軽量なろうリーダー

作品タイトル不明

第四百二十八話 その身を護ろう

「えーと、これはどうしたら良いのかな?」

風音がひきつった笑いで、ティアラを見た。

目の前の幽霊船は600年前のツヴァーラの海軍の軍艦であるようだった。それが王都を目指して進攻しようとしている。陸地はどうするのかとも思ったが、幽霊船なので陸の移動手段ぐらいはあるのかもしれない。

そしてティアラも眉をひそめながら口を開いた。

「かつては我が国の剣と盾であった方々とはいえ、人々に害を成そうとする魔物を逃しておくわけにはいきませんわ。倒しましょう」

『うむ。英雄王への侮辱を広めるわけにもいかぬしな』

メフィルスもやる気を出しているようだった。

「それで、あのーさっきのあいつらの言葉は?」

そして直樹がメフィルスに尋ねる。一応、直樹も達良とは知り合いだ。気になると言えば気になっていたのだ。

『誤解も良いところであるわ。 彼(か) の英雄王は己が故郷の掟『ジポホウ』というものを護り続け、賢者の如き心でミンティア様の成長を見守っていたと聞いておる。日々のミンティア様のあらゆる誘惑に耐え続け、いたしたのも18歳を越えてだ』

あー、いたしたんだなーとは風音は思ったが、当然いたしたからメフィルスもティアラもいるのである。年齢的にも問題なければ、なにひとつ問題はあるまい。もっとも、ラブかライクかは置いておくとしても自分の人生の中で一番好意的に思っていた男のそういう話を聞いては若干風音が落ち込むのも仕方がなかった。分かってはいたことではあるが。

ともあれ、風音は正面の軍艦の上のスケルトンジェネラルたちを見る。

その身体からは紫のオーラが漂い、すでに怒りによって理性が消えつつあるようだった。アストラル系統の魔物はその精神が負の方向に向かうと思考のループに陥りやすい。そして彼らの中には怒りが渦巻いていた。眼球のあった場所からは赤い光が強く輝きだしていた。

『ロリコンは殺せーーーー』

『デブは殺せーーーーー』

『僕たちのミンティア様を返せーーー』

まるでアイドルに彼氏発覚して発狂しているファンの如く、スケルトンたちが怒りの咆哮をあげながら風音たちに視線を向ける。どうやら達良の仲間と認識されたようである。そして『面舵いっぱーーい』というかけ声と共に軍艦が横に向き始める。砲台をこちらに向け始めたのである。

「あーーーこりゃあ、説得はもう無理だね。戦闘準備ッ」

その風音の言葉を聞いて全員が身構える。そして風音はアイテムボックスから『竜喰らいし鬼軍の鎧』を取り出すと瞬時に身に纏った。内に宿る狂い鬼たちが装着を行っているので瞬間的に着替えることが出来るのだ。こういう緊急事態ではこの鎧は非常に便利であった。

対して他の面々は水着姿のままだった。さすがに着替えられる状況ではないので風音がスキル『武具創造:黒炎』でその場で全員に黒炎装備を纏わしていく。

「え、スク水?」

その与えられた黒炎装備を弓花が見る。3-4 たちき ゆみかと書かれているゼッケンが貼ってある。ルイーズやティアラ、ユーイはそのはちきれんばかりのモノがギュウギュウに押し詰まっていて、なんだかスゴくエロくなっていった。エミリィは普通だった。直樹もスク水だった。2-1 ゆいはま なおきと書かれている。特に言うことはない。

「あ、そっちをセットしたままだった」

風音が「しまったなぁ」という顔をするが「ま、防御力はあるから」と言ってプイッと敵の方を向いてしまう。やれることはやったのだ。ビキニアーマーに比べてスク水の布面積は高い。当然のように防御力も高いのである。

「そんじゃあ真ん中は私とユッコネエにティアラの 炎の騎士団(フレイムナイツ) 。右、狂い鬼と愉快な仲間たち。左を弓花と直樹とタツオで。ルイーズさんとエミリィは弓花たちの援護と船の防衛を」

その言葉に全員が「了解ッ」と声を上げる。

『ふむ、ティアラよ。あれをやるぞ』

「はい、お爺さま」

そして、ティアラが召喚の準備を始め、風音とユッコネエは空中跳びでスケルトンジェネラルたちの船に向かい、さらには右手の船に狂い鬼とダークオーガ軍団を召喚した。水晶ガレー船『風音丸』も風音の指示に従って左手側の軍艦へと近づき始めると、直樹が隣の弓花に手を出した。

「跳ぶぞ。掴まれよ弓花」

「はいはい。ホントに便利よね、それ」

そして、直樹の手を弓花が握り、エミリィが「あっ」という声を上げた瞬間には左側の軍艦の上から戦いの音が聞こえだした。 帰還の楔(リターナーズ・ステイカー) による短距離転移が発動し、直樹と弓花が船の上に移ったのだろう。

『さて、お前も見せてやれいティアラよ』

「はい、お爺さま」

ショボンとしているエミリィの横で、メフィルスの声に力強く返事をしたティアラの前に10つの炎が出現する。

それはわずかな間に形となり、10体のフレイムグリフォンとそれに乗った10体の 炎の騎士団(フレイムナイツ) が出現した。内一体はフレイムランスを構えた 炎の騎士団長(フレイムナイトリーダー) という召喚騎士で、他の 炎の騎士(フレイムナイト) に比べると大きく重装甲の鎧をしている。乗っているグリフォンも他のものよりも一回り大きい。そしてその炎の兜からは意志ある視線が宿っていた。それはツヴァーラ前王メフィルスの意志が宿った召喚体であったのだ。

それらはティアラの新たなる力だった。それはルビーグリフォンの眷属であるフレイムグリフォンに乗った 炎の鷲獅子騎士団(フレイムグリフォンナイツ) 。彼らは風音たちに続いて、真ん中の軍艦へと次々と飛んでいく。

「お姉さま、凄い」

その光景をユーイが驚きの目で見ている。一体だけの 炎の鷲獅子騎士(フレイムグリフォンナイト) ならばユーイも見たことはある。アウディーンやメフィルスも出すことは出来るのだ。しかし同時十組の 炎の鷲獅子騎士団(フレイムグリフォンナイツ) をひとりで操れるなど尋常なモノではない。

それはたった一体の 水騎士(ウォーターナイト) を操るのにも苦労しているユーイにはよく分かる。

実のところ、ティアラは暗殺者たちとの戦いでルビーグリフォンを召喚し『滅の炎』を放ったことで、その身に宿る召喚能力がさらに開花していた。さらにはメフィルスとの繋がりも強化されたことで、メフィルス自身が出陣することが出来るようになったのだ。これで空気扱いだったメフィルスにもようやく出番がおとずれたのである。良かったね。

そしてティアラは、続けて天鏡の大盾ゼガイを不思議な袋から取り出した。

「お姉さま、それは?」

ユーイが不思議そうにその盾を見ている。とてもティアラが扱えるようなサイズの盾ではなかったのだ。実際にティアラも大盾を床に着けてどうにか支えてるという感じだ。しかし、ユーイの疑問にティアラが答える前に、ルイーズから焦った声がティアラに投げられた。

「ティアラ、砲台が向いているわ」

「分かりましたっ」

ティアラは、ルイーズの言葉に頷いて、天鏡の大盾に魔力を込める。

「ゼガイよ。私たちを護って」

そして、ティアラの意志に従って、盾の表面の立体的に浮かぶ文様が広がり船の前にまで表示される。そして、爆音が響いた。軍艦から一斉に砲撃が行われたのだ。

「キャアアアアアアア」

それを見てユーイが叫び声を上げるが、放たれた砲弾はホログラムの紋様の前で弾かれる。その衝撃にティアラが少しキツそうな顔をするが、しかし砲弾がその防御フィールドを抜けることはなかった。

「さっすがに風音の英霊くんと同じ装備なだけはあるわね」

ルイーズがやや冷や汗気味にそう口にする。ティアラの盾は黒岩竜の攻撃をも防いだ英霊ジークの盾と同じモノだ。

その強固さに、ダメならばライトニングスフィアを全開にしてこの場を守ろうとしていたルイーズの肩の荷も降りる。そして今戦いの中心である軍艦の船上を見る。

「しっかりね、みんな」

そう言いながらルイーズはライトニングスフィアを飛ばして、船に近づこうとするスケルトンたちの牽制を開始した。

それと同時にスキル『情報連携』で風音から船の上にいるメンツに砲台の破壊優先の指示が脳内に響き渡ってきた。

◎旧ツヴァーラ海軍 軍艦

「よっと」

そして、情報連携を通じて全員に指示すると風音は軍艦の甲板の上でその相手と対峙する。

他の軍艦の様子だが、狂い鬼たちは暴れ回りながらそのまま船内へと入っていったようだった。弓花たちの方は、メガビームで牽制するタツオを弓花が護りながら、スケルトンたちをしとめている。その間に直樹が船内に入って砲台の破壊に入っているようだ。

そして風音のいる軍艦は、ユッコネエが船内に入り、甲板上は 炎の鷲獅子騎士団(フレイムグリフォンナイツ) がスケルトンたちと戦い始めていた。その戦場の中で、風音が向き合っているのはスケルトンジェネラルだ。

恐らくはこのスケルトンたちの中ではもっとも強いのだろうと風音は感じた。そこらのスケルトンとは放つ気配が違っていた。

「一応、言っておくけど」

そして風音はスケルトンジェネラルを指さして、こう言った。

「達良くんは良い人だからね」

『ロリコンには死を!ロリコンを擁護する者にも死を!!』

そう口にしながらスケルトンジェネラルがその得物を取り出した。

その装備を前にして風音の目が見開かれる。

スケルトンジェネラルの武器、それはトンファーだった。目の前の骸骨の大将は、風音と同じトンファー使いだったのである。