いや、私たちは敵ではないよ。竜帝ガイエルはもう倒されたんだよ。ツヴァーラは勝ったんだよ」

風音は両手を広げ、敵意はないことを態度で示し、そして慈愛に満ちた目で、目の前のスケルトンに目で訴える。少し目がキラキラしている。亡者たちを言葉だけで説得してる私すげーって感じに風音はなっていた。

『ツヴァーラが勝った? それは真か?』

その言葉に骸骨たちが動揺する。怨敵の気配を感じ、死の淵より蘇った彼らは、すでに戦争は終結し、600年経ったことを知らないのだ。

「そうだよ。えーと、タツヨシ王の元で、ツヴァーラは勝利を収めたんだよ。大勝利だったんだよ」

その風音の言葉にスケルトンたちがピタリと固まった。

「うん?」

首を傾げる風音に、スケルトンの大将が、顎をカタカタさせながら尋ねる。

『……タツヨシ王?』

なぜだか怒りがわき上がっているのが分かる。しかし、その意味は風音には分からない。達良はツヴァーラの王様のはずである。しかし、彼らはそれを知らないのだ。

『ツヴァーラが勝ったのか? それでタツヨシが、あのデブ野郎が王に?』

風音は妙な迫力に押されながら頷いた。史実によればそのはずだった。

ソルダードから国を奪還した後、達良は竜帝ガイエルを打ち破って、ミンティア王女と結ばれ、王となったのである。

『み、ミンティア王女は……まさか』

「ええと、タツヨシ王のお后さんだよね?」

その風音の言葉で何かが壊れた音がした。バッキーンと音がして、風音の足下にコロコロと何かが転がった。

(歯……?)

風音が落ちている歯を見る。そしてスケルトン の大将(ジェネラル) を見た。どうやらその歯は、目の前のスケルトンジェネラルから落ちたもののようである。どうやら怒りのあまり食いしばった歯が割れて落ちたようだ。

『あのクソ野郎が……』

『ポッとやって来た、あのデブが王?』

『王女を誘惑した、身の程知らずな豚が……王だと?』

『ロリコン野郎が、うちらの姫さんの●●●を奪いやがっただと』

『あの愛らしい姫様を……あのデブが?』

『俺たちに微笑みかけてくださったあの方をあの●●野郎がッ』

骸骨たちから口々に、怨念のこもった声が響いてくる。そしてスケルトンジェネラルが声を震わせながら口を開いた。

『みんな、よく聞け』

その言葉に、スケルトンたちの声が止まる。スケルトンジェネラルの怒りが分かったのだ。今、しゃべれば砕かれると。

『もうワシも我慢の限界だ。本来は黙っているべきことだが、一切他言無用と言われているが、もはやそうも言っていられまい』

そして、意を決したようにスケルトンジェネラルは告げる。

『ワシたちの姫様、麗しのミンティア王女は、実はな。あの脂肪の塊に奴隷として飼われてたんだ……』

『『「「「『『『『な、なんだってーーーー!?』』』』」」」』』』

スケルトン以外の声も混じっていたが気にしてはいけない。この船上のすべての者が同じように衝撃を受けたのだ。

『あの野郎は、幼い姫様を自分専用の奴隷として奉仕させてたと聞く。ヤツの当時を知るものからの確かな話だ。あんな小さい子を己に性欲のはけ口に使って、その上で調教して己がのし上がる道具に仕立て上げたんだ。そんなヤツが王にだと。許しちゃいけねえ。そんな惨い話を許しちゃおけねえだろう!』

「まさかと思っていたけど、こっちにきて本性がでたのね」

「いや……誤解だよ。達良くんはそんな人じゃないから」

ペッと唾を吐く弓花に風音がフォローを入れる。

ただ、ロリコンは否定できないなーと風音は心の中で思う。達良のマイキャラ殺魅はロリボディに露出の多い水着アーマーに大威力武器を装備していたのである。二次元限定と達良は言っていたが、正直微妙である。

『今すぐ王都に向かって進軍だ。これは反逆ではない。世の正義を示すために、あのロリコン野郎をツヴァーラ王家から排除するために、この船は王都へと向かうッ!!』

『『『『『『『『『ォォオオオオオオオオオ』』』』』』』』』

怒れるスケルトンジェネラルの言葉に、スケルトンたちが叫び声を上げる。そして軍艦が動き出した。

なお、英雄王タツヨシは竜帝ガイエルを倒す過程でその実力を如何なく発揮していく。その功績により真に人々から英雄として崇められるに至るのだが、それまでは急に王女に連れてこられた愛人のようなものとして見られていた。王女が奴隷であることも今の世では秘されてはいたが、当時は調べればすぐ分かることだったのだ。そして、当時のミンティアは達良に対して惜しみない愛情を送り続けていた。

しかし、ミンティア王女は当時12歳の少女であった。

故に、端から見れば30に迫っていた達良は明らかに犯罪的な立場であったのである。